■正しい姿勢を獲得するための基礎知識
不良姿勢の原因
座位….長座位、正座位、あぐら座位、 姿勢は「体位」と「構え」のこと
横座り座位、椅子座位など。 姿勢とは、「体位と構えのことを指し、 臥位……背臥位、側臥位、腹臥位など。 それぞれの動きに対応する身体部分の相 構えとは、頭部、体幹や四肢の体節の 対配置であり、身体を支える独特の形態」 相対的な位置関係を指します。例えば、 と定義できます。
骨盤が前方に傾いている場合、「骨盤は 体位とは、身体の基本面が重力方向に 前傾位」などと表現されます。すなわち、 対してどのような関係にあるかを指しま 構えとは、各体位における身体体節の配 す。例えば、立位、座位、臥位などのこ 列を意味する言葉で、関節および体節の とです(図1)。
位置でも置き換えられ、関節にまたがる 立位……直立位、中腰位、つま先立ち 筋や筋膜間のバランスとしても説明でき 位など。
ます。
立位・座位・ 臥位の例
座位(椅子座位姿勢)
立位(直立位姿勢)
臥位(背臥位姿勢)
110キーワード体幹……人体で頭部、四肢を除いた部分。胴体のこと。胸部、腹部、腰部がある。


不良姿勢を改善するための一般的指針 Part 11
伸張する長さがあり、その幅の広さが大 不良姿勢の原因1
切になります(図2)。 身体発達の過程
幼稚園児は、大きく身体を動かします 皮膚、結合組織、筋膜、筋、関節などし、ダイニングテーブルの椅子に座って に障害があると、正しい姿勢がとれなく いる姿勢もきれいです。それが、小学校 なります。これを不良姿勢といいます。 に入った途端、45分間も椅子に座り、 不良姿勢がこれらの組織に不快感や痛み 前を向き、授業に集中しなければなりま をもたらすことがあります。
せん。筋力がまだ不十分な子どもたちに、 不良姿勢は、身体発達の過程と、普段 同一姿勢を長時間取らせることになるの の日常生活のちょっとしたクセなどで生です。これは、不良姿勢を作り出す矯正 じます。
指導ともいえます。20分くらい経過し 身体発達の過程での各時期にありがちたときに、学校の先生が「さあ、全員立 な不良姿勢の原因を次ページにまとめま って、バンザイして、伸びをしてみよう。 した。
次に、身体を左右に捻ってみよう。」な
どと簡単なエクササイズを行ってくださ 不良姿勢の原因2
ればありがたいのですが、なかなかそう 筋肉の短縮と伸張
はならないようですね。 筋肉には、最大短縮する長さと、最大
1 正しい姿勢を獲得するための基礎知識
図2 筋の最大短縮と最大伸張
筋肉は最大短縮する長さと最大伸張する長さの 幅がある。その幅の大きさが姿勢に関わる。
上腕二頭筋の最大短縮と最大伸張
大腿直筋の最大短縮と最大伸張
キーワード筋膜…全身の筋のほか、骨や心臓、脳などの臓器をすべて包み込んでいる膜のこと。
全身をくまなく覆っていることから「第2の骨格」とも呼ばれる。

表1→身体発達の過程
時期
発達の過程
乳児期 (1歳未満)
●生後しばらくは、運動発達は、頭部から尾部へ、四肢の近位か ら遠位へ、の順で起こる。運動はあまり制御されず、容易に疲 労する。 ●8か月:ものにつかまって立ち上がる。
11か月:つかまり歩き。 ●12か月:処女歩行。
幼児期 (1 ~5歳)
●運動課題の熟達には、触覚や運動覚が利用される。運動の促通 や抑制は不十分であり、運動が過剰で、疲労しやすい。走行や
跳躍、キャッチボールのような複合した身体運動も可能になる。 ●2歳:転倒しないで走る。 ●3歳:片足立ちができる。
学童期 (6~12歳)
●運動の制御や調整のような協調性や技能は、急速に向上する。身 体的状況や運動経験の豊富さ、情緒的安定から、10~12歳が運 動学習にとって最適な時期とされている。 ●6歳:成人型歩行になる。
青年前期 (12~14歳)
第二次性徴が現れ、身体像(body image)の変化が運動素因に も影響する。この時期の発達過程は、それ以前に獲得したパフ ォーマンス・レベル、また訓練の強度や期間に影響される。運
動発達には、個人差が大きくなる。 ●カルシウムの摂取が多いほど、将来の骨粗鬆症を予防する。
青年後期) ●運動能力は安定し、パフォーマンスは訓練の強度、期間や質、社 (15~18歳)
会心理的要因に依存する。
30歳代 後半
●筋力低下が始まる。 ●年齢問わず、カルシウム:マグネシウム=32:1の割合で摂取するこ とが大切。カルシウムは、筋の収縮エネルギーとなり、骨を強 くする。マグネシウムはカルシウムを体内に回す役割を担い、ま た神経の伝導速度も調整することから朝方の足のつりなどを防ぐ。
高齢者
●Type In 筋線維(速筋・白筋:速く強く動かす筋肉)が衰えてくる。 ●年齢問わず、ベッドレスト(安静)の期間が長くなると、Type I 筋線維(遅筋・赤筋:持久力に優れた筋肉)が衰える。
12
キーワード第二次性徴……思春期以降に現れる男女の差異。男性の筋骨や声の質、女性の皮下脂肪や乳房など。

不良姿勢を改善するための一般的指針 Part
不良姿勢の原因
1 正しい姿勢を獲得するための基礎知識
●乳児期(1歳未満) ベビーベッドあるいは布団を壁際に置いていると、壁と反対側への寝返りがうながされて、その方向 へのクセが知らず知らずについてしまいます。
●幼児期(1~5歳) 鏡に映ったものを学習する時期です。ダイニングテーブルで正面にお父さんが座り、お父さんが右利 きだと、子どもは鏡に映ったものを学習するので左利きになることが多くなります。この時期の子ど もに、正面に立って運動を教えると、子どもが混乱することがあります。同じ方向を向いて、子ども の横などで教えてあげるのがいい時期です。
●学童期(6~12歳) それまでのクセがますます顕著になる時期。幼児期にテニスやゴルフ、野球などの非対称な動きを練 習してきた子は、さらに非対称性が磨かれてしまうのです。
●青年前期(12~14歳)から青年後期(15~18歳) さらに学童期の傾向が強くなります。極端にクセをつけさ せないためには、幼児期から学童期(6~12歳)は水泳や 体操など、身体全体を使えるスポーツをしつつ、非対称な 動きを学ぶのが良い時期といえます。 学童期から青年前期(12~14歳)は、身長が伸びていく時 期です。この時期に、皆が同じ高さの机と椅子だと、背の 高い子は猫背に、背の低い子は反り腰になってしまいます。 小学校だけではなく、中学校でも高さが変えられるタイプ を使用できると素晴らしいですね(右写真)。
高さが変えられる机と椅子
●30歳代後半から 少しずつ全身の筋力が低下してきます。一般の会社では、デスクワークが増えていく年代とも重なり ます。日本では悪い姿勢、疲れた姿勢でも1日中パソコンとにらめっこすることを良しとする風潮が あります。それが不良姿勢だとわかっていても、同じ姿勢で長く作業を続けることが美徳なのだとい う間違った価値観を持っているのです。「疲れたら保険診療で安く病院にかかればいい」と思ってい るのでは、姿勢はますます悪くなります。
写真提供:第一工業(株)く学校備品.com>
キーワードねこ背….胸椎後弯の姿勢のこと。 反り腰…腰部屈曲とは逆に重心をさらに前に移動した姿勢のこと。
-13

不良姿勢の原因3
不良姿勢がもたらすもの 身長の伸びと筋の関係
そして、不良姿勢は、間違った運動パ 身長が伸びるのは、骨が伸びるからで ターンや外傷・障害の原因になります。 す。その骨といっしょに、筋膜も筋肉も 過用症候群や日常生活のちょっとしたク 伸びるのが理想です。筋肉の長さを、幅 セ、筋の持続的収縮などが姿勢をさらに 広く使えることで、特に筋肉を長くする 悪くしていきます(表2)。ケガもたま 機会が多いほど、筋肉も骨といっしょにたま起こったのではなく、不良姿勢が原 伸びていきます。でも、身体を大きく動 因のことが多いのです。 かせなくなり、筋肉が短い範囲でしか動寝違えやギックリ腰、骨折、手術の影 かせなくなると、骨は伸びても筋肉が硬 響などで、関節から先に異常をきたすと くなってしまいます。そうなると筋膜もいうこともありますが、ほとんどは筋・ 硬くなっていきます。
筋膜のインバランスが姿勢を左右します。
筋・筋膜のインバランスは、ライフスタ 不良姿勢の原因4
イルやスポーツ、趣味、ケガの既往など 加齢による難題
でさまざまに生じます。このインバラン さらに、年齢を重ねて高齢者になるに スが、頭痛、首こり、肩こり、猫背、頭 従い、人は身体を大きく動かさなくなり部前方位姿勢、肺活量低下、腰痛、肉離 ます。年をとっても、身体を大きく動かれ、捻挫、扁平足、外反母趾、内臓障害 す習慣を身につけることが、筋膜を活性などを生じさせます。自律神経の働きか 化させることにつながります。そうする らは、背骨の上のほうが丸まっていると ことでたくさんの筋肉を活動し続けられ 喘息や狭心症に、背骨の中央あたりが丸 ます。
まっていると胃下垂や胃酸過多(胸焼け) 高齢者になっても、座っていたり、立 や十二指腸潰瘍に、腰が前に丸まってい っていたり、歩く動作は保たれています。 ると膀胱炎や便秘になりやすいこともあ でも、転びそうになったときに、とっさりますので注意が必要ですね。 に足を出して踏ん張ったり、手を出して正しい姿勢がとれれば、正しい運動パ 転倒を防いだり、ということが難しくなフォーマンスを発揮できます。身体の不 ります。加えて、インフルエンザや肺炎 調も軽減できます。本書では、上肢帯、 で1~2週間も寝込んだとなると、筋肉全 上肢、骨盤帯、下肢における不良姿勢に 体が衰えて寝たきりにすらなってしまい ついて解説し、正しい姿勢を再獲得する ます。「生活不活発病」にならないように、 ための修正エクササイズを紹介していき 身内の人が高齢者の活動時間や活動範囲ます。 をチェックしてあげることも大切です。
じゅうにちょうないよう
キーワード過用症候群…….無意識のうちに身についた動かしやすい運動方向への反復動作で、
同じ筋肉や関節に繰り返し負荷が加わる使いすぎの状態。

不良姿勢を改善するための一般的指針 Part 1
表2>過用症候群や日常のクセが不良姿勢の原因になる
0机の蛍光灯が左にあったか右にあったか?
1 正しい姿勢を獲得するための基礎知識
2机と椅子の高さを調整できたか?
0 髪の毛をどちらから分けていたか?
0畳で左の横座りと右の横座りのどちらが多かったか?
6 あぐらだったか割り座だったか?
0 椅子から立つとき膝をくっつけたままだったか?
1 寝る姿勢としてどちら側を下にするのが楽か?
0 足を組むクセは? 左右どちらが多いか?
0 食卓の自分の席とテレビの位置関係は?
携帯電話や携帯ゲームを操作しているときに背中が丸まったり、 巻き込み肩になっていないか?
1 電車の座席に座る姿勢でお尻が前に滑り出ていないか?
2 就業時の座位姿勢あるいは立位姿勢はどうなっているか?
R立っているときにどちらの足を前に出した休みの姿勢をとるか?
1 ショルダーカバンを右肩と左肩のどちらに下げるか?
●ケガをしたことは? 同じ所か? 回数は?
● 別の部位のケガがその後生じたか?
過用症候群や日常生活 のちょっとしたクセ、 筋の持続的収縮などで 不良姿勢に。
キーワードインバランス……バランスの不均衡のこと。

2筋のインバランスの改善
スタビリティ&モビリティの獲得
が大きく速くなるにしたがい、スタビリ 何が不足しているかを知る
ティ&モビリティの獲得はさらに重要 筋・筋膜のインバランスを改善して、 になります。 良い姿勢と運動パターンを獲得するため 例えば、椅子に座って膝を伸ばす動作 には、硬い筋あるいは短縮筋のストレッをしてみましょう。膝は真っ直ぐに伸び チングはもちろんのこと、拮抗筋あるいましたか? 伸びたのなら結構です。でも、 は隣接筋の安定化が重要になります。 そのとき腰が丸まっていませんか? 丸
バランスのとれた平衡状態を維持して、 まっていたら、腰部のスタビリティが不 つまり、姿勢を土台を安定させた上で、 足している証拠です。大腿の後面のハム (Stability%3Dスタビリティ)、動きを要すストリングス(大腿二頭筋、半腱様筋、 る分節の柔軟性 (Mobility=モビリティ) 半膜様筋)が硬くなってモビリティが不 を獲得する必要があるのです。運動課題足しているため、膝を伸ばす際に、隣接
・にとうきんはんけんようきん
図1、膝関節伸展時の腰部屈曲出現の検査
キーワード中間位・……屈曲・伸展、内転・外転などをしていない、関節の中間的な位置。

不良姿勢を改善するための一般的指針 Part 11
心筋のインバランスの改善
する腰部のスタビリティを不足させてき
良い姿勢を意識させる たわけです。
これを検査する場合には、後方にサポ 立位にせよ、座位にせよ、常に良い姿 ート役が位置し、まず患者の腰椎を中間 勢を長く維持するのは不可能です。長時 位にさせます(図1)。右膝を伸ばさせる 間にわたって良い姿勢を維持させること 場合には、サポート役は右母指を患者の で、その姿勢を維持させるための筋群に 上後腸骨棘に、左母指を第2仙椎棘突起過剰な努力を強いることになるからです。 に当てておきます(日)。そこから右膝 疲れたら休みながら、1日の中でたび を伸ばさせると、正常では、骨盤の後傾たび良い姿勢を意識させることがより大 や腰椎の屈曲は伴わないのですが、ハム 切になります。例えば、鏡の前を横切る ストリングスが硬い場合は、この筋群の。 とき、赤信号で待つ間、壁を背にしたと 起始部の坐骨結節がお尻の前のほうに引 き、食事の席に着くとき、テレビを見て っ張られ、腰部が丸まって屈曲してきているときなど、いつでも姿勢を意識する しまうのです (2)。左右比較することで、 ように指導することが大切です。 左右どちらの腰部のスタビリティが不足 患者が常に意識することで、最終的に して、ハムストリングスのモビリティがは無意識でも実践できるようになること 硬くなっているかもわかってきます。 が目標になります。
図2>良い姿勢をたびたび意識する
常に良い姿勢を意識して、最終的には無意識でも実践できるようになることが目標。
ネッ
歯磨きのとき
電車通勤の中で
誰かと話し始めたとき
キーワード坐骨結節……..坐骨下部にある突起(結節)。椅子座位の椅子の面に接して体重を支える部位。

2 筋のインバランスの改善
動筋一拮抗筋のインバランス
えんため
勢アライメント(各部位の正しい配列) 短縮筋はストレッチング
の改善には必ずしも効果があがりません。 延長筋はエクササイズ、
正しい方法でインバランスを改善する必 漫然とした運動では、循環の改善と可要があります。 動域の改善に効果はあるかもしれません 硬い筋あるいは短縮筋に対しては、物 が、筋・筋膜のインバランスの改善や姿 理療法、マッサージ、筋膜リリース、筋
図1動筋と拮抗筋
動作時に働く筋のこと。主に働く筋を動筋、 動筋を助ける筋を補助動筋という。
抗筋 動筋と逆の働きをする筋のこと。動筋が収縮 すると、拮抗筋は急速に弛緩して滑らかな動 きを生み出す。
?関節屈曲運動
?関節伸展運動
拮抗筋
動筋
拮抗筋
上腕三頭筋
上腕二頭筋
上?三頭筋
上腕二頭筋
キーワード相動筋……弱化・延長しやすい筋のこと。

不良姿勢を改善するための一般的指針 Part
1
1
2 筋のインバランスの改善
膜マニピュレーション、ストレッチングインバランスを改善するためには、硬 などを駆使して、血流を改善し、筋の柔い筋や短縮筋のストレッチングを行うだ 軟性を回復させることになります。 けでは、延長されていた筋は自動的に正
筋の短縮によって運動制限がある場合、 しい長さには戻れません。延長筋に対し 拮抗筋は延長・弱化していますから、エ ては、短い長さでも安定した固定性を発 クササイズやトレーニングが必要になり揮できるエクササイズやトレーニングが ます。
不可欠となるのです。 動筋 -拮抗筋でよく見られるインバラ すなわち、ストレッチング後には新た ンスを、下の表1に示しました。当然、 に獲得した可動範囲にて、拮抗筋に対す 動筋と拮抗筋が逆転する場合もあります。 る自動での最大随意収縮が必要で、延長 が、一般的にはこの表の内容がよく見ら筋に対しての短縮位での再学習・筋力 れます。
強が大切になります。
さいだいいという。
表1動筋一拮抗筋のインバランス
姿勢筋 優位または短縮
相動筋 延長または弱化
けいぶし
さん
頸部伸筋群
そうほうきんじょうぶせんいけんこうきょきん
こうはいきん
僧帽筋上部線維・肩甲挙筋
頸部前方筋群
広背筋 僧帽筋中・下部線維
大胸筋鎖骨部線維
していた
りょうけいきん
小胸筋
菱形筋
腹筋群
脊柱起立筋・梨状筋 腸腰筋,大腿筋膜張筋 )
ハムストリングス
股簡節?筋群 (下腿三頭筋←→
大殿筋 大腿四頭筋 中殷筋 背屈筋群
か たいさんとうきん
キーワードアライメント……頭部・体幹・骨盤・四肢の配列(体節の配列)のこと。

2筋のインバランスの改善
短縮・硬化した筋に対する 隣接筋のインバランス
りんせっきん
しっかん
こして付随する筋の長さが延長している 隣接筋が延長・弱化する
ことも多くあります。 仕組み
前述したように、椅子に座って膝を伸 動筋一拮抗筋の関係に関してはご理解 ばそうとしたときに、過剰に腰椎が屈曲 いただけたと思います。しかし、拮抗筋 することがあります(図1)。これは、 だけではなく、しばしば硬い筋や短縮筋 ハムストリングスが硬いことで、腰椎椎 に隣接する関節にも過度な運動を引き起 間関節での屈曲の代償を生じ、それによ
って骨盤が後傾してしま
うからです。このような 図1 膝関節伸展時の腰椎の屈曲代償
例では、腰椎を中間位に 保つと、膝関節を自動で 完全伸展することができ なくなります。
つまり、ハムストリン 膝関節伸展時に過剰に腰椎 が屈曲するのは、ハムスト
グスが硬いため、ハムス リングスが硬いことで、腰 トリングスと隣接する腰 椎椎間関節での屈曲の代償
椎椎間関節に過度な運動 を生じ、それによって骨盤 が後傾するため。
を引き起こし、腰腸肋筋 と多裂筋が延長位になっ て筋力が低下している恐 れがあるのです。なお、 腰椎を中間位に保たせて、 膝関節を他動で完全伸展 できるならば短縮ではな く、硬いということにな ります。自動でも他動で も完全伸展できなければ
しっかんせつしんてん
キーワード椎間関節……脊柱を構成する椎骨と椎骨の間の関節のこと。上の椎骨の下関節突起と、
下の椎骨の上関節突起との間の平面関節。

着信/通知音量
不良姿勢を改善するための一般的指針 Part1
短縮しているということです。
レッチング(モビリティ)が有効になる
のです(図2)。 正しいアライメントで
つまり、理想的なアライメントから逸 ストレッチングを行う
脱した姿勢の場合には、理想的な筋長よ この場合は、腰部の背筋群を収縮させ、り短縮している筋と、理想的な筋長より すなわち骨盤を軽度前傾させて正常のアー も延長し筋力が発揮しづらくなっている ライメントに正した状態(スタビリティ) 筋があることを考慮して姿勢を評価する での、自動的なハムストリングスのストー 必要があるのです。
2筋のインバランスの改善
図2 腰椎のスタビリティとハムストリングスのモビリティ
腰椎のスタビリティ 腰部の背筋群を収縮させて(骨盤を軽 度前傾させる)正常のアライメントに 正した状態。
ハムストリングスのモビリティ 腰椎を正常のアライメントに正した状 態でハムストリングスのストレッチン グを行う。
キーワード他動……自分の意思ではなく、他人などによって動かしてもらうこと。自動=自分の意思で動かすこと。

2筋のインバランスの改善
ようどうきん
共同筋間における 筋の長さのインバランス
代償運動が運動機能障害を
延長位になりやすく、筋力は低下します。
0肩甲上腕関節内旋筋群 引き起こす
大胸筋(上腕骨頭を前方に引き出す) 効率的な筋運動パターンに変性が起こ は短縮しやすく、肩甲下筋(上腕骨頭を ると、共同筋の中のある1つの筋がその 後方に引く)は延長位になりやすく、筋 他と比較して優位となることがあります 力は低下します。この場合、上腕骨頭は (→ P23表1)。2つの共同筋の長さの違い 腹側・頭側(前上方)へと変位します。 が代償運動を生む要因であり、運動機能骨盤後傾の体幹屈筋群 障害を引き起こすことにもつながります。 腹直筋は短縮しやすく、外腹斜筋は伸
次に、共同筋群における長さのインバ張されやすく、筋力は低下します。外腹 ランス例を示します。
斜筋には体幹の回旋を制動する大切な役 0肩甲骨挙上筋群・内転筋群
割がありますが、腹直筋にはこの作用が 下方回旋の作用を持つ肩甲挙筋は短縮 ありません。 しやすく、上方回旋の作用を持つ僧帽筋6股関節屈筋群 上部線維は伸張されやすく筋力は低下し 内旋作用を持つ大腿筋膜張筋は短縮し やすいという特徴があります。なで肩に、 やすく、外旋作用を持つ腸腰筋は延長位 なりやすいインバランスです。
になりやすく、筋力は低下します。 肩甲骨内転筋群・上方回旋筋群 の股関節外転筋群 僧帽筋上部線維は上肢帯を挙上し、下 屈曲・内旋作用を持つ大腿筋膜張筋は 部線維は挙上を抑制します。過度な上肢。 短縮しやすく、伸展・外旋作用を持つ中 帯の挙上は僧帽筋上部線維が優位となり、 殿筋後部線維は延長位になりやすく、筋 下部線維がこれを抑制することができな力は低下します。 くなった状態です。いかり肩(すくめ肩) 8股関節伸筋群と膝関節屈筋群 になりやすいインバランスです。
内側ハムストリングスの半腱様筋・半 0肩甲骨内転筋群
膜様筋は短縮しやすく、外側ハムストリ 菱形筋(下方回旋作用)は短縮しやすングスの大腿二頭筋長頭は延長位になり く、僧帽筋下部線維(上方回旋作用)は やすく、筋力は低下します。この場合、
じょう
じょうし、
でんきんたまんい
だいたいにとうきんちょうとう
22
キーワード共同筋……1つの運動に参加するすべての筋群のこと。

O LISTTIMER タイマー終了
不良姿勢を改善するための一般的指針P
2筋のインバランスの改善
椅子座位で膝を伸ばそうとすると、股関 長さや姿勢のアライメント、そしてその 節が内旋位になることが多く見られます。 筋によってコントロールされている関節 O足関節背屈筋群
の運動を調べる必要があります。 長趾伸筋は短縮しやすく、前脛骨筋は これらの患者には、口頭指導や鏡を利 延長位になりやすく、筋力は低下します。 用して運動パターンを患者に見せながら、 この場合、椅子から立ち上がる際に、足 肩関節運動を正常に行うことが欠かせま 趾を伸展することで下腿を前傾させようせん。患者には、優位な筋の働きを減少 とする代償が見られます。
させ、その筋の共同筋をより働かせるこ このように共同筋の中でもさまざまな とを指導します。動員パターンを変化・ インバランスが出現します。共同筋の中 改善させることが、筋の収縮能力と筋力 で長さにインバランスが生じて機能障害 を変化させ、正常な運動を再獲得するこ を生じた筋を見つけ出すためには、筋のとに役立ちます。
表1●共同筋群における長さのインバランス
筋群
優位または短縮」
延長または弱化
けんこうこつきんじょうきんさん
肩甲骨挙上筋群・
1242まんじゅうたい。
第爺筋群
肩甲挙筋、
僧帽筋上部線維
1212さんじゅうぶん。
そうほうきんかぶせんい
肩甲骨内転筋群・ 上方回旋筋群
じょうほうかいすんきんさん
僧帽筋上部線維
僧帽筋下部線維
りょうはいきた
A5252いまさんさん 3肩甲骨内転筋群
菱形筋
けんこうじゅうねんねん2げんくん
大胸筋
僧帽筋下部線維 肩甲下筋 外腹斜筋」 腸腰筋
ここはこうい合いなくっきんくん
6 骨盤後傾の体幹屈筋群
腹直筋
こかんせつくっきんくん
0 股関節屈筋群
大腿筋膜張筋 ?腿筋膜張筋
中殿筋後部線維
だいたいにとうきんちょうとう
0 股関節外転筋群 股関節伸筋群と
膝関節屈筋群 0 足関節背屈筋群
半醒樣筋.羊膜樣筋
大腿二頭筋長頭
長趾伸筋
前脛骨筋
キーワード代償……ある部位が損傷などによってその機能が十分に発揮できないとき、他の部位がその機能を引き継ぐこと。23)



2筋のインバランスの改善
関節制御のインバランス
かんせつないせん。
ちゅうでんきんこ
2 ??
展させ、大腿四頭筋が膝を伸展させる働 下肢関節を制御する筋の
きがあります。しかし、後弯平坦型では、 インバランス
股関節伸展の補助としてハムストリング 関節を制御する筋にインバランスを生スが代償的に働き、足部固定(CKC: じることがあります。特に下肢において、 closed kinetic chain 閉鎖性運動連 生じやすいといえます(→ P25表1)。 鎖)にて膝関節伸展の補助としてやはり
次に関節制御を不安定にさせる代表的 ハムストリングスが代償的に働き、関節 なインバランスの例を紹介します。 制御を不安定にさせます。 〇股関節内旋を伴う外転の補助筋 の立位での股関節内旋を伴う
中殿筋後部線維は股関節の伸展・外転・ 伸展の補助筋 外旋に働き、骨頭を関節窩に安定させる 立位において股関節伸展を補助する筋 大切な筋です。しかし、股関節内旋を伴は、大腿二頭筋長頭です。しかし、股関 う外転の補助筋(大腿筋膜張筋 – 腸脛靭 節内旋を伴う伸展の補助筋(半腱様筋・ 帯・中殿筋前部・小殿筋)が代償的に働 半膜様筋)が代償的に働き、関節制御を き、関節制御を不安定にさせます。 不安定にさせます。 2股関節外転筋群
6股関節屈曲の補助筋 股関節外転筋群は、大腿骨頭を寛骨関 立位にせよ、背臥位にせよ、股関節屈 節窩に安定させる大切な筋です。しかし、 曲に働く股関節の筋は腸腰筋です。しか 大腿骨頭を寛骨関節窩に引きつける補助 し、股関節屈曲を補助する筋(大腿筋膜 筋(股関節内転筋群)が代償的に働き、 張筋・大腿直筋)が働くことで、股関節 股関節外転筋の筋力が低下して、関節制 と膝関節に作用する二関節筋が優位にな 御を不安定にさせます。
ってしまいます。これにより、股関節を 0後雪平坦型姿勢での
屈曲する際に、曲げるに従って、股関節 ハムストリングスの過剰収縮
近位に大腿直筋などの筋が膨隆し、股関 後弯平坦型 (sway-back posture) は、 節につまり感が生じてしまい、痛みを生 骨盤後傾、股関節伸展、膝が過伸展したじさせることにもなります。 姿勢です。通常は、大殿筋が股関節を伸6足関節背屈の補助筋
かんせつがいてんきんくん。
だいたいこうとうかんこうかん
こなんせつないてん
キーワード後雪平坦型…….骨盤が後傾し、上部体幹の後方変位を伴う長い胸椎後弯を伴った姿勢のこと。

不良姿勢を改善するための一般的指針 Part1
くかんせ23
2筋のインバランスの改善
椅子から立ち上がる際には、前脛骨筋 し、バレリーナは、ふくらはぎをむちむ が働いて下腿を前方に移動させることで、 ちにすることを嫌うため、ルルベという 膝を前に出すことになります。しかし、 動作では、足関節底屈を補助する筋群 足関節背屈を補助する筋(長趾伸筋)が (後脛骨筋・長趾屈筋・長母趾屈筋・長 代償的に働くことで、足趾を伸展させな 腓骨筋)を代償的に使用します。すなわ がら立つようになり、前脛骨筋は延長位 ち足趾を曲げて床を蹴るような動きです。 になりやすく、筋力は低下します。この 一般の人でもこのようなつま先立ちをす ことで、足関節の関節制御が不安定になる人が多く、そうなると下腿三頭筋(腓 ります。
腹筋・ヒラメ筋)の筋力が低下して、歩 ○足関節底屈の補助筋
行時にも蹴り出す力が低下してしまいま つま先立ちになる場合は、特に腓腹筋 す。 が大切で、ヒラメ筋も共同します。しか
表1+関節制御のインバランス
延長または弱化筋
だいたいきんまくちょうきんちょうけいじんたいちゅうでんきんぜんぶしょうでんきん
優位な筋 大腿筋膜張筋 – 腸脛靭帯・中殿筋前部・小殿筋 (股関節内旋を伴う外転の補助)
らないた
中殿筋後部線維
こんないなんきんさん
股関節?輸筋群
だいたいこと2つれまった (大腿骨頭を寛骨関節窩に安定させる補助)
股関節外転筋群
ハムストリングス(股関節伸展の補助) ハムストリングス(足部固定での膝関節伸展の補助)
大殿筋 大腿四頭筋
0 半腱様筋・半膜様筋(股関節内旋を伴う伸展の補助)
大腿二頭筋長頭
6 大腿筋膜張筋・大腿直筋(股蘭節屈曲を補助)
腸腰筋
0 足趾伸筋群(定鏡節背屈を補助)
前脛骨筋
,後脛骨筋・長趾屈筋・長母趾屈筋・長腓骨筋
(足関節底屈を補助)
腓腹筋・ヒラメ筋
キーワード二関節筋……..起始と停止が2つの関節をまたぐ筋のこと。上腕二頭筋、上腕三頭筋、大腿二頭筋長頭、大腿直筋、
腓腹筋などがある。

3理想的な立位姿勢
理想的な立位姿勢の 重心線とアライメント
勢例、そして不良姿勢を修正するストレ 矢状面の重心線と
ッチングやエクササイズについて解説し アライメント
ました。本書では、「上肢帯と上肢」、そ 前著『姿勢の教科書』では、全身の立 して「骨盤帯と下肢」について細かく解 位、座位、臥位での正しい姿勢と不良姿説していきます。
図1●立位の矢状面の 正しい理想的なアライメント
過剰な屈曲や伸展がな い中間位でゆるやかな
(HCO
前弯。
FIFA
正常な弯曲。壁を背に して立つと腰部と壁の すき間に手の平が収ま る程度。
SATY
生前腸骨棘と恥骨結合
が同一垂直面上。
股関節屈伸 0° で腸骨 稜頂点と大転子を結 ぶ線が大腿長軸と一 致。
重心線
膝関節屈曲や過伸展が ない中間位で、脛骨長 軸は垂直。
キーワード上前腸骨棘……腸骨稜の前縁にある2つの突出のうち、上部にある前方に大きく突き出す突起()のこと。

不良姿勢を改善するための一般的指針 | Part 1
その解説に入る前に、立位の矢状首、 子、膝関節前部(膝蓋骨後面)、外果の 前額面の正しい姿勢のアライメントをお 2~3cm 前部を通ります(図1)。また、 さらいしておきましょう。
この姿勢の矢状面での各部のアライメン 矢状面の重心線は、耳垂、肩峰、大転トは表1の通りです。
3 理想的な立位姿勢
表1→理想的な立位姿勢矢状面でのアライメント
矢状面
頭部
頸椎、胸椎、腰椎の並びは垂直。
頸椎過剰な屈曲や伸展がない中間位でゆるやかな前弯。
脊柱胸椎正常な弯曲。
腰椎
正常な弯曲。壁を背にして立つと腰部と壁のすき間に手の平 が収まる程度。
骨盤
上前腸骨棘と恥骨結合が同一垂直面上(左ページの図で示す 垂直線)*。
股関節
屈伸0°で腸骨稜頂点と大転子を結ぶ線が大腿長軸と一致。
膝関節
屈曲や過伸展がない中間位で、脛骨長軸は垂直。
足関節
長軸アーチと足指は中間位。
肩甲骨
前額面から前方に約35° 傾斜(→詳細は P32)。
上腕骨頭
上腕骨頭は骨頭が肩峰内に位置して上腕骨近位と遠位がとも に同じ垂直面上に位置する(→詳細はP33)。
*上前腸骨棘と上後腸骨棘を結ぶ水平面との成す角度が5以内(上前腸骨棘が下方)という見方もあるが、 土15°以内(女性は個人差あり)の誤差もあるので注意が必要。
[キーワード遺位・近位・…..基準となる部位から遠い位置にあると「遠位」、近い位置にあることを「近位」という。四肢の場合、27.
体側に遠い側を「遠位」、近い側を「近位」という。

着信/通知音量
前額面の重心線と アライメント
殿裂、両膝関節の内側の中心、両内果間 の中心を通ります(図2)。
また、前額面での各部のアライメント は、次ページの表2・3の通りです。
次に前額面です。前額面の重心線は、 後面から見て、外後頭隆起、椎骨棘突起、
図2 立位の前額面の正しい理想的なアライメント
きょうこつかかく
胸骨下角70~90°(左右 それぞれ35~45°)
各内側縁と胸椎棘突 起の距離 成人男性・・・約7cm 成人女性・・・5~6cm
肩甲骨は第2~7肋骨上 に位置し、胸郭上で平坦 に位置し、過度な前傾あ るいは後傾を伴わない。
肩甲棘から下角までの肩 甲骨内側縁(肩甲棘根部 から下角の手前まで)は 棘突起と平行。左右の肩 甲骨内側縁が平行。
左右の腸骨稜が水平。
10
重心線
膝関節の大腿脛骨角 に約5°の生理的外反。
約3.5°の外反。
キーワード構造的脚長差……骨そのものの異常による脚長差のこと。

不良姿勢を改善するための一般的指針 Part 11
姿勢のアライメントの評価は、重心線は、筋節の長さ一張力関係による筋のイ の通る位置のチェックだけでは不十分で、 ンバランスの有無を解き明かすことが不 これらの身体各部位のパーツの並びにも 良姿勢と不良な運動パターンを修正する 着目することが重要です。その際に、
構 ための鍵となります。 造的脚長差や関節変形などがない場合に
3 理想的な立位姿勢
表2>理想的な立位姿勢 前額面(後面)でのアライメント
前額面(後面)
脊柱
頸椎、胸椎、腰椎の並びは垂直。
けんこうこつないそくえん
肩甲骨
りょうけん
●第2~7肋骨上に位置し、胸郭上で平坦に位置し、過度な前傾ある
いは後傾を伴わない。 ●肩甲棘から下角までの肩甲骨内側縁(肩甲棘根部から下角の手
前まで)は棘突起と平行かつ、左右の肩甲骨内側縁も平行にある。 ●各内側縁と胸椎棘突起の距離は次の通り。
成人男性……約7cm 成人女性…..5~6cm ●両肩峰は第1胸椎棘突起下縁を通る水平線のわずかに下を通る。 上腕骨上面の大結節部は肩峰よりわずかに外側に位置する。 内外旋中間位で、両上腕骨は胸郭に平行に位置する。 手掌を体側に向けると肘頭が後方に向く。 腰椎棘突起から5cm 外側での左右の膨隆部分の差は1cm 以内。 左右の腸骨稜が水平。
上腕骨
肩関節
肘関節
腰椎
骨盤
踵骨
約3.5°の外反。
表3・理想的な立位姿勢 前額面(前面)でのアライメント
前額面(前面)
胸骨下角
胸骨下角(前面で下部肋骨のなす角度)は70~90°(左右それぞれ 35~45°)。
膝関節膝関節の大腿脛骨角には約5° の生理的外反がある。
「キーワード筋節……筋原線維のZ線とZ線で仕切られた筋の最小単位。筋収縮に必要なミオシンフィラメントと
アクチンフィラメントで構成されている。

修正方法の まとめ
修正方法
修正方法
さまざまな姿勢のアライメントを 意識して調節することができるよう にするために、脊椎および四肢の運 動を自動的に調節することができる ように手順を指導します。
安全な身体力学を学ぶために、カ 学的に安全である機能的運動を指導 します。
修正方法
修正方法
姿勢と疼痛との関係を意識するこ とを学ぶために、症状と姿勢の持続 または反復との関係を患者に図解し て説明します。
不良姿勢と不良動作パターンを修 正するために、職場、家庭、余暇の 環境を適応させます。
修正方法
修正方法
有酸素能力を高めるために、有酸 素運動プログラムを実施します。
筋、筋膜、関節に制限がある場合 に、可動性を高めるために、セルフ 筋膜リリース、静的ストレッチング、 セルフ・ストレッチングおよび関節 モビライゼーションなどを実施します。
修正方法 4
修正方法
姿勢筋および四肢の筋群に、筋力 や持久力をつけるために、安定化運 動を実施します。
自己管理のために健康的な運動の 習慣を身につけるために、日常生活 にフィットネスプログラム、定期的 な運動および安全な身体力学を組み 込みます。

Part 2
上肢帯と上肢の アライメントの評価と
修正エクササイズ
この章で学ぶこと ●上肢帯と上肢の正常なアライメント ●肩甲骨の正常なアライメントと動き
それらに関わる筋群 ●肩関節の正常な動きと可動域 肩甲骨外転時の肩甲上腕リズム 肩甲骨関節窩に対する上腕骨頭の動き 上肢帯と上肢の機能異常と修正 ●肘関節・手関節・手指の機能異常と修正

■上肢帯と上肢の理想姿勢と不良姿勢
上肢帯と上肢の 正常なアライメント
もっといきょくとっ
肩甲骨は第2~7肋骨上に位置し、胸郭 矢状面と前額面での
上で平坦に位置し、過度な前傾あるいは 正常なアライメント
後傾を伴いません。 Part2では上肢帯と上肢の姿勢について、 肩甲棘から下角までの肩甲骨内側線 その評価のポイントと修正のためのエク (肩甲棘根部から下角の手前まで)は棘 ササイズを解説します。まず、肩甲骨と 突起と平行かつ、左右の肩甲骨内側縁も 上腕の正常なアライメントについて見て 平行にあります。各内側縁と胸椎棘突起 いきます。
の距離は成人男性において約7cmで、 ●矢状面での正常なアライメント
女性では5~6cmです。両肩峰は第1胸 肩甲骨は前額面から前方に約35° 傾斜 椎棘突起下縁を通る水平線のわずかに下 し(図1)、上腕骨頭は骨頭が肩峰内に を通ります。上腕骨上面の大結節部は肩 位置して上腕骨近位と遠位がともに同じ 峰よりわずかに外側に位置し、肩関節は 垂直線上に位置します(図2)。上腕骨内・外旋中間位で、両上腕骨は胸郭に平 頭の頚体角は135°(水平から45°)、
後 行に位置しています(図4)。 視角は20°です(図3)。
, 肘関節は、手掌を体側に向けると、肘 ●前額面での正常なアライメント
頭が後方に向きます(図5)。
ぜんがくめん
まだいけっせつ
図1→肩甲骨の角度
うやく肩甲骨面
130後ね
キーワード上肢帯・・・…上肢を支える骨格のことで、肩甲骨と鎖骨から成る。肩甲帯ともいう。

上肢帯と上肢のアライメントの評価と修正エクササイズ Part 2」
図3 上腕骨頭の頚体角と後捻角
図2)上腕骨 の角度
(後)
1 上肢帯と上肢の理想姿勢と不良姿勢
上腕骨は床に垂直。
図5肘関節の向き
図4前額面での上肢帯と肩関節の 正常なアライメント
上腕骨上面の大結節部は肩峰 よりわずかに外側に位置する。
肩甲骨内側縁 は脊椎の棘突 起と平行で左 右の肩甲骨内 側縁も平行。
Inter
アシック
肩甲骨は第2 ~7肋骨上に、 胸郭上で平坦 に位置する。
肩甲骨内側縁は脊椎の棘突起との距離 成人男性……約7cm 成人女性……5~6cm
学を体側に向けると肘頭 が後方に。
[キーワード肩甲骨面…..肩甲骨は上腕下垂位で前額面に対し約35°の傾きがあり、その傾いた面のこと。

1上肢帯と上肢の理想姿勢と不良姿勢
上肢帯と上肢の 不良アライメント
しゃがんせ
上肢帯、肩関節、肘関節、 手関節、手指の機能異常 上肢帯と上肢の不良アライメントをこ
こでまとめておきます。Part2ではこれ らの評価と修正エクササイズについて述 べていきます。
表1上肢帯の機能異常
そういうきんじょうます
ふきんりょうせいきん
かんせつ
外転
不良所見基準
機能障害の原因 肩甲骨上端は第2胸椎棘突起よりも 僧帽筋上部線維:短縮・硬い 挙上 高く、肩峰も高位
肩甲挙筋・菱形筋:短縮・硬い 肩甲骨上端は第2胸椎棘突起よりも 下制」
僧帽筋上部線維:延長・筋力低下 低く、肩鎖関節は胸鎖関節より低い 胸椎棘突起から7cm 以上離れてい 前鋸筋:短縮・硬い
菱形筋・僧帽筋:延長・筋力低下 前額面上で35°以上前方傾斜 肩甲上腕筋群:短縮・硬い 胸椎棘突起から7cm以下
前鋸筋:延長・筋力低下 内転
前額面上で30°未満前方傾斜 菱形筋・僧帽筋:短縮・硬い 肩甲骨下角が上角よりも脊柱から
僧帽筋上部線維・肩甲挙筋・菱形 上方回旋
筋:短縮・硬い 離れている
僧帽筋下部線維:延長・筋力低下
僧帽筋上部線維:延長・筋力低下 肩甲骨上角が下角よりも脊柱から 肩甲挙筋・菱形筋:短縮・硬い 下方回旋 離れている
前鋸筋下部線維:延長・筋力低下 三角筋・棘上筋:短縮・硬い
平坦な胸郭、肋骨隆起 肩甲骨内側縁もしくは肩甲骨下角 前鋸筋:弱い 翼状肩甲 が胸郭から離れている。
小胸筋:短縮・硬い 肩甲上腕筋群:短縮・硬い
前傾意田?站
134キーワード翼状肩甲…….前鋸筋の弱化によって肩甲骨内縁が胸壁から浮き上がって肩甲骨が隆起する状態。
肩甲骨内縁の浮き上がりが翼のように見えることから(→P58)。

上肢帯と上肢のアライメントの評価と修正エクササイズPart2
表2 肩関節の機能異常
不良所見
1 上肢帯と上肢の理想姿勢と不良姿勢
前方
上方
基準
機能障害の原因
賴節包前方:伸張 骨頭の1/3が肩峰より前方に出てい
大胸筋:短縮・硬い 肩甲下筋:延長・筋力低下
三角筋:短縮・硬い 肩峰に対して上がっている
回旋筋腱板:非効率的
上腕骨頭上方滑り 肘窩が内側、肘頭が外側を向く 肩
外旋筋群:非効率的な制御 甲骨外転していれば上腕骨内旋では
内旋筋群:短縮・硬い ないこともある 例外として、肩甲骨が外転している
外旋筋群:短縮・硬い と上腕骨は正常にみえることがある
内旋
外旋
外転
三角筋:短縮・硬い 上腕骨遠位が体側から離れているが、棘上筋:短縮・硬い 上腕骨は肩峰を越えない
肩甲骨下方回旋位 上腕骨頭上方滑り
表3・肘関節・手関節・手指の機能異常
不良所見
肘関節屈曲
基準
機能障害の原因
上腕三頭筋・上腕筋:短縮・ 立位にて上腕骨が床に垂直ではなく、
硬い 肘が肩よりも後方にある
上腕三頭筋:延長・筋力低下 立位にて尺骨肘頭は後方を向いてい) 回内筋群:短縮・硬い るが、手掌が体側よりも後方を向く回外筋群:延長・筋力低下 背屈位でテーブルに手をつくと手関月状骨が手掌方向に過剰に 節の背面に痛みがある
移動
前腕岡内
かいがいきんぐ
手関節背屈
手指の屈伸, 花納動作が稚拙
手指の腱の滑走が不十分
が不十分
「キーワード回内……前腕が内側に回る動き。外側に回る動きを回外という。

2肩甲骨のアライメントと動き
肩甲骨のアライメントに 作用する筋群
図1→肩甲骨の動きと関与する筋群
挙上・下制
外転・内転
挙上
下制
いていっていて、
くくてすててててまで
拳上の主な動筋
外転の主な動筋
そうぽうきんじょうぶせんい
しょうきょうきん
けんこうきょきん
小胸筋
僧帽筋上部線維
肩甲挙筋 小菱形筋 大菱形筋
しょうりょうけいさん
だいりょうけいさん
ぜんきょきん
前鋸節
内転の主な動筋
下制の主な動筋」 僧帽筋下部線維
そうほうきんかぶせんい
ErrNE
そうほうきんちゅうぶせんい
僧帽筋中部線維
Lit
りょうけいさん
菱形筋
キーワード優位……..他の筋よりもより働きやすい状態。長く続くと筋の短縮につながる。

上肢帯と上肢のアライメントの評価と修正エクササイズPart21
傾があります。 優位な筋群の方向へアライメ
それぞれの運動方向の筋群が優位ある トント不良を生じることがある。
いは短縮し、拮抗筋が延長位で筋力低下 肩甲骨の動きには、挙上・下制、外転があると、優位な筋群の方向へとアライ ・内転、上方尚旋・?片岡旋、前傾・
後 メント不良を生じます(図1)。
2肩甲骨のアライメントと動き
上方回旋・下方回旋
前傾・後傾
下方回旋つ上方回旋
にはいててててててー
前傾
後傾
前傾の主な動筋
上方回旋の主な動筋 僧帽筋上部線維
WILLY MCC
小胸筋
僧帽筋 中部線維 僧帽筋 下部線維
下方回旋の主な動筋
後傾の主な動筋
僧帽筋下部線維
小菱形筋 大菱形筋
Time ELINERA
広背筋
前鋸筋
キーワード延長位……長期間の安静や非活動、あるいは不良姿勢によって伸張された筋の状態。
長く続くと筋力低下(弱化)につながる。

じょうれんこう
さんかくきんけんこうきょく
部が上腕骨を外転させます。その際に、 肩の回旋に伴う
まずは6棘上筋が三角筋に先行して活動 肩甲骨の動き
し、次に三角筋が活動します。さらに骨 肩甲骨の動きと肩関節の動きが連動する。 頭の上方変位を防ぐために、1前面の肩 ることによって、腕の動きが可能になり、 甲下筋と後面の棘下筋・小円筋が上腕骨 ます。また、肩甲骨を動かす筋と肩関節 頭を下方に引き関節窩に安定させるよう を動かす筋は異なります。以下の動きに に働きます。 参加する筋は次の通りです。
●肩甲骨の下方回旋に肩関節の内転が加 ●肩甲骨の上方回旋に肩関節の外転が加わったとき(図4) わったとき(図3)
三角筋肩甲棘部・棘下筋・小円筋・大 堂角筋骨峰部・棘上筋・棘下筋・小円 円筋も参加します。肩甲骨に関しては、 筋・肩甲下筋も参加します。O僧帽筋上 O菱形筋の挙上・下方回旋と、2広背筋 部線維の挙上・上方回旋と、2僧帽筋下 の下制・下方回旋の働きが同時に生じ、 部線維の下制・上方回旋の働きが同時に 挙上と下制が相殺されて純粋な下方回旋 生じ、挙上と下制が相殺されて純粋な上 が生じます。肩関節の内転も加わると、 方回旋が生じます。さらに、5僧帽筋中3三角筋肩甲棘部、4棘下筋・小円筋、 部線維の内転・上方回旋と、前鋸筋の大円筋が働きます。 外転・上方回旋の働きが同時に生じ、内 ,肩関節の挙上(屈曲・外転)には肩甲 転と外転が相殺されて純粋な上方回旋が骨の上方回旋が不可欠です。下方回旋に 生じます。
作用する筋群に優位あるいは短縮がある 肩関節の外転も加わるとも三角筋肩峰 ・と、上方回旋を制限することになります。
けん
肩峰
けんぼうかんせつめん
肩峰関節商 烏口突起
肩峰 烏口突起 魔
2こうとっき
図2) 右肩甲骨の 肋骨面と背 側面
簡節禽
しょうかく 上角
けんこうきょく 肩甲棘
蘭?高
ないほくえん
がいてくえん 外側?
外側? 蘇?商
助骨面,
背側面
角 キーワード関節窩……関節を構成する骨のうち、一方のくぼんだ面(凹面)のこと。一方、凸面のことを関節頭という。

上肢帯と上肢のアライメントの評価と修正エクササイズParty1
図3 肩甲骨の上方回旋と肩関節の外転
0僧帽筋上部線維 2僧帽筋下部線維 5僧帽筋中部線維
前鋸筋 5三角筋肩峰部 6棘上筋 1肩甲下筋・棘下筋・小円筋
2肩甲骨のアライメントと動き
肩甲骨の上方回旋
肩関節の外転
図4 肩甲骨の下方回旋と肩関節の内転
肩甲骨の下方回旋
肩関節の内転
1菱形筋 2広背筋 3三角筋肩甲棘部 4棘下筋・小円筋 6大円筋
(図3・図4「筋骨格系のキネシオロジー 原著第2版』を参考に作成)
キーワード変位・・・ズレのこと。「上方変位」は上方へのズレのこと。

2肩甲骨のアライメントと動き
肩甲骨の運動方向と 関節の動き
だいいちろ23
図1●上肢帯と 肩関節を形成 する5つの関節
けんさかんせつ 肩鎖関節
扁口突起 鎖骨
だいいちきょうつい
だいにけんかんせつ
第1胸椎 きょうさかんせつ 胸鎖関節
第2肩関節
じょうわんこっと2
だい222 大結節
胸骨柄
関節
小結節 けんこうじょうわんかんせつ 肩甲上腕関節 けんこうきょうかくれんけ? 肩甲胸郭連結 けんこうかな 肩甲下高
胸骨体
じょうわんこつ 上腕骨
りょうけいじんたい
22品
上肩鎖靭帯
烏口突起
菱形靭帯
烏口鎖骨?弟 円錐靭帯」
かなりたい
図2 肩関節周囲 の靭帯
じんたい
じょうけんこうおうじんたい
上肩甲横靭帯
烏口肩峰靭帯 うこうじょうわんじんたい 烏口上腕靭帯
じょうなんせつしょうねんじんたい 上関節上腕靭帯
ちゅうかんせつじょうわんじんたい
中関節上腕靭帯
かかんせつじょうわんじんたい
下関節上腕?
キーワード関節包……関節を包んでいる袋状の組織。

上肢帯と上肢のアライメントの評価と修正エクササイズPart21
2 肩甲骨のアライメントと動き
うこうけんぼうじんたい
肩関節の構造 上肢帯は、肩関節(肩甲上腕関節)の 動きに合わせて肩鎖関節と胸鎖関節も動 きます。これら3つの関節は、滑膜関節 (関節包を持つ関節)です(図1)。この 3つ以外に、肩関節の上方をカバーする 烏口肩峰靭帯を機能的な第2肩関節と呼 びます(図1・2)。
また肩甲骨と肋骨の間で肩甲骨がさま ざまな方向に動きますが、肋骨との間に は関節包はなく前鋸筋による連結なので 肩甲胸郭連結と呼ばれます(図1)。
例えば、肩甲骨挙上時(図3)には胸 鎖関節において鎖骨が胸骨に対して凸の
法則で尾側(下方)に滑ります。肩鎖関 節では軸回旋として下方回旋方向に回転 します。これによって純粋な挙上が行わ れます。
滑膜関節における山の法則は、固定さ れた凸面の関節面に対して凹面の関節面 が動くときに、骨の運動方向と同じ方向 に凹の関節面が転がり滑る法則です(図 4)。一方、仏の法則は、固定された凹 面の関節面に対して凸面の関節面が動く ときに、骨の運動方向と同じ方向に凸の 関節面が転がりますが滑る方向が逆にな るという法則です(図4)。これによって、 凹の関節面から凸の関節面が逸脱するの も防いでいます。
後画像
図3 肩甲骨挙上
挙上
肩鎖関節
胸鎖関節
AKA
下方回旋
図4滑膜関節における凹の法則と凸の法則
滑り
転がり
骨運動
骨運動
転がり、
b. 白の法則
a. Mの法則」
滑り
(図3『筋骨格系のキネシオロジー 原著第2版』p151、図4 「触診機能解剖カラーアトラス 上巻」p35を参考に作成)
キーワード滑膜….関節包の内側にある膜。そこから関節の動きを円滑にする滑液(関節液)が分泌される。

あんかんせつ
こんちゅうしゅんせつしょうりっほうおんせつ
に滑ります。肩鎖関節では、肩甲骨が鎖 胸鎖関節の構造と動き
骨に対して凹の法則で腹側(前方)に滑 胸鎖関節は鞍関節です。鞍関節は、他 ります。これによって大きな外転が可能 にも第1手根中手関節と衝立方関節があとなります。 ります。鞍関節とは馬に乗せるくら(韓) 肩甲骨上方回旋時(図6) は、胸鎖関 とくらが90° 向きを変えて、表同士が接 節において鎖骨が胸骨に対して凸の法則 している関節のことです。胸鎖関節は、 で尾側(下方)に滑ります。肩鎖関節で 前額面では鎖骨が胸骨に対して凸の法則は軸回旋として上方回旋方向に回転しま で動き、水平面では山の法則で動きます。 す。これによって大きな上方回旋が行わ ちなみに肩鎖関節は、水平面では肩甲骨れます。 が鎖骨に対して凹面になっています。そ
肩甲骨の動きを徒手で確認 れ以外に前額面では軸回旋も行う関節です。
肩甲骨外転時(図5)は水平面の動き これらの動きを徒手で確認するために になります。よって胸鎖関節において鎖は、被験者を側臥位にし、後方から調べ 骨が胸骨に対して凹の法則で腹側(前方) ます(図7)。肩甲骨の外転・内転は肋
上画像
図5・肩甲骨外転
水平面調整
前方牽引+
あんかんせつ
鞍?節
10
肩鎖関節
胸鎖関節
後画像
馬に乗せる
挙上
同領?節
図6 肩甲骨上方回旋
鎖関節
+
6
)
上方回旋、
A
(図5・6『筋骨格系のキネシオロジー 原著第2版」p151-152を参考に作成)
キーワード軸回旋……骨の長軸を中心に回旋する動きのこと。

上肢帯と上肢のアライメントの評価と修正エクササイズ、Part2
骨に沿って滑らせます。挙上・下制も同 ・ しっかりと把持して行います。 様です。上方回旋・下方回旋は、肩甲骨 硬い方向が見つかったら、その方向へ 肩甲棘中央の2横指ほど下方を軸としてのストレッチングを、30~60秒を1回と 回旋させます。前傾・後傾は、肩甲骨を ・ して3回ほど実施するとよいでしょう。
2 肩甲骨のアライメントと動き
図7肩甲骨のモビライゼーション
外転
内転
肋骨に沿って滑らせる。
拳上
下制
肋骨に沿って滑らせる。
上方回旋
下方回旋
肩甲骨肩甲棘中央の2横指ほど下方を軸として回旋させる。
前傾
後傾
肩甲骨をしっかり把持して行う。
キーワードモビライゼーション….関節、軟部組織または神経の可動性を回復させるための徒手理学療法のこと。
-43

3肩関節の動き
正常な肩関節の動きと 可動域
肩甲骨下角は中腋窩線を越えず、または 肩関節の動きと可動域
胸郭から約1cm以上外側に突出せず、 次に肩関節の動きを見ていきましょう。 肩甲骨は約60° の上方回旋を生じます。 正常な肩関節の動きと可動域は次の通り。 なお屈曲160°までは肩甲骨は上方回旋 です(表1)。
とわずかな挙上・外転の動きが生じます ●屈曲
が、屈曲160° 以降は肩甲骨はわずかに 肩関節の屈曲(前方挙上)の可動域は 下制・内転・後傾します。その際、過剰 180° です。肩甲骨は屈曲60まではほ な肩甲骨挙上・下制または脊柱の動きは とんど動きませんが(セッティング・フ 伴わないのが正常です。 ェイズ = setting phase)、それ以降は、 ●挙上位からの伸展 上腕骨挙上と肩甲骨上方回旋の比率は2:
1 屈曲位から0に戻す伸展では、肩甲 です(肩甲上腕リズム)。最終肢位では、 骨は胸郭上に位置したまま下方回旋・内
転します。上腕骨と肩甲骨の動きの比率
は2:1です。上腕骨頭は肩関節伸展の際、 図1●肩関節の屈曲・伸展
関節窩中心にあります。 ●外転
外転(側方挙上)の可動域は180°です。 肩甲骨は外転30°まではほとんど動きま せんが (setting phase)、それ以降、 上腕骨挙上と肩甲骨上方回旋は2:1の比 率で動きます(肩甲上腕リズム)。外転 90°以降は上腕骨の外旋も生じますが、 上腕骨頭は関節窩に保持されています。 最終肢位では、肩甲骨下角が中腋窩線に 到達し、肩甲骨の上方回旋は約60°です。 ●外転位からの内転 外転位から0に戻す内転では、肩甲
伸展
屈曲
44
キーワードセッティング・フェイズ(setting phase)……肩甲上腕リズムの静止期のこと。肩甲骨が胸郭に固定されて
いる状態。

上肢帯と上肢のアライメントの評価と修正エクササイズ Part21
3 肩関節の動き一
図2 肩関節の外転・内転
骨は胸郭上に位置したまま下方回旋・内 転します。上腕骨と肩甲骨の動きの比率 は2:1で、上腕骨が0に戻るまで上腕骨 頭は関節窩中心にあります。 ●外旋
背臥位における肩関節外転90°位 (2nd position) での肩関節外旋は、肩甲骨 外転や下制の動きをほとんど伴わずに 90°可能です。 ●内旋
背臥位における肩関節外転90°位 (2nd position) での肩関節内旋は、肩甲骨 の前傾や上腕骨頭の前方滑りをほとんど 伴わずに70°(手関節掌屈すると手指が 治療台に届く)可能です。
内転
外転
図3肩関節の外旋・内旋
内旋
外旋
表1→正常な肩関節の動き
屈曲
挙上位からの伸展
外転
180°。肩甲骨下角は中腋窩線を越えず、または胸郭から約1cm以上外側 に突出せず、肩甲骨の外転および上方回旋60°。 最終域では、肩甲骨はわずかに下制、後傾、内転。過剰な肩甲骨挙上・ 下制または脊柱の動きは伴わない。 肩甲骨が下方回旋/内転し、胸郭上にある。上腕骨と肩甲骨の動きの比 率は2:1。上腕骨頭は肩関節伸展の際、関節窩中心にある。 30%で肩甲骨が上方回旋/外転し、その後上腕骨と肩甲骨の動きの比率は 2:1で、上腕骨は外旋し、かつ関節窩に保持。180°外転位で、肩甲骨下 角が中腋窩線に到達。肩甲骨上方回旋60°。 肩甲骨は胸郭上に位置し、下方回旋/内転。上腕骨と肩甲骨の動きの比 率は2:1で、上腕骨がニュートラルに戻るまで上腕骨頭は関節窩中心にある。 肩甲骨外転や下制の動きをほとんど伴わずに90° 外旋。 肩甲骨の前傾や上腕骨頭前方滑りをほとんど伴わずに70°内旋(手関節を 掌屈すると手指が治療台に届く)。
外転位からの内転
外旋(セカンド・ポジション)
内旋(セカンド・ポジション)
キーワードセカンド・ポジション(2nd position)…… 肩関節の外旋・内旋での3つの肢位の1つ。1st positionは上肢下垂位での内・外旋、
2nd positionは肩外転90での内外旋、3rd positionは肩屈曲90°での内外旋。
【45

O LISTTIMER タイマー終了
3肩関節の動き
けんこうこつがいてん
肩甲骨外転時の 肩甲上腕リズム
けんこうじょうわん
外転 60
じょうわんこつだいけっせつけん
肩甲上腕リズムの動き
表1・肩関節外転時の肩甲上腕リズム 外転時の肩甲上腕リズムについて説明 します(図1、表1)。外転30°以上では
上腕骨|30°外転 肩甲上腕関節での運動と肩甲骨回旋は約
外転 Phase1 肩甲骨
わずかな動き 2:1で推移します。肩関節外転30°まで
30°
(setting phase) の肩甲骨の胸郭への固定をセッティング
鎖骨 0~5°挙上 ・フェイズ (setting phase) といいます。
上腕骨40°外転 外転90° すなわち「腕が床と水平になっ
20°上方回旋、 たら、手の平を上に向けて外転を続けて
Phase2 肩甲骨「わずかな前方突出
か挙上 ください」と指導することがあります。 これは、上腕骨大結節が肩峰に当たるか
鎖骨「15°挙上 らと説明されますが、実際には90° では
上腕骨60°外転、90°外旋 衝突しません。 大結節が肩峰に当たるのは145°以降
Phase3 肩甲骨 | 30°上方回旋 です(図2)。実際には肩甲骨上方回旋
30~50°後方回旋、
15°挙上 の挙上に伴い、大結節が肩峰からうまく それて烏口肩峰靭帯の下に滑り込みます。 正確には「肩が145° まで外転したら、 Aは上肢を下に降ろしている安静時を 手の平を上に向けて外転を続けてくださ 示します。肩鎖関節と胸鎖関節、それと い」ということになりますが、これはわ たるんだロープで示されている烏口鎖骨 かりにくいので「水平まで」と言い換え 靭帯です。前鋸筋が肩甲骨を上方回旋さ ても問題はないでしょう。
せると、烏口鎖骨靭帯は伸張されます(図
3-B)。伸張された靱帯に生じる張力に 「鎖骨の後方回旋のメカニズム
よってクランク形の鎖骨を前方に引き出 また、表1のPhase3の鎖骨の動きがし、鎖骨が上方回旋することになり、結 30~50° 後方回旋となっています。図3-1 果的に鎖骨全体が後方回旋するのです。
外転 90″
鎖骨
うけんぼうじんた
46
キーワード大結節……上腕骨頭の外側にある2つの隆起のうち、外側方を向く大きいほうの隆起のこと。
小さいほうの隆起を小結節という。

O LISTTIMER タイマー終了
上肢帯と上肢のアライメントの評価と修正エクササイズPart227
3 肩関節の動き
図1●外転時の肩甲上腕リズム
図2 肩甲骨上方回旋と肩関節外転
180
肩甲骨関節窩の動き/
112145
GH 関節での 120°外転
70分 55000
肩峰の動き
SC関節 後方回旋つ
(301
AC関節 上方回旋
SC関節挙上、
肩甲胸郭関節での 60°上方回旋」
肩関節外転時の 上腕骨と肩甲骨の動き
SC関節:胸鎖関節 AC関節:肩鎖関節 GH関節:肩甲上腕関節
図3鎖骨の後方回旋のメカニズム」
A 安静時の状態
B 肩甲骨の上方回旋時
AC関節 (肩峰で
SC関節
鎖骨の後方回旋
鎖骨
co
鎖骨の 「胸骨上方回旋し
烏口鎖骨??
烏口突起
前鋸筋の 前方牽引
(図1・3「筋骨格系のキネシオロジー 原著第2版』p165,167を参考に作成)
キーワード肩峰…….肩甲棘(肩甲骨背面の上部にある隆起)の外側端にある突起のこと。内側面で鎖骨と連結する。

3肩関節の動き
肩甲骨関節窩に対する 上腕骨頭の動き
2こうじょうれんじんたい
CHL(烏口上腕靭帯)です。 肩関節屈曲時の上腕骨頭の 動き
肩関節外転時の上腕骨頭の
動き 次に肩甲骨関節窩に対する上腕骨頭の 動きを説明しましょう。
図2は、前額面での肩関節外転時の上 図1は、矢状面での肩関節屈曲時の上 腕骨頭の動きを示します。上腕骨頭の関 腕骨頭の動きです。上腕骨頭の関節面は 節面は凸の法則で尾外側(下外方)に滑 スピンのように凸の法則で背尾側(後下ります。引き伸ばされたICL(下関節包 方)に滑ります。伸張される組織はPC 靭帯)によってハンモックのように上腕 (後方関節包)、ICL(下関節包靭帯)、 骨頭が支持されます。SCL(上関節包靭
図1 肩関節屈曲時の上腕骨頭の動き
図2 肩関節外転時の上腕骨頭の動き
肩峰下滑液包
ストーン
棘上筋の牽引
PC:後方関節包 ICL:下関節包靭帯 CHL:烏口上腕靭帯
SCL:上関節包靱帯 ICL:下関節包靱帯
キーワード靭帯……骨と骨をつなぐ強靱な結合組織の束。骨と骨の結合を強める、関節の可動域を制限するといった働き
がある。

上肢帯と上肢のアライメントの評価と修正エクササイズPart27
3 肩関節の動き
帯)はこの靭帯が付着する棘上筋によっ
肩関節内旋時の上腕骨頭の て引っ張られて緊張を保持しています。
動き 肩関節外旋時の上腕骨頭の
図4は、上肢を体側におろした位置 (1st 動き
position)での水平面での肩関節内旋 図3は、上肢を体側におろした位置(1st 時の上腕骨頭の動きを示します。明確に position) での、水平面での肩関節外 表示するために三角筋鎖骨部(前部線維) 旋時の上腕骨頭の動きを示します。棘下 は示していません。肩甲下筋が小結節を 筋・小円筋が上腕骨頭を背側(後方)に 背側に引くことで上腕骨頭の関節面は背 回し、上腕骨頭の関節面が腹側に滑りま側に滑ります。この際大胸筋が過剰に働 す。肩甲下筋とACL(前関節包靭帯)は くと骨頭を腹側に引き出すことになり、 伸張され、その結果、他動的緊張を生じ,肩甲下筋は延長されて筋力が低下してい ます。PCL(後関節包靭帯)は棘下筋のきます。大胸筋と肩甲下筋のバランスが 収縮による牽引によって緊張を保持して 特に重要になります。 います。骨頭前後の2つの矢印は外旋時 に骨頭を中心に向け、そして安定させる 力を表します。
図3 肩関節外旋時の上腕骨頭の動き
図4 肩関節内旋時の上腕骨頭の動き
上面像
棘下筋の 収縮
上面像
広背筋
固定された肩甲骨
上腕骨
po
→肩甲下筋の伸張
肩甲下筋」
内旋
ACE
大胸筋
PCL:後関節包靱帯 ACL:前関節包靱帯
(図1~4 「筋骨格系のキネシオロジー 原著第2版』p162,163,183を参考に作成)
キーワード矢状面…….身体を左右に分ける面のこと。 前額面……身体を前後に分ける面。

4上肢帯と上肢の機能異常と修正
けんこうこつ
肩甲骨挙上位と下制位の 不良と修正
肩甲骨挙上位と下制位の アライメント
異常が生じ、誤った肩関節の動きが生じ てしまいます。
まずは肩甲骨挙上位または下制位の不 良アライメントとその修正方法を説明し ていきましょう。
肩甲骨周囲の筋にインバランスが存在 すると、通常の姿勢でも肩甲骨の位置に
図1●両肩峰挙上
図2、両肩峰下制
両肩峰が第1胸椎棘突起下線を通る水平線より も上方にある。
両肩峰が第1胸椎棘突起下を通る水平線より も下方にあり、肩甲骨は下方回旋している。
キーワードインバランス・バランスの不均衡のこと。

上肢帯と上肢のアライメントの評価と修正エクササイズ Part 21
そうほうきんじょうぶせんいけんこうきょきん
図1は、両肩峰が第1胸椎棘突起?線 います。これは三角筋と棘上筋の短縮を を通る水平線よりも上方にあります。肩 示唆します。 峰を含む肩甲骨は挙上し、頭部は短縮し て見えます。僧帽筋上部線維と肩甲挙筋
肩甲骨挙上位と下制位の
筋のインバランス が短縮位にあり、僧帽筋下部線維が延長 位にあることを示しています。
肩甲骨の挙上では、僧帽筋上部線維と 図2は、両肩峰が第1胸椎棘突起下縁 肩甲挙筋が短縮し、僧帽筋下部線維は延 を通る水平線よりも下方にあり、肩甲骨 長位になり筋力が低下します。 は下方回旋しています。下方回旋は活動 肩甲骨の下制では、肩甲挙筋と小菱形 優位な肩甲挙筋と菱形筋が原因で、僧帽筋が短縮し、僧帽筋上部線維は延長位に 筋上部線維は延長位にあることを示して なり筋力が低下します(図3)。 います。また右肩は上腕骨上面の大結節この筋のインバランスを知っておくこ 部が肩峰の下に入り込んでいるように見とが治療を行うのに大切です。 え、肘と体側との距離も左より広がって
4 上肢帯と上肢の機能異常と修正
そうぼうきんかぶせんい
図3・肩甲骨挙上位と下制位の原因となる筋インバランス
僧帽筋上部線維・短縮
僧帽筋上部線維・延長
肩甲挙筋・短縮
肩甲挙筋・短縮
小菱形筋・短縮
「肩甲骨挙上位の原因となる筋インバランス
「肩甲骨下制位の原因となる筋インバランス)
僧帽筋下部線維・延長
キーワード棘突起…脊柱を構成する椎骨の後端にある隆起し突出した箇所。

4上肢帯と上肢の機能異常と修正
けんこうこう
じょう
肩甲骨挙上位の修正エクササイズ
エクササイズのポイント
部線維の筋力強化エクササイズが必要に なります。
きんじょうせん
肩甲骨挙上位 (P50 図1)では、僧帽 筋上部線維と肩甲挙筋の静的(スタティ ック)ストレッチング、および僧帽筋下
エクササイズ
左耳が肩よ り前に出る ようにする。
僧帽筋上部線維のセルフ・ストレッチング 右手は椅子のやや後方をつかんでおきます。頸椎を左側 椅子のやや後 屈・右回旋することで右の僧帽筋上部線維が伸張されまろをつかむ。 す。左耳が肩よりも前に出るように回しましょう。左手 を頭の上に乗せることで、さらにストレッチング効果が 増しますが、強く押さえてはダメです。軽く重さが加わ る程度にしてください、体幹が左に倒れないように、右 手はしっかりと椅子をつかんでおいてください。 30~60秒間ストレッチングを行い、15秒ほど休み、こ れを3回ほど繰り返します。これらの筋群の伸張性がな いと、僧帽筋下部線維の筋力強化の効果が半減してしま います。
エクササイズ
肩甲挙筋のセルフ・ストレッチング
鼻を肩に近 づけるよう に回す。
右手は椅子のやや後方をつかんでおきます。頸椎を左側 屈・左回旋することで右の肩甲挙筋が伸張されます。鼻 を肩に近づけるように回しましょう。左手を頭の上に乗 せることで、さらにストレッチング効果が増しますが、 強く押さえてはダメです。軽く重さが加わる程度にして椅子のやや後 ください。体幹が左に倒れないように、右手はしっかりをつかむ。 と椅子をつかんでおいてください。 30~60秒間ストレッチングを行い、15秒ほど休み、こ れを3回ほど繰り返します。これらの筋群の伸張性がな いと、やはり僧帽筋下部線維の筋力強化の効果が半減し てしまいます。

上肢帯と上肢のアライメントの評価と修正エクササイズPart21
エクササイズ
座位(または立位)での僧帽筋下部線維筋力強化のエクササイズ1 いかり肩では、僧帽筋上部線維は短縮し、僧帽筋 ら開始し、徐々に回数を増やしてください。5秒 下部線維は延長されています。そこで、肩甲骨を 間保持の間に、息は止めないように注意しましょ 上方回旋位にして肩甲挙筋を伸張位にして働きを 抑制した状態にして(日)、両肩甲骨を下制挙上 このエクササイズによって、僧帽筋下部線維を使 することで僧帽筋下部線維の強化エクササイズを って肩甲骨を下制・内転・後傾させ、大胸筋・小 実施します(2)。
胸筋・広背筋をストレッチングすることも目的と 下制位にて最低5秒間は止めてください。10回か。 しています。
4 上肢帯と上肢の機能異常と修正
う。
そのサイト
立位での僧帽筋下部線維の 筋力強化エクササイズ2 肩関節屈曲の最終域では、僧帽筋下部線維の作用により、肩 甲骨はわずかに下制・内転・後傾します。しかし、大胸筋・ 小胸筋・広背筋が短縮していると、この肩甲骨の動きが制限 されます。そこで、上肢を屈曲160°で外旋位として手の甲 のみを壁につけ、その位置から手の甲を壁から離します。そ の際には、肩甲骨と上肢がいっしょに動くように意識します。 そのとき腹部に力を入れてください。 僧帽筋下部線維を使って肩甲骨を下制・内転・後傾させ、大 胸筋・小胸筋・広背筋のストレッチングも同時に行うことに なります。

4上肢帯と上肢の機能異常と修正
けんこう
肩甲骨下制位の修正エクササイズ
| エクササイズのポイント
位)から頸部を屈曲、対側へ側屈・回旋
させると肩の屈曲角度が減少する場合は、 肩甲骨下制位(P50 図2)では、背中 肩甲挙筋の短縮があり、肩甲骨を下方回 挙筋と小菱形筋のストレッチングが必要。 旋方向に引いたことが原因と考えられま になります。肩甲挙筋の筋長検査で肩甲 – す(図1)。このような場合は、まさし 挙筋の短縮の程度を評価しておくことも く肩甲挙筋のストレッチングが必要にな お勧めします(図1)。
ります。さらには、僧帽筋上部線維の筋 常勤節最大定曲位(肩甲骨は上方回旋 力強化エクササイズも必要になります。
エクササイズ
肩甲挙筋の セルフ・ストレッチング ここでは、P52で紹介した肩甲挙筋の静的ス トレッチング以外の方法を紹介します。 四つ這いの姿勢で、下腹部をゆっくりと引っ 込めて、おへそをゆっくりと背中の方向に引 き寄せます。腰椎の過剰な屈曲は多裂筋の収 縮によって防いでください。肩甲骨は、前鋸 筋を収縮させて外転・上方回旋位とします (日)。 次に、口の姿勢を維持したままで、顎を引 いてから頭部を屈曲させます (2)。 そこから、回旋軸を一定にしたまま左回旋す ることで、右肩甲挙筋をストレッチングしま す(日)。 さらに、反対側に回旋することで左肩甲挙筋 をストレッチングします (4)。 3と4で、その肢位にて10~20秒間は止め てください。 左右をそれぞれ行った後で、15秒ほどリラ ックスし、さらに同じ過程を2回繰り返して ください。保持の間は、息は止めないように してください。
Try

上肢帯と上肢のアライメントの評価と修正エクササイズ Part2
図1●肩甲挙筋の筋長検査
4 上肢帯と上肢の機能異常と修正
肩関節最大屈曲位 (肩甲骨は上方回 旋位)の姿勢をと
頭部を屈曲、対側へ側 屈・回旋させたとき、 肩の屈曲角度が減少す る場合は、肩甲挙筋の 短縮がある。
エクササイズ
座位(または立位)での僧帽筋上部線維の筋力強化エクササイズ 僧帽筋上部線維は筋力強化が必要です。肩甲骨を 化エクササイズを実施します(2)。 上方回旋位にして肩甲挙筋を伸張位にして働きを 挙上位にて最低5秒間は止めます。10回から開始 抑制した状態にして(日)、両肩甲骨と両上肢を し、徐々に回数を増やしてください。5秒間保持 いっしょに挙上することで、僧帽筋上部線維の強 この間に、息は止めないようにしてください。

4上肢帯と上肢の機能異常と修正
けんこうこつ
肩甲骨の左右評価とエクササイズ
も大切です。姿勢の観察により、そのア エクササイズのポイント
ライメントが正常なのか不良なのかをし 肩甲骨挙上位、下制位の不良姿勢では、 っかり評価することが大切で、そのアラ 左右の肩甲骨の上方回旋と下方回旋の左イメントから筋のインバランスと関節の 右差を評価し、回旋運動を指導すること。 異常な動きを推測できる能力が必要にな
エクササイズ
肩甲骨時計回りエクササイズ これは左肩甲挙筋のストレッチングと左僧帽筋上 部線維筋力の強化、および右僧帽筋上部線維のス トレッチングと右肩甲挙筋の筋力強化を兼ねたエ クササイズです。
左右の肘関節を90°曲げてから肩関節を時計回り に2の位置まで回転させます。2で5秒止めて 口の状態に戻します。これを10回から始め、慣 れてきたら10回×3セット行うようにします。

上肢帯と上肢のアライメントの評価と修正エクササイズPart21
るのです。
エクササイズ1は、右肩甲骨挙上位・ 左肩甲骨下制位の左右非対称性を修正す るエクササイズです。左肩甲挙筋ストレ ッチング+左僧帽筋上部線維筋力強化工 クササイズ、および右僧帽筋上部線維ス トレッチング+右肩甲挙筋筋力強化エク ササイズを実施します。
エクササイズ2は、左肩甲骨挙上位・ 右肩甲骨下制位の左右非対称性を修正す るエクササイズです。左僧帽筋上部線維 ストレッチング+左肩甲挙筋筋力強化エ クササイズ、および右肩甲挙筋ストレッ チング+右僧帽筋上部線維筋力強化エク ササイズを実施します。
4 上肢帯と上肢の機能異常と修正
エクササイズ
肩甲骨反時計回りエクササイズ 左僧帽筋上部線維ストレッチングと左肩甲挙筋の です。左右の肘関節を90°曲げてから肩関節を反 筋力強化、および右肩甲挙筋のストレッチングと 時計回りに2の位置まで回転させます。2で5 右僧帽筋上部線維の筋力強化を兼ねたエクササイ 秒止めて口の状態に戻します。これを10回から ズです。
始め、慣れてきたら10回×3セット行うように エクササイズ1とは腕を逆回りに回転させる方法します。
1

4上肢帯と上肢の機能異常と修正
翼状肩甲の評価と原因
position)での肩関節外旋で菱形筋の 翼状肩甲とは?
外形が明確になります。かつ、外旋の代 次に上肢帯のアライメント不良でよく 償として肩甲骨の内転が生じます(図1)。 見られる翼状肩甲について解説します。 この代償を防ぐために、他動的に肩甲骨
翼状肩甲では、通常の立位時にも肩甲の内転を抑制すると、外旋可動域と筋力 骨下角が浮き上がっており、肩屈曲位か は低下します。 らの復位動作や肩外転90° での肩関節外
翼状肩甲の評価 旋でさらに下角が浮いてきます。菱形筋 が優位な場合は、肩関節外転90°位(1st 図2は、右肩が下制し、肩甲骨は翼状
「図1 菱形筋の活動が優位な場合の外旋運動
菱形筋が優位な場合、 自然下垂位での肩関 節外旋で菱形筋の外 形が明確になる。
キーワード自然下垂位… 腕を自然におろした状態の位置。

上肢帯と上肢のアライメントの評価と修正エクササイズPart 21
そうほうきんじょうせんい
肩甲になっています。僧帽筋上部線維(
図 対抗できなくなり、三角筋筋力により肩 4)に加えて、前鋸筋(図5)の長さも。 甲骨は下方回旋してしまいます(図3)。 延長位にあることを示しています。また、 肩甲挙筋(図6) と菱形筋(図7)は活
図2 右肩峰下制 動が優位になっています。
右肩が下制し、 菱形筋の活動が優位な場合は、前鋸筋
肩甲骨は翼状肩 の筋力低下も示唆されます。この確認と
甲になっている。 して、患者には肩甲骨面上30° 外転位で その肢位を保ってもらいます。上腕の遠 位に抵抗をかけても肩甲骨の位置が変化 しなければ正常です。しかし、前鋸筋に よる十分な上方回旋力の固定力が弱い場合、 肩甲骨は不安定となり三角筋の牽引力に
4 上肢帯と上肢の機能異常と修正
図3 前鋸筋の機能的筋力検査
三角筋
下方回旋
抵抗力
保持力
肩甲骨面上30°外転位にしてそ の肢位を保つ。
上腕の遠位に抵抗をかける。 肩甲骨の位置 変化なし 正常 (肩甲骨の位置 下方回旋前鋸筋の筋力低下が
疑われる
159
キーワード遠位・近位… 基準となる部位から遠い位置にあることを「遠位」、近い位置にあることを「近位」という。四肢の
場合、体側から遠い側を「遠位」、体側に近い側を「近位」という。

菱形筋が優位で、前鋸筋に筋力低下が小円筋の筋力が低下します。この筋力低 あると肩甲骨の上方回旋が不足すること 下は、肩関節挙上時に上腕骨頭を下方に になり、肩関節の挙上が不十分になりま 引き関節窩に安定させる機能の低下につ す。また、菱形筋が棘下筋・小円筋の外 ながり、上腕骨頭が上方変位する異常を 旋作用を代償することになり、棘下筋. 生じさせることにもなります。
図4小僧帽筋上部線維
図5・前鋸筋
僧帽筋上部線維 僧帽筋中部線維
僧帽筋下部線維
図6→肩甲挙筋
図7~菱形筋
小菱形筋
大菱形筋

上肢帯と上肢のアライメントの評価と修正エクササイズPart2
じょうしたい
じょうし
4上肢帯と上肢の機能異常と修正
よくじょうけんこう
翼状肩甲の修正エクササイズ
4 上肢帯と上肢の機能異常と修正
ら、両肘を床についた姿勢)から始め、 | エクササイズのポイント
つ這い位へと進めていきます。さらに 翼状肩甲の修正には、前鋸筋の筋力強 雑巾がけをすることで外乱を与え、雑巾 化エクササイズが必要になります。 がけしていない側の固定性を高めていき 最初はパピーポジション(うつ伏せか。 ます。
エクササイズ
前鋸筋強化 エクササイズ1
抵抗
前方突出
前鋸筋に筋力低下がある場合、 筋力を強化することが重要にな ります。まず、両前腕支持の姿 勢から肩甲骨を前方に突き出し (前方突出)、胸椎を天井方向に 動かします。
抵抗
前方突出
これができるようになれば、四 つ這いからの両肩甲骨前方突出 へと進めます。
次に、一側上肢保持による肩甲 骨前方突出ができるようにと、 徐々に抵抗を与えながら筋力を 強化します。
※セラピストの左手は前方突出の 誘導に使います。

エクササイズ
前鋸筋強化エクササイズ2 前ページのエクササイズに耐えられるようになれい、その間にも右上肢の前鋸筋保持ができるよう ば、一側、例えば右上肢の前鋸筋保持の状態で、 にと強化していきます。 外乱として左上肢の雑巾がけを前後・左右へと行
右前鋸筋を保持した状態。外乱として 左上肢の雑巾がけをする。

上肢帯と上肢のアライメントの評価と修正エクササイズ
です(図8)。これは前鋸筋の筋力低下 | 前鋸筋の弛緩のタイミングの
というよりも、前鋸筋の弛緩のタイミン 違い
グの問題が大きいためです。 このようなエクササイズが前鋸筋低下 この修正エクササイズとしては、復位 の人に必要かというと、そうでもない人、時に翼状肩甲が出始める前から手掌に軽 もいます。正常な人では肩甲骨の浮き上 度圧迫刺激を与え、患者は前鋸筋の力で がりは屈曲時も復位時もないのが正常で 押し返すようにします。軽い刺激で十分 す。しかし、屈曲時に翼状肩甲はないの。 です。そして実際に翼状肩甲が出るあた に復位時に翼状肩甲が見られる例がそう りではしっかりと意識させます(図9)。
4 上肢帯と上肢の機能異常と修正
図8肩関節屈曲からの 復位時の前鋸筋の問題
屈曲時には異常はない のに、復位時に翼状肩 甲が見られる例がある。
図9前鋸筋への軽度圧迫刺激
復位時に翼状肩甲が出始める前から手掌に軽度圧迫刺激 を与え、患者は前鋸筋の力で押し返すようにする。

4上肢帯と上肢の機能異常と修正
優位で短縮した大胸筋の修正
こうじょうりんかんせ2
.
着する大胸筋と広背筋の機能障害は、肩 大胸筋が優位で短縮している
甲上腕関節の機能異常に関与します。大 場合の機能障害
胸筋と広背筋が短縮して硬くなっていれ 次に大胸筋が短縮している場合の機能ば、肩関節挙上の最後1/3あたりから外 障害について解説します。
旋運動が制限されることになります。 大胸筋(図1) は上腕骨を内転・内旋 さらに、肩甲下筋と大胸筋のバランス させます。鎖骨部線維は肩関節を屈曲、 が崩れる、すなわち大胸筋が短縮して肩 水平屈曲、内転、内旋させますが、肩関 甲下筋が延長位で筋力低下を起こすと、 節90°以上の外転位では内転作用が外転大胸筋の活動は上腕骨頭の過度な前方滑 作用に変わります(習慣的機能の逆転)。 りを引き起こす原因となります。 胸肋部・腹部線維は、上肢帯を下制させ広背筋と大胸筋は上肢帯を下制させる ます。また腹直筋・外腹斜筋と連結し、 ため、もしその一方または両方が短縮し 体幹を屈曲させます。
たり活動優位になると、肩関節屈曲(挙 肩甲下筋よりも上腕骨のより遠位に付上)に伴わなければならないはずの上肢
図1●大胸筋
鎖骨部
きょうろくぶ
胸肋部
ふくぶ
腹部
| キーワード習慣的機能の逆転… 同一の筋が技位によって相反する機能をもつこと。

上肢帯と上肢のアライメントの評価と修正エクササイズPart21
帯の挙上を制限してしまい、腕が上がり。 は過剰に延長されている例が多いです。 にくくなります。
腕が床に水平までいかなければ、短縮し
ていることになります。 大胸筋の筋長検査
膝を立てないように股関節を伸展する 大胸筋の筋長検査は、背臥位で膝を立ことで肩関節の挙上角度が図2のCより てた姿勢で行います(図2)。これは外も減少した場合は、大胸筋腹部線維と連 腹斜筋という腹部の筋を緩めるためです。 結する外腹斜筋の短縮があることを示し 大胸筋腹部線維は短縮し、大胸筋鎖骨部 ます(図3)。
4 上肢帯と上肢の機能異常と修正
図2>大胸筋の筋長検査
| A 大胸筋鎖骨部線維
B 大胸筋胸肋部線維
IC 大胸筋腹部線維
図3 股関節伸展位での 大胸筋腹部線維の 検査
キーワード体幹…人体で頭部、四肢を除いた部分。胴体のこと。胸部、腹部、腰部がある。

4上肢帯と上肢の機能異常と修正
大胸筋のセルフ・ストレッチング
ストレッチングのポイント
ついて解説します。大胸筋のセルフ・ス トレッチングは、座位と椅子を使った方 法の2種類があります。
ここからは優位で短縮した大胸筋を修 正するセルフ・ストレッチングの方法に
エクササイズ
椅子に座ってのセルフ・ストレッチング 椅子に座って行う方法では、まず両手を頭の高さ 肩関節を外旋して行きます。このとき類は突き出 くらいまで上げて、両手にタオルやベルトを持ちさず、肘を伸ばしたままで行います。 ます。そこから手の平を天井に向けるように、両 30~60秒を3回実施してください。

上肢帯と上肢のアライメントの評価と修正エクササイズPart2
エクササイズ
両サイドに椅子を並べてのセルフ・ストレッチング 両サイドに椅子をおき、身体を沈み込ませることります。上腕骨頭の前方偏位には注意しながら行 により大胸筋をストレッチする方法です。肩の角 います。 度を変えることにより大胸筋の伸びる部位が変わ。 30~60秒を3回実施してください。
4 上肢帯と上肢の機能異常と修正

4上肢帯と上肢の機能異常と修正
こうはいき
優位で短縮した広背筋の修正
広背筋が優位で短縮している 場合の機能障害
(B)。その状態で他動的に伸展すると (イラストは他動的に腰椎を伸展した後 を示している)、広背筋が緩むことで腕 が床に近づくことになります。これはま さしく広背筋の短縮を示唆します。 広背筋の短縮と間違えやすいものがい
図1>広背筋
次に広背筋の短縮による機能障害につ いてです。
広背筋(図1)は肩関節を伸展、内転、 内旋させ、肩を後内方に引きます。また 上肢帯の下制と骨盤前傾にも作用します。
広背筋が短縮すると肩を屈曲(挙上) する可動域は制限されます。腹筋群の筋 力が正常であれば、腹筋を収縮させよう と努力しなくても比較的正常な腰部の湾 曲が維持できます。しかし腹筋群の緊張 が不足している場合に、患者が肩を屈曲 すると代償的に腰椎は伸展してしまいま す。
腰椎伸展時に腰痛を訴える患者の広背 筋は短縮または硬直していることが多く、 その患者が頭部以上の高さのものにリー チ動作をするとやはり腰痛を引き起こす ことになります。
13
広背筋の筋長検査 広背筋の筋長検査は、背臥位で膝を立 てた姿勢で行います(図2)。正常では 腕が床までつきます(A)。しかし短縮 している場合は、腕は床につきません
キーワードリーチ動作… 物体をとったり触れたりするときの動作。

上肢帯と上肢のアライメントの評価と修正エクササイズPart 2
くつかあります。腹筋上部の短縮では、 します。小胸筋の短縮では、肩甲骨は前 胸部がへこみ、肩が前方に引かれます。 傾し、上肢帯は下制、前方移動します。 胸椎後湾の顕著な場合も完全屈曲は不可 結果的に肩関節の可動域は正常でも、腕 能です。胸椎後弯によって、完全屈曲時 は床にはつかず、見かけ上の制限となり の肩甲骨の上方回旋と内転・下制が不足ます。
4 上肢帯と上肢の機能異常と修正
図2 広背筋の筋長検査
「A 正常
B 広背筋の短縮
腰椎を他動的に伸展させると腕が床に近づく。
「キーワード前弯・後弯・・ 前方に湾曲している状態を「前弯」、後方に湾曲している状態を「後弯」という。腰椎前弯、胸椎後
湾などという。
【69

量と質を検査します。自動回旋で左右差 広背筋と外腹斜筋の筋長検査
があるような制限が確認されたら、その 広背筋と外腹斜筋の短縮を見分ける方 制限位置から他動的にさらに回旋を加え 法もあります。まず、腰椎中間位で両腕ます。同側外腹斜筋が硬いために同側の を身体の前で組みます。こうすることで骨盤を後傾させます。 広背筋を緩めて、外腹斜筋の短縮を評価 両肩関節屈曲90° にして左右の小指球 しやすくします(図3)。自動で身体ををくっつけさせることで、肩関節外旋・ 回旋し、回旋側の外腹斜筋を検査します。 前腕回外位とさせます。ここからの自動 右回旋と左回旋時の腰椎・骨盤帯の運動回旋では、特に広背筋の短縮を評価しや
図3>外腹斜筋の筋長検査
キーワード中間位… 屈曲・伸展、内転・外転などをしていない関節の中間的な位置。

上肢帯と上肢のアライメントの評価と修正エクササイズPart2
すくなります(図4)。自動で回旋させ 立ったときには、右骨盤が後傾し、左骨 ることで、反対側の広背筋が検査できま 盤が前傾するという非対称な姿勢になり す。自動運動にて制限が確認されたら、 ます。 他動でさらに回旋を加えます。対側広背 しかし外腹斜筋検査で右回旋が制限さ 筋が硬いと対側の骨盤が前傾します。 れており、広背筋検査では左回旋が制限
例えば、外腹斜筋検査で右回旋が制限 されたとなると、右外腹斜筋と右広背筋 されており、広背筋検査でさらに右回旋が硬いことになります。この場合、立っ が制限されたとなると、右外腹斜筋と左。 たときにはその側の骨盤が反対側よりも 広背筋が硬いことになります。この場合、 高くなります。
4 上肢帯と上肢の機能異常と修正
図4→広背筋の筋長検査
[キーワード前傾・後傾… 正常位よりも前に傾いていることを「前傾」、後ろに傾いていることを「後傾」という。
71

4 上肢帯と上肢の機能異常と修正
広背筋のセルフ・ストレッチング
座って行う方法、立って行う方法など何 セルフ・ストレッチングの
種類かあります。それぞれ30~60秒を3 ポイント
回実施してください。これらの方法は簡 短縮した広背筋のセルフ・ストレッチ 単に見えて難しいものもあります。無理 ングの方法には、四つ這いで行う方法、 せず、少しずつ行ってください。
エクササイズコート 四つ這いで行うセルフ・ストレッチング 1つめは、四つ這いの姿勢で行うストレッチング ないように、また回内しないように注意します。
離れそうになったら、そこまででストレッチしま 両前腕を床につけて、両前腕と小指同士をくっつ す。最初の構えで、両膝と両肘間の距離が広すぎ けて回外位とします。そこから後方へ重心移動してると、後方へ重心移動した際に腰椎が伸展するの て広背筋をストレッチします。両前腕の間が離れで注意が必要です。
です。

上肢帯と上肢のアライメントの評価と修正エクササイズPart.21
このクリス2
エクササイズ
座って行うセルフ・ストレッチング 2つめは、椅子に座って行う方法です。
え、そのまま身体を右回旋させていきます。その 硬い側(イラストでは左側)の肩関節を90°屈曲し、 際に硬い左側の骨盤が前傾方向に動かないように、 さらに水平屈曲し、手の平を上に向けることで肩 腹筋を収縮させて、骨盤を後傾位に保っておきま 関節を外旋させます。もう一方の手で肘の下を支 「しょう。
4 上肢帯と上肢の機能異常と修正

エクササイズ
このウィス3 立位で行うセルフ・ストレッチング
3つめは立位で行う方法です。
旋しないように)、手掌を壁に沿って上に滑らせ 広背筋のストレッチング時の腰椎伸展代償を防ぐ ていきます(モビリティ)。腰部が壁に接するよ ために、踵を壁から10cmほど離して立ち、両肩 うに、腹部には力を入れておいてください(スタ 関節を外旋位にて手掌を壁につけます(日)。こ ビリティ) (2)。慣れるに従い、踵を壁につけ の構えから、両肘が開かないように(肩関節が内て行えるようにします(3)。
腹部に力を 入れる。
10cmほど離す。
慣れたら踵を 壁につける。

上肢帯と上肢のアライメントの評価と修正エクササイズPart2

エクササイズ
立位で前腕をつけたセルフ・ストレッチング 4つめは、立位で両前腕をつけて行う方法です。 両肘が離れないように(肩関節が内旋しないよう 両前腕をつけることで、両肩関節の外旋を増します。 に)両肩関節を屈曲することで、両腕を挙上して そして両肘が離れないように肩関節を屈曲している。 いきます(モビリティ)。慣れるに従い、踵を壁 きます。最初は踵を壁から離して行います(日)。 につけて行えるようにします(2)。
4 上肢帯と上肢の機能異常と修正
腹部に力を 入れる。
踵を壁から 離す。
慣れたら踵を 壁につける。

エクササイズ
両肩関節の外旋を増やしたセルフ・ストレッチング
5つめは、さらに両肩関節の外旋を増やして広背います。タオルが緩まないように(肩関節が内旋 筋のストレッチングを行う方法です。
しないように)、両肩関節を屈曲することで両腕 両手にタオルを持ち、両小指側を離します。腰部 を挙上していきます(モビリティ)。慣れるに従い、 が壁に接するように、腹部には力を入れます(ス 踵を壁につけて行えるようにします(2)。 タビリティ) (日)。最初は踵を壁から離して行
両腕を 上げて いく。
両腕を 上げて いく。
腹部に力を 入れる。
腹部に力を 入れる。
垣を壁から
離す。
慣れたら踵を 壁につける。

上肢帯と上肢のアライメントの評価と修正エクササイズPart2
エクササイズ
腰椎伸展を抑制してのセルフ・ストレッチング 6つめは立位で腰椎伸展が起こりやすい人に対して、 で、広背筋がよく伸びていきます(日)。さらに 床に座って行う方法です。エクササイズ5の方法 両小指を少しずつ離していき、そこからタオルが を床に座って行います。腰部が伸展してこないの。 緩まないように両腕を挙上していきます(2)。
4 上肢帯と上肢の機能異常と修正
両小指を 離す。
両腕を上げて いく。
肘をつけた まま。
両小指を さらに 離す。
両腕を上げて
いく。
肘をつけた
まま。

背臥位で行うセルフ・ストレッチング
かん
7つめは背臥位(仰向け)で行う方法です。 まずは両立て膝にて、腹筋群を収縮させて、腰部 をベッドにつけるようにします(日)。腹筋群を 収縮させたままで、骨盤前傾を防止しながら、一 側肩関節を屈曲し(2)、続いて反対側も屈曲し ます(日)。必要であれば手に重りを持たせるこ
ともあります。 次に足部を下方に滑らせながら、一側ずつ股関節 を伸展させていきます。同時に腹筋の固定性も促 通しています(45)。骨盤が前傾しそうになっ たら、そこで股関節の伸展は止めましょう。
さん

4 上肢帯と上肢の機能異常と修正
上肢帯と上肢のアライメントの評価と修正エクササイズPart2

4上肢帯と上肢の機能異常と修正
だいきょうきんこうはいきん
けんかんせつ
大胸筋と広背筋を抑制した肩関節屈曲改善運動
1上肢を挙上する肩関節筋群のパフォー 肩関節の屈曲改善
マンス向上 指導の目的」
2肩関節屈曲可動域の増加 ここまで大胸筋と広背筋のストレッチ3上肢の過剰内旋防止 ングについて解説してきました。ここかの肩甲骨の動きを増加 らはそれらのストレッチングを行いつつ、 5僧帽筋のパフォーマンス向上 優位に働く大胸筋と広背筋を抑制して肩 6前鋸筋の固定作用と、胸椎の伸展運動 関節の屈曲を指導します。その目的は次 も同時に促通 の6つです。
エクササイズ
側臥位で行う 肩関節屈曲改善運動
1つめは、側臥位で行う方法です。 大きな抱き枕かロールを用いて、上側 の肩関節を外旋し、腹筋群を収縮させ ます。最初は上側の股関節も屈曲位で 行いますが、骨盤後傾が腹筋群で可能 になれば、イラストのように股関節伸 展位で行います。その姿勢から肩関節 の過剰内旋を防止しながら、ロールに 前腕の尺側をつけたまま滑らせて肩関 節を屈曲します。腹筋群は収縮させた ままで、前鋸筋の活動と胸椎の伸展運 動も同時に促通します。

上肢帯と上肢のアライメントの評価と修正エクササイズPart2
エクササイズ
ふくがし
腹臥位で行う 肩関節屈曲改善運動 2つめは腹臥位(うつ伏せ)で行う方法です。 ベッドから上肢を出します。その上肢の肩 関節を外旋し、腹筋群を収縮させます(日)。 その姿勢から肩関節の過剰内旋を防止しな がら、手掌面でベッド横を滑らせながら肩 関節を屈曲していきます。腹筋群は収縮し たままです(2)。翼状肩甲が生じないよう に前鋸筋の活動を促通し、同時に胸椎伸展 運動も促通します。 肩関節屈曲に合わせて肘が外に開く場合は、 肩関節が内旋していることを示します。肘 が外に開かないように注意することが大切 です。
4 上肢帯と上肢の機能異常と修正
肘が外に開か ないように。

エクササイズ
パピーポジションで行う肩関節屈曲改善運動 3つめは両肘で支えたパピーポジションからの方法です。 最初は体幹の下に枕をおいて行います。慣れてくるに従い 枕は外していきます。または腹筋群を収縮させます(日)。 さらに前鋸筋を収縮させて、翼状肩甲を防ぎます(2)。 そして腹筋群を収縮させたまま肩関節の過剰内旋を防止し つつ、前腕を滑らせながら肩関節を屈曲します。腹筋群の 収縮に加え、前鋸筋活動と胸椎の伸展運動も同時に促通し ます(3)。このとき肘が外に開かないように注意します。 ベッドと前腕との滑りが悪ければ、その間にバスタオルを 置いたり、あるいは一側ずつを少しずつ前方にずらすよう にします。
肘が外に開かないように。

上肢帯と上肢のアライメントの評価と修正エクササイズPart 2
(エクササイズ4
エクササイズ
壁に向かって立位で行う 肩関節屈曲改善運動
4 上肢帯と上肢の機能異常と修正
4つめは壁に向かった立位で行う 方法です。 大胸筋が肩甲下筋よりも優位な場 合、肩関節は上腕骨頭が前方変位 した内旋位をとります。上肢帯は
そういうきんじょう 下制し、胸椎は屈曲し、僧帽筋上 部線維にも負担が生じます。 この状態で肩関節を屈曲しても、
だいすっっけん2 過剰内旋によって大結節が肩峰と
じょうわんこっ 衝突してしまい、肩甲骨と上腕骨 とのインピンジメント(衝突)を 生じます。そこで肩を外旋(正常 な位置)させた状態で、前腕の尺 側を壁につけ、壁沿いに前腕を滑 らせながら肩関節を屈曲すること で、大胸筋と広背筋の活動を抑制 します。 菱形筋の代償も防ぐように注意し ます。菱形筋が優位に働くと前鋸 筋が負けてしまい、翼状肩甲が出 るからです。よって前鋸筋を意識 して行います。 最初はAのように腹部に枕を入 れて腰椎伸展を防ぎながら行いま す。次の段階としては、Bのよ うに枕を外し、腹筋群を収縮させ て、腰椎の伸展を防ぎながら行い ます。
りょうけいきん

エクササイズ5
壁を背にした立位で行う肩関節屈曲改善運動 5つめは壁を背にした立位で行う方法です。 縮させて腰椎の伸展を防ぎながら、両腕を頭上に 壁に背中をつけて、両腫は壁から約7cm離します。 上げていきます。上げるに従い、両肘関節も伸展 まずはAのように両肘関節を90°屈曲して、前腕 させていきます。肩関節の内旋を防ぐように注意 の尺側が前方を向くように構えます。腹筋群を収 してください。

上肢帯と上肢のアライメントの評価と修正エクササイズ Part2
次にBのように両肘は伸展した位置から始めます。 両腕を頭上に上げていきますが、テコが長い分だ けAよりも難しくなります。腹筋群は収縮させ たままで、肩関節の内旋は防いでください。
4 上肢帯と上肢の機能異常と修正

じょうしたい
4上肢帯と上肢の機能異常と修正
だいきょうきんでた
けんかんせつ
大胸筋と広背筋を抑制した肩関節外転改善運動
ください。 肩関節の外転改善
なお、この運動の目的は次の5つです。 指導の目的
1肩関節の可動域増加 前出の大胸筋と広背筋のストレッチン 2肩甲骨から上肢までの筋パフォーマン グは行いつつ、ここでは優位に働く大胸 ス向上 筋と広背筋を抑制して肩関節の外転を指 3大胸筋のストレッチング 導します。肩関節屈曲改善運動と同様、 肩関節内旋.筋群のストレッチング できるものから無理せず少しずつ行って5僧帽筋のパフォーマンス向上
エクササイズ
背臥位で行う両肩関節外転改善運動
1つめは背臥位で行う方法です。 背臥位になり、肩関節外転90°の位置で最大外旋 させます。その位置で腹筋群を収縮させたまま、
ベッドに沿って肩関節外旋を維持して外転を続け ていきます。どうしても腰椎が伸展(前弯)する 場合は立て膝で実施してください。

上肢帯と上肢のアライメントの評価と修正エクササイズ Part2
エクササイズ
壁を背にした立位で行う
肩関節外改善運動 2つめは壁を背にした立位で 行う方法です。 壁に背中をつけて、両運は壁 から約7cm 離します。前腕 を壁に沿って滑らせ、両腕が 頭上に行くにつれて、両肘関 節も伸展させます。腹筋群は 収縮させたままで、腰椎伸展 を防ぎながら行います。肩関 節が内旋しないように注意し てください。
4 上肢帯と上肢の機能異常と修正
エクササイズ
壁に向かった立位で行う両肩関節外転改善運動 3つめは壁に向かった立位で行う方法です。 らせて肩関節を外転していきます。このとき肩を 日のように壁に向かって立ち、手の小指側を壁 すくめたり、内旋しないように注意してください。 につけます。このとき肩関節は外旋位です。そこ さらに3のように肩甲骨を下制・内転・後傾さ からのように腹筋群を収縮させて腰椎の伸展せながら、壁から両手を離していきます。 を防ぎながら、壁に沿って上外側方向に前腕を滑
壁から両手を離していく。

4上肢帯と上肢の機能異常と修正
んこう
延長・弱化した肩甲下筋の筋力強化
大胸筋が優位で硬くなり、 肩甲下筋が延長位で弱い
図1●肩甲下筋
大胸筋が優位で硬くなり、肩甲下筋(図 1) が延長位で弱くなると、骨頭は前方 に変異して内旋方向に引かれることにな ります。屈曲・外転・外旋の運動制限も 出てきます。
骨頭が肩甲骨関節窩中心でしっかり動 くためにも、肩甲下筋の筋力強化(再教 育)が必要になります。
けんこうこつかんせつ
エクササイズ
じょうわんこつとう.いりすくっている
肩甲下筋の筋力強化(再教育) まず肩甲骨面(Scapula plane:肩甲骨が前額面 から35° 開いているので、その肩甲骨の延長)(図 2) 上で肩関節を外転30° にします。前腕をベッ ドに押しつけるように上腕骨頭を背尾側に引き込 ませます。最初は、セラピストの右手で軽く骨頭 を腹頭側に押すことで、患者はその抵抗に対して 骨頭を背尾側に引き込むようにします。セラピス トの左手は、骨頭を引き込む方向を介助します。 徐々に抵抗を与えないでも、背尾側に引き込める
ようにします(日)。 できるようになるに従い、内旋運動による求心性 収縮(筋の起始停止の距離が縮まりながら筋力を 発揮) (2)、外旋運動による遠心性収縮(筋の起 始停止の距離が広まりながらも筋力を発揮)(3) を5~10回繰り返させます。これを数セット反復 します。 これができてきたなら、肩の外転角度を45°、 60、75、90°と変えながら同様に行います。
図2 肩甲骨面
肩甲骨面で
35°
冷ダダ

上肢帯と上肢のアライメントの評価と修正エクササイズPart2
4 上肢帯と上肢の機能異常と修正
骨頭を引き込む 方向を介助する。
肩関節を外転30° にした 状態で、セラピストの抵 抗に対して骨頭を背尾側 に引き込む。
右手で軽く骨頭 を腹頭側に押し て抵抗を与える。
内旋運動による求心性収 縮を行う。
外旋運動による遠心性収 縮を行う。

4上肢帯と上肢の機能異常と修正。
いえんき
優位で短縮した大円筋の修正
優位で短縮した大円筋による 機能障害
図1→大円筋
大円筋(図1)が優位で短縮すると、 肩甲上腕リズムにおいて、肩甲骨が早く 動き出してしまいます。この結果、最終 域での関節可動域制限も生じます。
SHIEVE
図2>大円筋の筋長検査
|大円筋の筋長検査
大円筋の筋長検査は立て膝の背臥位で 行います(図2)。Aで肩甲骨の下角が 胸郭より外側へ約1cm以上突出してい る場合は、短縮が考えられます。Bの ように肩甲骨の下角が外側に突出しない ように位置を修正したときに、肩の屈曲 角度が減少した場合、肩甲上腕関節の筋 群が短縮していることが示唆されます。 Gのように肩関節を内旋させたときに 肩関節屈曲の可動域が増加する場合は、 大円筋の短縮を示唆します。
んこうじょうひんかんさん

上肢帯と上肢のアライメントの評価と修正エクササイズPart2
エクササイズ
がいそくえん
大円筋のセルフ・ストレッチング 大円筋のセルフ・ストレッチングは、立て膝の背 臥位で行います。 肘は屈曲90°とし、腹筋群を収縮させます。続い て一側肩関節を屈曲していきますが、肩甲骨下角 が過剰に動かないように注意します。肩甲骨下角
が過剰に動く場合は、他側の手で肩甲骨下角から 外側縁を固定します。その状態で肩甲骨下角の過 剰な動きを抑制しながら、肩関節を屈曲していき ます。 30~60秒を3回実施してください。
4 上肢帯と上肢の機能異常と修正
肘を屈曲90°
一側の肩関節を 屈曲していく。
肩甲骨下角が過剰に動く場合は もう一方の手で肩甲骨下角から 外側縁を固定。

じょうしたい。
じょうし。
4上肢帯と上肢の機能異常と修正
しょうきょうき
優位で短縮した小胸筋の修正
■優位で短縮した小胸筋による 機能障害
図1●小胸筋
小胸筋(図1)が優位で短縮すると肩 甲骨が前傾してねこ背となり、肩甲骨の 後傾と上方回旋が難しくなります。肩甲 骨の上方回旋が制限された上で腹筋が短 縮したり硬くなっている場合、この小胸 筋による運動制限はさらに増悪し、胸郭 の挙上も制限されてしまいます。
きょうせん
小胸筋の筋長検査
小胸筋の筋長検査は立て膝の背臥位で 行います(図2)。肩甲骨烏口突起には、 上腕二頭筋燈頭、烏口腕筋、小胸筋が付 着します。鎖骨外側1/3前線には、角 骨前傾の原因が上腕二頭筋であれば、肩 筋鎖骨部(前部)線維が付着します。短 甲骨を正しい位置に固定した状態で肘関 縮の原因が小胸筋かどうかは、他の筋の 節を他動的に屈曲すると、肩の伸展が可 影響がないことを確認して省くことから能になります。 始まります。
Dで肩を軽度内転・内旋して肩甲骨 Aでは右の烏口突起が左に比べて腹 の前傾が減少すれば、烏口腕筋が考えら 側にあります。肩甲棘外側縁が2.5cm れます。 以上ベッドから離れており、どれかの筋 また、日で肩を軽度屈曲して肩甲骨 の短縮が示唆されます。
の前傾が減少すれば、三角筋鎖骨部線維 Bで肘を他動的に屈曲して肩甲骨の が考えられます。 前傾が減少すれば、上腕二頭筋短頭が考 しかしこれらがすべて当てはまらなか えられます。
った場合は、小胸筋が原因と考えられます。 Gで上腕二頭筋が短縮していれば、 他動的に肩甲骨のアライメントを修正す ると肘関節が屈曲してきます。また肩甲
けんこうきょくだいちくん

上肢帯と上肢のアライメントの評価と修正エクササイズPart2]
図2 小胸筋の筋長検査
4 上肢帯と上肢の機能異常と修正
肘関節を他動的に屈曲した とき肩甲骨の前傾が減少 →上腕二頭筋短頭の短縮が 考えられる。
右の烏口突起が左に比べて 腹側にある。
肩甲棘外側縁が2.5cm以上 ベットから離れている。
左右の肩甲骨烏口突起に 触れて位置を確かめる。
上腕二頭筋が短縮してい ると、他動的に肩関節の アライメントを修正する と肘関節が屈曲してくる。
D
肩関節の軽度内転・内旋 で肩甲骨の前傾が減少 →烏口腕筋の短縮が考え られる。
肩関節の軽度屈曲で肩甲 骨の前傾が減少
三角筋鎖骨部線維の短 縮が考えられる。

エクササイズ
エクササイスト
背臥位での小胸筋のセルフ・ストI 1つめは背臥位の方法です。 まずは自らが烏口突起をベッド方向に押してスト レッチします。そして烏口突起をベッド方向に押
し、肩甲骨を床に固定した状態で反対側へ寝返る ことで、小胸筋をストレッチします。寝返る際に、 腰椎が過剰に回旋しないように注意してください。
烏口突起をベット方向に押す。
肩甲骨を床に固定した 状態で反対側に寝返る。

上肢帯と上肢のアライメントの評価と修正エクササイズ Part 2
エクササイズ2
エクササイズ
図3 菱形筋
椅子座位での小胸筋の セルフ・ストレッチング 2つめは椅子座位での方法です。 立位あるいは椅子座位での肩甲骨後傾の 運動で、小胸筋がストレッチされずに菱 形筋(図3) が収縮すると、肩甲骨の内 転と下方回旋が増強する可能性がありま す。それを防ぐためにも、肩甲骨面上で 90°外転、肘屈曲位にて、肩甲骨を外転 位にしてから後傾を指導するようにしま す。必要に応じて腹筋群を収縮させてお くといいでしょう。 これらは、30~60秒を3回実施してくだ さい。
4 上肢帯と上肢の機能異常と修正
小菱形筋
大菱形筋
肩甲骨を後傾させる。 肩関節外転位で
肩甲骨面上で肩関 節90°外転、肘関 節を屈曲位に。
腹筋群を 収縮。

じょうした
4上肢帯と上肢の機能異常と修正
僧帽筋下部線維の段階的筋力強化
160° までは肩甲骨は上方回旋とわずか ■僧帽筋下部線維強化の目的
な挙上・外転の動きが生じますが、屈曲 さてここまで順を追って硬くて短縮し 160°以降は肩甲骨はわずかに下制・内 た筋の修正エクササイズ、およびそれら 転・後傾します。 を抑制しての動きの再教育の方法を説明 この下制・内転・後傾には、僧帽筋下部 してきました。ここではさらに僧帽筋下 線維の働きが重要となります。その動き 部線維(図1)の段階的筋力強化エクサ を妨げている僧帽筋上部線維・肩甲挙筋・ サイズを説明します。
小胸筋などはストレッチしておく必要が P44「正常な肩関節の動き」の肩関節 あります。 の屈曲(前方挙上)で示した通り、屈曲
図1僧帽筋
僧帽筋上部線維
僧帽筋中部線維
僧帽筋下部線維

上肢帯と上肢のアライメントの評価と修正エクササイズPart2
この筋力強化エクササイズの目的は次3肩甲骨から上肢までの筋パフォーマン の5つです。
スの向上 1僧帽筋下部線維の選択的筋力増強 の背筋群のパフォーマンス向上 2肩関節の可動域増加
(5胸椎後弯改善
4 上肢帯と上肢の機能異常と修正
(エクササイズ
エクササイズ
僧帽筋下部線維(両側)の段階的筋力強化エクササイズ 1つめは、腹臥位で両側を同時に行う方法です。 内転して、両肘を持ち上げます。肩関節の外旋可 まず、胸部の下に枕やバスタオルを置きます。腹 動域を増したい場合は、手を肘より高く上げるよ 部には置かないように注意してください。
うにします。 Aでは両手を頭の後ろで組んで、両肩甲骨を内 「では両ひじを伸展して、両手を頭部よりも上 転して、両肘をベッドまたは床から持ち上げます。 に置き、両上肢を少し外側に開き、両母指を天井 Bでは両手を頭部よりも上に置き、両母指を天に向けます。両肩甲骨を内転して両肘を持ち上げ 井に向けておきます。その位置から、両肩甲骨をます。手は時より高く上げてください。

エクササイズ
僧帽筋下部線維(一側)の段階的筋力強化エクササイズ 2つめはベッドから片腕を降ろしてから行う方法 縮させたままで、肩関節を屈曲していきます。後
半では胸椎の伸展も伴いながら行っていきましょ 一側の上肢をベッドから垂らします。腹筋群を収
です。
エクササイズ
ます。
僧帽筋下部線維に対する抵抗運動 3つめは最終域での僧帽筋下部線維に対する抵抗 運動にて軽い抵抗にて下制・内転を誘導していき 運動です。 僧帽筋下部線維の下制・内転を促通するため、肩 抵抗は運動を止めるほどの力ではなく、下制・内 甲骨の下角に対して挙上・外転方向に軽い徒手抵 転を誘導するくらい軽いものです。必要に応じて 抗を加えます。最初はセラピストが患者の上肢を重りを持たせることもあります。 保持して介助します。できるようになれば、自動
下角

上肢帯と上肢のアライメントの評価と修正エクササイズ Part 2
エクササイズ4 エクササイズ 立位での僧帽筋下部線維(両側)の段階的筋力強化エクササイズ 4つめは立位で行う方法です。
離していきます。最初に上肢の重さを壁で支えて 肩関節の屈曲あるいは外転の最終域では、正常でいることで、僧帽筋上部線維の過活動を抑制して は肩甲骨はわずかに下制・後傾・内転します。僧 から行います。 帽筋上部線維が硬くて優位に活動している場合は、Bは、大胸筋も広背筋も硬い場合で、肩関節を 僧帽筋下部線維は延長位になり筋力は低下します。外旋位にして手背を壁につけた位置から実施して そこで最終域にて僧帽筋下部線維を収縮させて肩。 いきます。いずれも腰椎が伸展する場合は腹部に 甲骨の下制・内転活動を高めることで、僧帽筋上 枕を入れましょう。できるようになれば、イラス 部線維とのインバランスを改善していきます。 トのように枕を外して、腹筋を収縮させることで、 Aでは壁に向かって立ち、屈曲160°程度で手を 腰椎の伸展を防ぎましょう。 壁につけ、そこから最終屈曲しながら壁から手を
4 上肢帯と上肢の機能異常と修正

4上肢帯と上肢の機能異常と修正
優位で短縮した 肩関節外旋筋群の改善
けんかんせつがいせんきんぐ」
い場所です。 肩関節の
インナー・マッスルを取り囲むように インナー・マッスルの役割
位置するのが、アウターマッスル ここからは肩甲上腕関節の安定化メカ (outer muscles)です。関節の運動を ニズムの中心的な役割を果たす、肩関節 止めるべく種々の筋が働く同時収縮時は のインナー・マッスル (inner muscles) 別として、肩甲骨の関節窩上に上腕骨頭 (図1)について解説します。
が維持されているときに、アウター・マ 肩関節のインナー・マッスルは、棘上ッスルが関節運動でのスピードやパワー 筋・棘下筋・小円筋・肩甲下筋の4筋かの発揮に主として関与すると考えられて らなり、これらは回旋筋腱板(ローテー います。例えば、棘上筋のアウター・マ ターカフ=rotator cuff)(図2)とも ッスルは三角筋肩峰部(中部)線維で、 呼ばれます。これら4筋のすき間の部分 肩甲下筋のアウター・マッスルは大胸筋 である、ローテーター・インターバル になります(図3)。 (rotator interval) は障害を受けやす
はくじょう
図1 肩関節のインナー・マッスル
肩峰
烏口肩峰靭帯 (第2肩関節) 烏口突起 烏口上腕靭帯
肩峰下包
きょくじょうきんけん。
棘上筋腱
ローテーター・インターバル (rotator interval) 烏口下包
きょくかきんけん
棘下筋
上院二頭的長頭壁 上関節上腕? Weitbrecht 71
しょうえんきんけん
小円筋腱
?節窩
中間節上腕? 下関節上腕勒? けんこうかさんけん 肩甲下筋躍
関節唇
(「最新運動療法大全」p484を参考に作成)
100キーワードインナー・マッスル・・・身体の深い部分にある筋。深部筋ともいう。

上肢帯と上肢のアライメントの評価と修正エクササイズPart7
図2>回旋筋腱板(ローテーター・カフ)
4 上肢帯と上肢の機能異常と修正
棘上筋
棘下筋
小円筋
肩甲下筋
図3 インナー・マッスルとアウター・マッスルの例
肩甲骨の関節窩上に骨頭が維持されているときに、アウター・マッスルが関節運動のスピードやパワー の発揮に主として関与すると考えられている。
三角筋肩峰部 アウター・マッスル
棘上筋 インナー・マッスル
肩甲下筋 インナー・マッスル
大胸筋 アウター・マッスル
例1
例2
棘上筋のアウター・マッスル は三角筋肩峰部(中部)線維
肩甲下筋のアウター・マッスル は大胸筋
(『投球障害肩こう診てこう治せjp35を参考に作成)
[キーワードアウター・マッスル・インナー・マッスルを取り囲むように位置する筋。
101

棘下筋と小円筋のアウター・マッスル 2.5cmあまり離すことができます。こ は、三角筋肩甲棘部(後部)線維です。 のことが肩関節の大きなさまざまな方向 この三角筋肩甲棘部線維に変わって菱形 への動きの自由度に貢献しています。 筋が働くと、筋のバランスが崩れて前鋸
関節包周囲の筋群 筋も延長位になって筋力低下を来します。 もちろん棘下筋と小円筋も筋力低下を来 肩関節の後面は靭帯の補強がありませ すことになるのです。
んが、前面は上・内側・下関節上腕靭帯
で、上方は烏口上腕靭帯によって補強さ 肩関節の関節包の補強
れています(→P40図2)。 にも働く
一関節の上方は棘上筋、下方は上腕三頭 この回旋筋腱板(ローテーター・カフ) 筋長頭、背側は棘下筋と小円筋の腱、腹 は、肩関節の関節包(図4)の補強にも 側は肩甲下筋腱で補強されています。 働きます。肩関節の関節包は、関節を完両上肢下垂位では、関節包の下方は筋 全に包み、肩甲骨の関節窩の周囲と、関 肉で補強されず、たるんで腋窩陥凹を作 節包の広がりの末端よりも上の関節軟骨ります。もしも長期に腕を動かさないと、 にずっと近い上腕骨の解剖頸につきます。 腋窩陥凹が萎縮、あるいは癒着すること 関節包は上部と下部が厚いのですが、は になります。 なはだ疎で緩いので、関節包には骨をつ 肩関節が屈曲する際には、上腕骨頭は なぐ役割はなく、肩甲骨と上腕骨は肩甲骨関節窩のなかを背尾側に滑る、凸
はいびそく
けんさじんたいうこうとっき
2こうさこつじんたい 肩鎖朝常為口突起為口鎖骨勒?
図4→肩関節の関節包
上肩甲靭帯
2こうけんぼうじんたい 烏口肩峰靭帯
鳥口腕筋包
しょうわんおうじん
上腕横靭帯
けっせつなんかつきましょう 結節間滑液鞘
上腕二頭筋長頭の鍵
えきかかんおう
腋窩陥凹
肩甲下筋の誕急
(『プロメテウス解剖学アトラス 解剖学総論 運動器系 第2版)p261を参考に作成)
107キーワード関節包・関節を包んでいる袋状の組織。内側に滑膜という膜があり、そこから滑液(関節液)が分泌される。

上肢帯と上肢のアライメントの評価と修正エクササイズPart2
の法則で動きます(図5A)。しかし後 正常では肩甲骨の前傾や上腕骨頭前方滑 方関節包が硬化していると、関節包をジりをほとんど伴わずに、70° 内旋(手関 ャバラ様に押し広げることができず、上 節掌屈すると手指が治療台に届く)でき 腕骨頭が上方に押し上げられることになます。 ります(図5B)。この際に棘下筋と小Aでは、大きな内旋可動域が得られ 円筋も短縮していることが考えられます。 ているように見えますが、実際には肩甲
骨の前傾という代償を生じています。 肩関節外旋筋群の筋長検査
Bのように肩甲骨の前傾を防ぐと、 肩関節の外旋筋群の筋長検査は、背臥外旋筋群の短縮が明白になります。 位で膝を立てた姿勢で行います(図6)。
一上肢帯と上肢の機能異常と修正
図5 後方関節包の 硬化の影響
関節包が硬化するとジャバラ様に押 し広げられないため、上腕骨骨頭が 上部に押し上げられる。
衝突
関節窩)
上腕骨頭
肩関節屈曲時、関節包 がジャバラ様に押し広 げられ、上腕骨頭は肩 甲骨関節窩のなかを背 尾側に滑る。
関節商
関節包
(「運動機能障害症候群のマネジメント」p214を参考に作成)
図6>肩関節外旋筋群の筋長検査
大きな内旋可動域が得 られているように見え るが、肩甲骨の前傾が 生じている。
肩甲骨の前傾を防ぐと、 前腕が浮き上がり、外 旋してくる。
キーワード関節軟骨・関節面を覆っている強靭で弾力性のある組織。

こうほうかんせつほう
させていきますが、正常では腕が床と平 後方関節包の硬さの確認
行くらいまで下がります。しかし、そこ 棘下筋・小円筋の停止の硬さに加えて まで行かない場合は、水平屈曲が硬いこ 後方関節包も硬いと、肩関節の水平屈曲 とになります (3)。制限のある水平 も制限してしまいます。
屈曲の最終域近くで抵抗が急に増して動 その検査方法は次の通りです(図7)。 きが止まるようなら、この動きの最終域 側臥位を開始肢位として (1)、肩関 感(エンド・フィール=end feel) はフ 節を90°外転した位置で、肩甲骨を固定 ァーム (Firm)、すなわち関節包の硬さ して止めます (2)。そこから水平屈曲。 が疑われます。
図7水平屈曲の筋長検査
側臥位で開始。
肩関節を90°外転。 肩甲骨を固定。
肩関節が床と平行に なるまで水平屈曲で きないときは、後方 関節包の硬さが疑わ れる。
1104キーワード最終域感(end feel)….運動の最初の停止から最終の停止までの他動的なわずかな可動域に感じられる抵抗感。

上肢帯と上肢のアライメントの評価と修正エクササイズPart21
じょうしたい
「じょうし。
4上肢帯と上肢の機能異常と修正
けんかんせつがいせんきんくん
優位で短縮した肩関節外旋筋群の修正
4 上肢帯と上肢の機能異常と修正
エクササイズのポイント 優位で短縮した肩関節外旋筋群の修正 エクササイズでは、まず関節包の硬さが 疑われる場合は、上腕骨頭背外側滑りの
関節包ストレッチングから行います。次 に関節包と大円筋のマッサージ、棘下筋 のストレッチング、小円筋のストレッチ ング、スリーパー・ストレッチング、ク ロスボディ・ストレッチングと進めます。
エクササイズ
じょうわんこっとうはいがいそ
上腕骨頭背外側滑りの関節包ストレッチング 関節包の硬さが疑われる場合の試験的治療として、 て水平屈曲が改善しており、背臥位での内旋可動 上腕骨頭背外側滑りの関節包ストレッチング、 域が改善していたなら、関節包の影響が大きかっ 10秒間を3セット行います。ここで再評価を行っ たことになります。

エクササイズ
関節包と大円筋の横断マッサージ 次は関節包と大円筋の横断マッサージです。 側臥位となり、抱き枕を抱えさせます。肩関節を 屈曲していくと、上腕骨頭が挙上してしまう位置 から機能障害は始まっています。 上腕骨頭が挙上する位置のやや手前で、後方関節 包のジャバラを伸ばすように横断マッサージを行
います(A)。 さらに大円筋付着部の横断マッサージも行います (B)。 これらは五十肩(肩関節周囲炎)の方にも有効で
けんかんせつしゅういえん。
す。

上肢帯と上肢のアライメントの評価と修正エクササイズPart 21
エクササイズ
このリサイス3 棘下筋のセルフ・ストレッチング
次にストレッチングです。まず、立位で壁の横で 行う棘下筋のセルフ・ストレッチングです。 肩関節を最大屈曲させ、右上腕と肩甲骨外側を壁
にしっかりつけます。この位置から上腕骨を内旋 方向に動かします。 30~60秒を3回実施してください。
4 上肢帯と上肢の機能異常と修正
エクササイズ
小円筋のセルフ・ストレッチング 次に小円筋のセルフ・ストレッチングです。 小円筋の場合は回旋方向が逆になります。小円筋 は外旋筋ですが、最終屈曲可動域では習慣的機能 の逆転が生じ、肩関節の内旋作用に変わります。
このため外旋方向に動かすことで、小円筋のスト レッチングができます。すなわち棘下筋と小円筋 を分けてストレッチすることが可能となるのです。 30~60秒を3回実施してください。
107

O LISTTIMER タイマー終了
エクササイズ
棘下筋と小円筋のスリーパー・ストレッチング 次は特殊なストレッチングで、側臥位になって行。 肩甲骨の上に身体を乗せ、肩甲骨を固定します。 う、スリーパー・ストレッチング (Sleeper この位置から前腕回内のままで肩関節を内旋させ stretching) です。
ます。これによって棘下筋と小円筋がストレッチ 肩関節90°屈曲、肘関節90° 屈曲とします。右のされます。
ちゅうかんせつ
側臥位で肩甲 骨の上に身体 を乗せて肩甲 骨を固定。
前腕を回内のままで肩関節を内旋させる。
エクササイズ
棘下筋と小円筋のクロスボディ・ストレッチング 次に、立位で壁に肩甲骨を固定して行う、クロス・ ボディ・ストレッチング(Cross-body stretching) です。 肩関節90°屈曲、中等度内旋、肘関節90°屈曲と します。右の肩甲骨を壁で固定し、この位置から 肩関節を水平屈曲させます。壁に触れているのは 肩甲骨だけで、上腕骨が触れないように注意して ください。これによって棘下筋と小円筋に加えて、 肩関節後方関節包がストレッチされます。 30~60秒を3回実施してください。
右の肩関節を壁に固定。 上腕骨は壁に触れない ように。

O LISTTIMER タイマー終了
上肢帯と上肢のアライメントの評価と修正エクササイズPart27
14上肢帯と上肢の機能異常と修正
んかんせつないせー
優位で短縮した肩関節内旋筋の修正
4 上肢帯と上肢の機能異常と修正
■肩甲下筋の短縮で外旋制限
壊れた骨などを固定して脱臼を修復する
手術「鏡視下バンカート法」を行った後 あまり多くはないのですが、肩甲下筋などに生じることがあります。 が短縮することで外旋の動きが制限され 肩関節45° 外転位での制限は肩甲下筋 ることがあります。例えば、肩を使うス の影響が大きく、肩関節90°外転位での ポーツ選手(野球、テニス、バレーボー 制限は関節包や靱帯の影響が大きいとい ル、水泳など)の肩甲骨関節窩に、アンわれています。 カー(糸つきビス)を打ち込んで靭帯や
エクササイズ 肩甲下筋のセルフ・ストレッチング
肩甲下筋が短縮することで外旋制限が生じる場合 壁やドアに手をつけます。この位置から身体全体 は、肩甲下筋のセルフ・ストレッチングが必要と を足といっしょに回転させることで、肩関節を外 なります。
旋していきます。 立位で、肘を体側につけて、90°屈曲した状態で30~60秒を3回実施してください。
身体全体を回 転させて肩関 節を外旋。
肘を体側につけ、 肘関節90°屈曲。 壁やドアをつかむ。

4上肢帯と上肢の機能異常と修正
けんかんせっかいせんうんど
肩関節回旋運動の修正
| 回旋運動修正の目的」
ここまで肩関節外旋筋と内旋筋修正に ついて説明をしてきました。次に、外旋 筋と内旋筋のバランスが整うのにつれ、 両方向への運動の修正を行っていきます。
この修正の目的は次の4つです。 1肩関節の回旋可動域増加 2上肢を動かす間の肩甲骨代償運動の防止 3上肢を動かす間の上腕骨頭代償運動の 防止 肩関節回旋筋群のパフォーマンス向上
エクササイズ
背臥位での肩関節回旋運動修正の セルフ・ストレッチング 1つめは、背臥位で行うストレッチン グです。 まず反対側の手で肩甲骨を固定します。 必要に応じて上腕と肘の下にタオルを 入れます。特に菱形筋などの代償があ る場合は、タオルを入れて上腕を肩甲 骨面上に揃えます。 外旋筋群をストレッチングする場合は、 肩関節を内旋させていきます(A)。 肩甲骨が前傾しないように注意してく ださい。 内旋筋群をストレッチングする場合は、 肩関節を外旋させていきます(B)。 このときは腰部が伸展して前弯しない ように、腹筋群を収縮させておきます。 これらの運動は、必要であれば、手に 重りを持たせて行います。

上肢帯と上肢のアライメントの評価と修正エクササイズPart2
エクササイズ
腹臥位での肩関節回旋運動修正のエクササイズ 2つめは腹臥位で行う方法です。
てください。 まずタオルを腕の下に置き、上腕を肩関節の高さ 次に上腕を軸に、外旋筋のパフォーマンス向上を に調整します。しかし菱形筋などの代償が入る場 行います(B)。内旋筋の拮抗筋の強化につなが 合は、タオルを入れず、上腕を肩甲骨面上に揃え ります。上腕をタオルから持ち上げないように注 ます。肘は屈曲して、前腕を下垂させます。
意してください。また腹筋群を収縮させて、腰椎 上腕を軸に、内旋筋のパフォーマンス向上を行いの伸展を防いでください。 ます(A)。外旋筋の拮抗筋の強化につながりま これらの運動は必要であれば、手に重りを持たせ す。上腕をタオルから持ち上げないように注意し て行います。
4 上肢帯と上肢の機能異常と修正

4上肢帯と上肢の機能異常と修正
しんかんせつほう
肩関節包の他動的ストレッチング
|ストレッチングの進め方
ングする方法を4つ紹介します。症状に 応じて適した方法を選択してください。
次に肩の関節包を他動的にストレッチ
エクササイズ
かんせつほうこうだいは、
関節包後外方のストレッチング 1つめは関節包後外方のストレッチ ングです。 肩関節に外側への牽引をベルトで加 えてからの、上腕骨頭背側滑りです。 肩甲骨面を保持するため、肩甲骨下 にウェッジあるいは重錘を置きます。 肩関節の水平屈曲または屈曲の改善 に効果的です。
エクササイズ
かんせつほうかは
関節包下方のストレッチング
2つめは関節包下方のストレッチン グです。 上腕骨を制限域まで外旋・屈曲して 固定します。その位置から他動的に 肩甲骨外側縁(下角)を内転方向に 押し込むことで、関節包下方のスト レッチングを行います。肩関節屈曲、 外転または外旋の改善に効果的です。

上肢帯と上肢のアライメントの評価と修正エクササイズ Part22
エクササイズ
エクササイズ3」
関節包後方と 前方のストレッチング 3つめは関節包後方と前方のス トレッチングです。 上腕骨を制限域まで外旋・屈曲 して固定します。上腕の背側の 大結節までをウェッジあるいは 重錘をあてることで、上腕を固 定します。そして肩甲骨を、烏 ロ突起を介して背側に押します。 肩関節屈曲、外転、外旋または 内旋の改善に効果的です。
4 上肢帯と上肢の機能異常と修正
だいけっせ
エクササイズ
図1> ゼロポジション
関節包全体のストレッチング 4つめは関節包全体のストレッチングです。 肩関節をゼロポジション(図1)、すなわち 130~150°程度の屈曲・外転位とします。その位 置で肩甲骨が挙上しないように、セラピストの左 手で固定します。そしてセラピストの右手で上腕 骨を頭側に引くことで、関節包全体をストレッチ ングします。肩関節屈曲、外転、外旋または内旋 の改善に効果的です。
棘上筋
#NAME?
棘下筋

エクササイズ
じょうわんさんとうきんちょうと
じょうわんさんとうきんちょう
上腕三頭筋長頭のセルフ・ストレッチング もしも関節包下方にある上腕三頭筋長頭が短縮し その位置からタオルを下に引くことで、右肘を屈 ている場合は、この筋のセルフ・ストレッチング 曲方向に動かし、上腕三頭筋長頭をストレッチし を実施します。
ます (2)。右肘が頭から離れたり、腰が伸展し 椅子座位で身体の後ろでタオルを持ちます。右肩 て反ってしまうことのないように注意しましょう。 を最大屈曲していき、頭の横につけます(日)。 30~60秒を3回実施してください。
11 身体の後ろでタオルを持ち、右肩
を最大屈曲して頭の横につける。
2 タオルを下に引いて上腕三頭筋長頭
をストレッチする。

上肢帯と上肢のアライメントの評価と修正エクササイズPart71
じょう
したい。
じょう
4上肢帯と上肢の機能異常と修正
かいせんきんけんばんきょう
カフ・エクササイズ(回旋筋腱板強化)
4 上肢帯と上肢の機能異常と修正
BAND
| セラバンドの軽い抵抗で行う
カフ・エクササイズとは、棘上筋・ ?筋・六角筋・肩甲下筋の回旋筋腱板 (ローテーター・カフ=rotator cuff)の 筋力強化エクササイズです。
これらの筋は元々大きな筋力を有する 筋ではないので、抵抗は軽めに行います。 抵抗運動で用いるのは、セラバンド。 なっています(表1)。 (Thera-Band”)というゴム様の伸縮性 ・カフ・エクササイズではセラバンドを のあるバンドです。1mのセラバンドを 50%程度まで伸ばすので、そのときの 何%伸ばしたときに、引っ張り戻そう 負荷量は0.8kgの黄色、または1.2kgの とする張力がセラバンドの色に応じて異 赤色で十分です。
表1>セラバンドの張力
(単位:kg)
伸張率

25% 1 50%
黄 0.5
0.8 11月 1.3
75%
100%
3.2
4.4
9.8
2.3 2.6
125%
赤 緑
銀金 0.7 0.93 1.33 1.63 2.3 3.6 1.2 1.4 2.11 2.9 3.93 6.3 1.5| 19 | 2.71 3.7|| 5| 8.2 1.8
15
11.2 11 3 4.1
7.8 12.5 3.3 4.6 6.1 8.6 13.8 2.7 3.6 15
15.2 2.9 14355374) 105
16.6 3.2 4.4 6.13 8 11.5 18.2
1.5
3.7)
6.9
150%
1.8
2 2.2 2.5
5.6
175%
2.2
6.7
9.5
200% 225%
|
2.4
250%
2.63
セラバンド問い合わせ先:株式会社 D&M http://www.dmsupporter.jp
(115

エクササイズ
棘上筋の筋力強化エクササイズ 1つめは棘上筋の筋力強化エクササイズです。 30°まで外転させます。外転時だけ、棘上筋に力 右上肢を行う場合、身体の後ろにセラバンドを渡 を入れさせ、戻すときは、バンドの張力で戻すよ します。左の踵でセラバンドを固定し、手を下げ うにします。 た状態でバンドが張りすぎたり緩んだりしない長 三角筋が働くのは代償になりますので、瞬間的に さに調節します。この位置から、バンドを50% 素早く軽く30まで外転するのが理想です。 ほど伸ばす動作になります。肩は、肩甲骨面上で20回を3セット行いましょう。

上肢帯と上肢のアライメントの評価と修正エクササイズPart2
エクササイズ
(エクササイズ 棘下筋・小円筋の筋力強化エクササイズ1
です。
2つめは棘下筋・小円筋の筋力強化エクササイズ。 まず肘は体側につけ瞬間的に素早く軽く外旋運動
を行います(A)。戻すときは、バンドの張力で セラバンドを動かす腕と反対側に固定し、バンド 戻すようにします。この運動では、特に棘下筋上 が張りすぎたり緩んだりしない1mほどの長さに 部線維と中部線維が強化されます。(次ページへ 調節します。
続く)
4 上肢帯と上肢の機能異常と修正
素早く軽く 動かす

エクササイズ2
棘下筋・小円筋の筋力強化エクササイズ2 次に外転して開いた大腿部の中央に肘を置き、
同 置き、同様に行います(G)。このときには肩関 様に行います(B)。このときには肩関節は肩甲 節は肩甲骨面上で90°外転した角度に相当します。 骨面上で45°外転した角度に相当します。この運 この運動では、特に棘下筋下部線維と小円筋が強 動では特に棘下筋中部線維と下部線維が強化され 化されます。 ます。
それぞれ、20回を3セット行いましょう。 そして次に外転して開いた大腿部の遠位端に肘を
大腿部の中央に 肘を置く。
大腿部の遠位端に 肘を置く。

上肢帯と上肢のアライメントの評価と修正エクササイズPart21
(エクササイスメ
肩甲下筋の筋力強化エクササイズ 3つめは肩甲下筋の筋力強化エクササイズです。 セラバンドを動かす腕と同側に固定し、バンドが 張りすぎたり緩んだりしない1mほどの長さに調 節します。肘は体側につけ瞬間的に素早く軽く内 旋運動を行います。戻すときはバンドの張力で戻
すようにします。 20回を3セット行いましょう。 エクササイズ2のように、肘を大腿部に置くことで、 肩甲下筋の活動する線維を変化させることもでき ます。
4 上肢帯と上肢の機能異常と修正
素早く軽く、 動かす
エクササイズ
肩関節90°以上外転位での棘下筋・小円筋の筋力強化エクササイズ 4つめは応用編としての肩関節90°以上外転位でうがやりやすいです。この位置で、外旋運動を反 の棘下筋・小円筋の筋力強化エクササイズです。 復します。 身体を斜めに回して、肩甲骨がピタッと壁につく 20回を3セット行いましょう。 ようにします。前腕は、壁から外に出して置くほ
肩関節90°以上外転位。 肩甲骨が壁につくよう

着信/通知音量
ちゅうかんせつし、
5肘関節,手関節・手指の機能異常と修正
肘関節屈曲の修正エクササイズ
| 肘関節屈曲の原因
とがあります。これは上腕骨が床に垂直
ではなく、肘が肩よりも後方にある状態 ここからは肘関節・前腕・手関節・手 です。上腕二頭筋と上腕筋が優位で短縮 指の機能異常と修正について解説します。 し、上腕三頭筋(図1)が延長している まずは肘関節の機能異常についてです。 状態です。 立位になると肘関節が屈曲しているこ
図1 上腕二頭筋・上腕筋・上腕三頭筋
右腕前面
右腕後面
論?領筋
上腕三頭筋
附鎖
回内筋 (→P124)
尺骨
橈骨
ほうけいかいないきん 方形回内筋 (→P124)

上肢帯と上肢のアライメントの評価と修正エクササイズPart2
エクササイズ
エクササイズ 上腕二頭筋と上腕筋のセルフ・ストレッチング まず、上腕二頭筋と上腕筋のセルフ・ストレッチ 次に肩関節120°~135°程度で壁やドアに手をつき、 ングです。これは立位で行います。
同様に身体と足をいっしょに回旋させて筋群をス まず肩関節30~45°程度で壁やドアに手をつきま トレッチします(B)。 す。この位置から身体を足といっしょに反対側に それぞれ30~60秒を3回実施してください。 回旋させることで、筋群をストレッチします(A)。
5 肘関節・手関節・手指の機能異常と修正

エクササイズ
大股歩行で肘関節の修正 肘をしっかり伸展させるためには、上腕三頭筋の けるように腹筋に力を入れながら歩きましょう。 強化も必要になります。歩行を通して肘関節をし ヒップアップ効果にもつながります。 っかり伸ばすようにしましょう。
振り出した足を床につけるときには、踵からつけ まず、1つめは後弯前雪型の姿勢の人にも有効な るようにしてください。ハイヒールばかり履いて 「大股歩行」です。
いる人はつま先からつこうとしますが、それは ふだんよりも5~10cm 大股で歩きましょう。ま NGです。 ず足を前に振り出すときに、後ろ側のお尻の大殿 さらに胸の真ん中を前に突き出すようにし、手も 筋にキュッと力を入れましょう。
前後にしっかりと振るように歩きましょう。腕を 大股で歩くことだけを意識すると腰が反りがちに 後ろに振るときに、肘をしっかり伸ばすように心 なってしまいます。そこで、おへそを背骨に近づがけましょう。
胸の真ん中を前に 突き出す。
後ろに振るときに肘を しっかり伸ばす。
手を前後にしっかり振る。
腹筋に力を 入れる。
大殿筋に力を 入れる。
ふだんよりも5~) 10cm 大股で歩く。

上肢帯と上肢のアライメントの評価と修正エクササイズPart21
エクササイズ
こうわんへいたんがたへいはいた。
ちょうよう
もも上げ歩行で姿勢の改善 2つめは、後雪平坦型と平背型の姿勢の人にも有 ださい。 効な「もも上げ歩行」です。
振り出した足を床につけるときには、睡からつけ ふだんよりも、ももを持ち上げて歩きます。腸腰 るようにしてください。胸の真ん中を前に突き出 筋を使って、ももを高く上げるときに腰が丸まら すようにし、手も前後にしっかりと振れるように ないように腰の筋肉(特に腰腸肋筋)にも力を入 歩きましょう。特に、肘は伸ばして後ろにきれい れておいてください。また、足をついているほうに振りましょう。 のお尻の大殿筋にもしっかりと力を入れていてく
5肘関節・手関節・手指の機能異常と修正
腰腸肋筋に力を 入れる。
胸の真ん中を前に 突き出す。
後ろに振るときに肘を しっかり伸ばす。
手を前後にしっかり振る。
大殿筋に力を 入れる。
腸腰筋に力を 入れる。

ちゅうかんせつしゅかんせつし
5肘関節,手関節・手指の機能異常と修正
かいない
前腕の回内時のアライメント不良の修正
後方を向いているにも関わらず、手掌が 円回内筋と方形回内筋の短縮」
後方を向くときは回内筋(西白内筋・方 次に、前腕のアライメント不良につい 形回内筋→ P120)が優位で短縮してい てです。
ます。または尺骨肘頭が外側を向き手掌 立位では尺骨肘頭(→ P120)は後方が外側を向いている場合は、回内筋に加 を向き、手掌が体側を向くのが正しいアえて大胸筋も短縮していることが示唆さ ライメントです。しかし尺骨肘頭はほぼれます。
エクササイズ
円回内筋と方形回内筋のセルフ・ストレッチング 円回内筋と方形回内筋のセルフ・ストレッチングます。その位置から左手で右の手が外側を向いて は、椅子座位で行います。
いくように回外させていきます。 肘を身体の前で屈曲し、反対の手で手首をつかみ30~60秒を3回実施してください。
174

上肢帯と上肢のアライメントの評価と修正エクササイズPart 21 5肘関節,手関節・手指の機能異常と修正
ちゅう かんせつしゃ かんせつ
手指の屈伸エクササイズ
になります。 腱鞘炎とその予防
そのためには前腕から手の指にまで伸 ピアノやギター演奏、パソコン操作やびる多くの筋肉の鍵をうまく使えること 料理など手の特定の運動をしすぎると、 が大切になります。そのことで手の指の 腱鞘炎を起こしてしまうこともあります。 器用さを獲得し、さらには腱鞘炎の予防 手の指が器用に使えることは、何歳にな。 にもつながります。ここでは、健 – 滑走 っても大切ですし、腱鞘炎の予防も大切運動を紹介しましょう。
5 肘関節・手 関 節・手指の機能異常と修正
図1 浅指屈筋・深指屈筋」
右前腕前面
浅指屈筋
深指屈筋

エクササイズ
エクササイズ
腱一滑走運動 まずは、指全体をしっかり伸ばします(A)。 ともいいます。そして、第2関節と第3関節は曲 次に、第1関節と第2関節をコの字に曲げます(B)。 げて、第1関節だけは伸ばしておきます(日)。 これは「引っかけ握り」ともいいます。深指屈筋(図 これは、「伸展握り」ともいいます。腱鞘内およ 1)の鍵と浅指屈筋(図1)の腱の間、または建と骨。 び骨との関係において、浅指屈筋の腱を最大限に の間に最大限の闘の滑走が生じます。
移動させます。最後に、指全体をしっかり伸ばし 続いて第3関節まで曲げます(C)。これは「完全 ます(A)。 握り」ともいいます。腱鞘内および浅指屈筋の腱上 この運動を最初はゆっくりと確実に行えるように で、深指屈筋の腱を最大限に移動させます。
します。慣れるに従い、正しい指の曲げ伸ばしを 続いて、第3関節は曲げたままで、第1関節と第2 速いスピードでもできるようになります。1日の 関節だけを伸ばします(D)。
なかで暇を見つけては頻回に行うと、指の器用さ これは「テーブルトップ」あるいは「虫様筋握り」。
が身につきます。

toisionaso
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Part 3
骨盤帯と下肢の アライメントの評価と
修正エクササイズ
III
この章で学ぶこと 骨盤帯と下肢の正常なアライメント 股関節の骨運動 ●成長過程で生じる大腿骨の異常 頚体角の正常と異常 前捻角の正常と異常 ●骨盤帯と下肢の機能異常と修正 ●膝関節・足関節・足趾の機能異常と修正

1骨盤帯と下肢の理想姿勢と不良姿勢。
骨盤帯と下肢の 正常なアライメント
矢状面と前額面での 正常なアライメント
ササイズについて解説します。まず、骨 盤帯と下肢の正常なアライメントを見て いきましょう。 ●矢状面での正常なアライメント 骨盤は上前腸骨棘と恥骨結合が同一垂
Part3では骨盤帯と下肢の姿勢について、 その評価のポイントと修正のためのエク
とうぜんちょうこつきょく:
こういうけっこう
頸体角
図1 矢状面での正常な アライメント
正常 125°
上前腸骨棘と上後腸 骨棘を結ぶ線と水平 面との成す角度が5° 以内 (ただし、± 15%以 内の誤差がある。女 性は個人差あり)
上前腸骨棘と恥 骨結合が同一重 直面上。
前捻角
正常 8~15°
重心線
股関節屈伸 0°で腸 骨稜頂点と大転子を 結ぶ線が大腿長軸と 一致。
膝関節屈曲や過 伸展がない中間 位で、脛骨長軸 は垂直。
128
[キーワード骨盤帯……体幹と下肢を連結する部分で、寛骨、仙骨、尾骨で構成される。

骨盤帯と下肢のアライメントの評価と修正エクササイズ Part3|
直面上にあります。上前腸骨棘と上後腸 ●前額面での正常なアライメント 骨棘を結ぶ線と水平面との成す角度が5° 骨盤は左右の腸骨稜が水平で、胸骨下 以内(上前腸骨棘が下方)という見方も 角(前面で下部肋骨のなす角度)は ありますが、+15°以内(女性は個人差 1170~90°(左右それぞれ35~45°)です。 あり)の誤差もあるので注意が必要です。 膝関節の大腿脛骨角には約5°の生理的
股関節は屈伸0° で腸骨稜頂点と大転 外反があり、踵骨は約3.5°の外反があり 子を結ぶ線が大腿長軸と一致し、膝関節
ます。 は屈曲や過伸展がない中間位で、脛骨長 軸は垂直です。足関節の長軸アーチと足 指は中間位にあります。大腿骨頭の領体 角は125°(水平から55°)、前捻角は 15です。
1骨盤帯と下肢の理想姿勢と不良姿勢
前額面の正常な アライメント
胸骨下角 70~90° (左右それぞれ 35~45°)
左右の腸骨稜、 が水平。
Welcohn
膝関節の大腿 脛骨角に約5° の生理的外反。
重心線
約3.5°の外反。
キーワード生理的外反….身体の各組織の構造上生じる外反。

O LISTTIMER タイマー終了
■骨盤帯と下肢の理想姿勢と不良姿勢
骨盤帯と下肢の 不良アライメント
股関節・膝関節・足関節の 機能異常
きます。下肢の関節は股関節、膝関節、 足関節、足趾があります。下の表に下肢 の不良アライメントの例とその症状、ま たその原因をまとめます。
Part3では下肢のアライメントの評価と、 修正のためのエクササイズを紹介してい
表A・股関節の機能異常
不良所見
基準
機能障害の原因 股関節屈筋群:短縮・硬い
屈曲位
股関節屈曲10°以上
ちょうようきん
伸展位
股関節伸展10°以上
腸腰筋:延長・筋力低下 ハムストリングス:短縮・硬い だいたいこ 大腿骨頭前方滑り
表B・膝関節の機能異常
不良所見
基準
機能障害の原因
だいたい!
過伸展位
膝関節の後方湾曲 ときに脛骨が大腿よりも後方
ハムストリングス:強い 大腿四頭筋:筋力低下 | 腓腹筋:短縮・硬い」
偽性過伸展、矢状面上で脛骨の後方湾曲
骨性
屈曲位
膝関節の前方弯曲
股関節屈筋群:短縮・硬い ハムストリングス:短縮・硬い
130キーワード偽性過伸展……脛骨の後方湾曲によって、膝関節過伸展になっているかのように見えること。

骨盤帯と下肢のアライメントの評価と修正エクササイズ]
表B膝関節の機能異常
不良所見
基準
機能障害の原因
1骨盤帯と下肢の理想姿勢と不良姿勢
後位
骨性 膝関節の外方湾曲
変形性膝関節症 非構造的:股関節内旋を伴代償 った膝関節過伸展、 股関節外旋筋群:延長・筋力低下 前額面上で脛骨の外方湾曲骨性
内反位
2おんせつかしん
こおんせつだいせんきんさん
偽性内受位
外反位
膝関節の内方弯曲
骨性 変形性膝関節症
外反位
非構造的:股関節内旋
TEL:短縮・硬い 大殿筋:延長・筋力低下
代償
外反位
股関節外旋を伴った膝関節 過伸展
股関節内外旋筋群:延長・筋力低下
脛骨捻転
水平面上で軸の回旋
骨性
表C足関節・足趾の機能異常
不良所見
機能障害の原因 後脛骨筋:延長・筋力低下
足関節
基準 長軸アーチ:篇平化、 長軸アーチ:高位化 股・膝関節屈曲しても平坦 にならない
足関節硬置
足関節背屈ROM:制限
槌状足趾
PIP関節屈曲
足趾屈筋・伸筋:短縮・硬い 虫様筋・骨間筋:筋力低下 足趾伸筋群が前脛骨筋より優位 椅子からの立ち上がりの際、体重を 後方に保持する傾向
外反母趾母趾の外側偏位
母趾内転筋:短縮・硬い
[キーワード代償…ある部位が損傷などによってその機能が十分に発揮できないとき、他の部位がその機能を引き継ぐこと。 131

2股関節の骨運動
股関節の骨運動
●股関節の大腿骨の外旋・内旋(図2) 股関節の運動と骨盤と
外旋運動→水平面での骨盤の同側への回転 大腿骨の動きの関係、
内旋運動→水平面での骨盤の反対側への回転 骨盤帯と下肢のアライメント評価をす●股関節の大腿骨の屈曲・伸展(図3) る際、股関節の動きについて正しい知識屈曲運動→矢状面での骨盤の前傾 を持つことが不可欠です。
伸展運動→矢状面での骨盤の後傾 股関節の動きは、骨盤に対する大腿骨 ●股関節の大腿骨の外転・内転(図4) の動きと、大腿骨に対する骨盤の動きに外転運動→前額面での骨盤の同側への回転 分けられます(図2・3・4)。
内転運動→前額面での骨盤の反対側への回転
図1→骨盤帯
仙骨
腸骨稜 上前腸骨棘
ちょうこつ
じょうせんきょうこつきょく
腸骨
かこうちょうこつきょく
下後腸骨棘
かせんちょうこつきょく
下前腸骨棘


恥骨結節
キーワード前傾・後傾……前方に傾いた状態を「前傾」、後方に傾いた状態を「後傾」という。

「骨盤帯と下肢のアライメントの評価と修正エクササイズPart3
例えば、右利きのゴルファーの場合、 旋可動域が少ない人では、フォロースル フォロースルー時に、体幹は骨盤といっ 1 一時に腰椎で代償的な過剰に左回旋を生 しょに左回旋をします。このとき左股関 じて、腰部に痛みを生じることがよくあ 節は内旋しています。男性で股関節の内ります。
2 股関節の骨運動
図2 股関節の骨運動 水平面の回転
の骨盤回転
大腿骨に
内旋
外旋
骨盤上の
上の大限骨回転
図3・股関節の骨運動 矢状面の回転
図4・股関節の骨運動 前額面の回転
帝王の骨盤
骨盤後傾
その骨盤回)
骨盤前傾
大腿骨と
大腿骨上の
伸展
….20
屈曲
外転、
#NAME?
骨盤上の
路上の大
然骨回配
り大台回郵
(図2・3・4『筋骨格系のキネシオロジー 原著第2版)p524を参考に作成) キーワード[骨…骨盤帯を構成する骨の1つ。腸骨、坐骨、恥骨の3つの部分に分けられ、生まれたときから思春期まで133]
は軟骨結合している別々の骨だが、思春期以降に結合する。

3成長過程で生じる大腿骨の異常
けいたいか。
頸体角の正常と異常
スポーツをするようになります。乳児の 発達とともに変化する頸体角
頚体角は約150 ですが、正常な成人で 下肢の不良姿勢を評価する際に、体 は120~130°の範囲(約125° が正常値) 角と前捻角の計測が必要ですが、これらになります。このように発達するに従い、 は発達するに従い角度が変わります。ま 角度が変わっていくのです(図1)。 ず、頚体角を発達学的に見ていきましょ しかし、頸体角が135°以上になると外 う。
反股といい、内反膝を合併します。また 乳児期に座位を獲得し、やがて立位を 頚体角が120°以下になると内反股といい、 獲得します。幼児期になると歩き、走る 外反膝を合併します(図2)。頚体角を という動作ができるようになり、さらに計測するためにはX線検査が必要です。
150
148
145°
142
図1 頚体角の年齢推移
11歳
3歳
5歳
134
キーワード内反膝……両膝間の距離が2横指以上離れている状態のこと。

骨盤帯と下肢のアライメントの評価と修正エクササイズPart3
図2 頸体角 外反股…一体角が 135°以上 の異常 内反膝を合併する
内反股……一体角が 120°以下 外反膝を合併する
3 成長過程で生じる大腿骨の異常
外反 145°
内反 110°
133
120~130
9歳
15歳
成人
キーワード外反膝…両課間の距離が2横指以上離れている状態のこと。

3成長過程で生じる大腿骨の異常
んねんかく
前捻角の正常と異常
ります。正常の角度よりも後捻していれ 発達とともに変化する前捻角
ば後捻股、前捻していれば前捻股になり 次に前捻角の変化です。前捻角も成長 ます。 とともに角度が変化します。出生直後は立位で上から見た前捻角を図2に示し 30~40° で、8~9歳で約16° になります。 ます。 Aは正常な前捻角で、寛骨と大 その後、成人では女性が14°ほどで、
男 腿骨の接点が一致しており、足部は前方 性は8°ほどになります。
を向きます。
しかし、Bのように前捻が強いと、寛 前捻角異常の後捻股と前捻股
骨と大腿骨の接点がずれます。これを修 前捻角の異常には後捻股と前捻股があ正するためには股関節を内旋するしかな
く、そうなると足部は内側を向きます。 つまり、内股を伴った過度の前捻という
ことになります。 図1→前捻角の異常
Gの場合は足部は外側を向くことに 前捻
なり、外股を伴った過度の後捻というこ とになります。
正常
後捻
クレイグ(Craig) 検査 による前捻角の確認方法 前捻角は、クレイグ検査として、徒手 によって検査することができます。
腹臥位で大転子を前後から把持して触 れておきます。そして股関節を内旋させ るように足部を外側に倒していきます。 その動きの間に、大転子が最も外側に出 っ張ってくるところが大腿骨頭と大転子 が床に平行に並んだ位置になります。す
だいたいこつ
130キーワード内股……上から見たときにつま先が内側に向いた状態。

O LISTTIMER タイマー終了
骨盤帯と下肢のアライメントの評価と修正エクササイズPart31
なわち、そのときに倒れていた下腿の角 度を測れば、それが前捻角を示すことに なります(図3)。
この検査によって得られた前捻角は、 X線写真を用いた方法よりも信頼性が高 いという研究報告もあります。
3 成長過程で生じる大腿骨の異常
図2 上から見た前捻角
正常な前捻
過度の前捻
内股を伴った過度の前捻
外股を伴った過度の後捻
(「筋骨格系のキネシオロジー 原著第2版』p517-518を参考に作成)
図3>クレイグ検査による前捻角の測定
大転子が最も外側に出っ張ってくるところの 下腿の角度が前捻角を示す。
前捻角
股関節を内旋させるように足部を外側に 倒していく。
腹臥位にして前後から大転子を把持する。
キーワード外股……上から見たときにつま先が外側に向いた状態。

骨盤帯と下肢のアライメントの評価と修正エクササイズPart3
なわち、そのときに倒れていた下腿の角 度を測れば、それが前捻角を示すことに なります(図3)。
この検査によって得られた前捻角は、 X線写真を用いた方法よりも信頼性が高 いという研究報告もあります。
3 成長過程で生じる大腿骨の異常
図2 上から見た前捻角
正常な前捻
過度の前捻
内股を伴った過度の前捻
外股を伴った過度の後捻
(「筋骨格系のキネシオロジー 原著第2版』p517-518を参考に作成)
図3>クレイグ検査による前捻角の測定
大転子が最も外側に出っ張ってくるところの 下腿の角度が前捻角を示す。
前捻角
股関節を内旋させるように足部を外側に 倒していく。
腹臥位にして前後から大転子を把持する。
キーワード外股……上から見たときにつま先が外側に向いた状態。

だいきんまくなる
りじょうきん
股伸展位の腹臥位で膝屈曲位では、犬 腹臥位と椅子座位で股関節の
腿筋膜張筋(図4)が外旋を制限します。 内旋角度が異なる場合
梨状筋(図6)は内旋を制限することが さて、この前捻角を示す股関節の内旋あります。股屈曲位の椅子座位で膝屈曲 角度ですが、腹臥位と椅子座位とで異な位では、大殿筋が内旋を制限することが ることがあります。
あります。実際には制限のある内旋の最
図4→大殿筋と 大腿筋膜張筋
大腿筋膜張筋
大殿筋
図5内旋角度の測定と大殿筋と大腿筋膜張筋の影響
椅子座位での内旋角度の測定 大腿筋膜張筋が緩む。 大殿筋が伸張位 →大殿筋の硬さの影響が出やすい
大殿筋
大腿筋膜張筋
腹臥位での内旋角度の測定 大殿筋が緩む 大腿筋膜張筋が伸張位 →大腿筋膜張筋の影響が出やすい
腸脛靱帯
キーワード股伸展位・…..股関節が伸展した状態のこと。 股屈曲位・……股関節が屈曲した状態のこと。

骨盤帯と下肢のアライメントの評価と修正エクササイズ
3 成長過程で生じる大腿骨の異常
す。
終域近くで抵抗が急に増して動きが止ま ・
一くなります(図5)。 ることが多く、この場合の最終域感(エ 梨状筋は股関節外転、伸展(作用は弱 ンド・フィール = end feel) は Firm、 い)、外旋作用(股関節屈曲45~60°まで) すなわち関節包の硬さが疑われます。ま を持ちます。しかし股関節屈曲45~60° た梨状筋は外旋を制限することがありま では、外転(開排)作用に変わり、股関
節屈曲90°以上では内旋作用に変わる習 大殿筋が股関節の伸展、内転、外旋に 慣的機能の逆転があります。このことか 作用するのに対して、大腿筋膜張筋は股ら股伸展位の腹臥位で膝屈曲位では、梨 関節の屈曲、外転、内旋という正反対の状筋は内旋を制限します。しかし股屈曲 作用を持ちます。
位の椅子座位で膝屈曲位では、梨状筋は 腹臥位では大腿筋膜張筋は伸張位にあ外旋を制限することになります。 り、大殿筋は緩んでいます。椅子座位で このように、腹臥位と椅子座位の膝屈 は大腿筋膜張筋が緩み、大殿筋が伸張位曲位での大殿筋、大腿筋膜張筋、梨状筋 になります。このことから腹臥位では大 の作用が異なるため、股関節の内旋角度 腿筋膜張筋の硬さの影響が出やすく、椅 に違いが出ることがあります。これを念 子座位では大殿筋の硬さの影響が出やす 頭に評価をする必要があります。
図6 梨状筋
図7・股関節屈曲90°での 梨状筋内旋作用
梨状筋は股関節屈曲45~60°では外転(開排)作用に変わる。
股伸展位の腹臥位で膝屈曲位では梨状筋は内旋を制限する。 梨状筋は股関節屈曲90°以上では内旋作用に変わる。 →股屈曲位の椅子座位で膝屈曲位では梨状筋は外旋を制限する。
ooon
内旋
キーワード開排……股関節を屈曲させて外転させること。

3成長過程で生じる大腿骨の異常
だいでんき
梨状筋と大殿筋のセルフ・ストレッチング
ストレッチングのポイント
短縮・硬化した梨状筋と大殿筋によっ て股関節の内旋角度に影響が出る場合、 次のセルフ・ストレッチングが効果的です。
エクササイズ
りじょうきんだいでんき
梨状筋と大殿筋のセルフ・ストレッチング Aは床や畳の上でできる方法です。片膝を立てて、BはAがうまくできない人の方法です。椅子に 交差させた足首を反対の大腿で固定します。そし座って、片側の膝は下に降ろして行います。A て曲げた膝を左胸のほうに近づけます。立てた足 よりはやりやすい方法です。Aと同様、殿部が 側の殿部が浮かないように注意してください。 浮かないように注意します。
床の上に座っての ストレッチング
椅子に座っての ストレッチング

骨盤帯と下肢のアライメントの評価と修正エクササイズ
Gは背臥位で、股関節外旋 位で屈曲方向にストレッチし ます。 Dはテーブルやベッドに片 膝を載せ、膝よりも外側に身 体を倒すことで、梨状筋をス トレッチします。 日は膝の内側に身体を倒し ていますが、この方法では、 大殿筋がストレッチできます。 これらのセルフ・ストレッチ ングは、30~60秒を3回実施 してください。
3 成長過程で生じる大腿骨の異常
背臥位でのストレッチング
膝よりも外側に身体を 倒すストレッチング
膝の内側に身体を倒す ストレッチング

4骨盤帯と下肢の機能異常と修正
優位で短縮した 大腿筋膜張筋の修正
こうこつけては2
立位において股関節が屈曲・内旋位をと 大腿筋膜張筋の優位・短縮
ることが多く見られます。また大腿筋膜 による機能異常
張筋は、骨盤を前傾させますが、大殿筋 骨盤帯と股関節周囲の筋にインバランは骨盤を後傾させます。これらの筋の調 スが存在すると、腰椎・骨盤・股関節の 和した動的バランスは、骨盤傾斜の中立 位置に異常が生じ、誤った股関節の動き を維持します。 が生じてしまいます。ここからは不良ア また、腸脛靱帯(図1)は、腸骨結節 ライメントの例を示し、その修正エクサ と、大殿筋前上部および大腿筋膜張筋を サイズを紹介していきます。まず、大腿 起始として生じ、脛骨外側結節(ガーデ 筋膜張筋が優位で短縮する場合です。 イ結節)と膝蓋骨外側面に付着します。 骨盤は、矢状面で大腿筋膜張筋と大殿 股関節・膝関節伸展位では、腸脛靱帯は 筋の2つの筋肉の拮抗しあう力で動的に大腿骨外側上顆の前方、大転子の後方を 釣り合います。大腿筋膜張筋が硬いと、 通ります。しかし、股関節・膝関節屈曲
腸脛靱帯の走行
大腿骨外側上顆
大転子
大転子
股関節・膝関節伸展位 での腸脛靭帯の走行 大腿骨外側上顆の前方 大転子の後方
大腿骨外側上顆
股関節・膝関節屈曲位 での腸脛靭帯の走行 大腿骨外側上顆の後方 大転子の前方
(142
[キーワード腸脛靭帯……大腿筋膜張筋に付着している健性組織。人体で最も長い靭帯。

骨盤帯と下肢のアライメントの評価と修正エクササイズ Part3
位では、腸脛靱帯は大腿骨外側上顆の後 ベッドなどに横になり、膝屈曲、股関 方、大転子の前方を通ります。
節伸展、外転、外旋位で、骨盤に側方傾 自転車をよくこぐ人などは、大腿骨外 斜が生じないように骨盤を固定します。 側上顆で腸脛靱帯が摩擦を受け、膝関節その位置から股関節を内転させていき、 での腸脛靭帯炎になるケース、また、女 床と水平以上まで下がれば正常です (A)。 性では、骨盤の性差によって歩行時など 短縮していれば床と水平まで内転してき に大転子部で腸脛靱帯が摩擦を受け、股 ません(B)。 関節での腸脛靭帯炎になるケースがよく なお、骨盤を固定していないと、骨盤 起こります。
に側方傾斜が生じて、股関節が内転して
いると誤って判断してしまいます(G)。 大腿筋膜張筋一腸脛靭帯の
また別の方法として、膝伸展のまま行 筋長検査
うこともできます(D)。股関節伸展、 大腿筋膜張筋 – 腸脛靱帯(TFL-ITB) 外転、外旋位は同じです。正常なら、股 の筋長検査は、オーバー(オーベル) テ 関節は水平よりも約10°内転します。 スト(Ober test) を用います(図2)。
4骨盤帯と下肢の機能異常と修正
図2 大腿筋膜張筋一腸脛靱帯(TFL-ITB)の筋長検査
A 正常
B短縮
IC 誤った方法
D 別法での正常
キーワード腸脛靭帯炎……..膝の屈伸を繰り返す中で腸頭靭帯が大腿骨外側類付近と擦れ合うことで滑膜や滑液包に
生じる炎症のこと。大転子部での擦れ合いによって生じる場合もある。
(143



14骨盤帯と下肢の機能異常と修正
おんまくちょう
大腿筋膜張筋の修正エクササイズ
エクササイズのポイント 優位で短縮した大腿筋膜張筋の修正で は、他動的なストレッチングまたはセル フ・ストレッチングを行います。これに は片膝立ちと立位の2種類があります。
その後に大腿筋膜張筋の拮抗筋エクサ サイズを行います。拮抗筋エクササイズ の目的は次の3つです。 1大腿筋膜張筋のストレッチング 2股関節内転筋群のパフォーマンス向上 3骨盤の動きのコントロール
エクササイズ
片膝立ちでの大腿筋膜張筋のセルフ・ストレッチング セルフ・ストレッチングには片膝立ちと立位の2に左側につき、左足のつま先は右後方を向くよう 種類があります。
にします(日)。その位置から胸を張ったまま左 1つめは片膝立ちの方法です。
斜め前(10時の方向)に体重を移動し、左の大 片膝立ちになりバランスを崩さないように椅子や 腿筋膜張筋をストレッチします(2)。 台につかまります。膝をついたほう(左足)の股 30~60秒を3回実施してください。 関節を外旋させます。右足は左膝と交差するよう
椅子などに つかまる。
膝をついたほうの股 関節を外旋。
左足のつま先 は右後方を向 くように。
右足を左膝と交差す。 るように左側につく。

骨盤帯と下肢のアライメントの評価と修正エクササイズ|
エクササイズ
4骨盤帯と下肢の機能異常と修正
立位での 大腿筋膜張筋の セルフ・ ストレッチング 2つめは立位の方法です。 こちらもバランスを崩さな いように椅子や台につかま ります。左股関節は外旋さ せ、右足を左足よりも左側 につきます。その位置から 上体を倒さずに左斜め前 (10時の方向)に体重を移 動し、左の大腿筋膜張筋を ストレッチします。 30~60秒を3回実施してく ださい。
上体を倒さずに 左斜め前に体重 を移動する。
右足を左足より も左側につく。
エクササイズ33
骨盤が側方挙上しない ように左手でモニター する。
腰方形筋を収縮させて 腰部をベットから浮か
せる。
大腿筋膜張筋の 12:23 拮抗筋エクササイズ まずは、下側の股関節を伸 展させ、上側の股関節・膝 関節は屈曲位で、足底をべ ッドにつけます。左手は、 骨盤が側方挙上して頭側に 上がらないように動きをモ ニターします。そして、下 側の腰方形筋を収縮させて、 腰部をベッドから浮かせる ようにします(日)。その 位置から、下側の股関節を 伸展・内転・外旋させて、 足部をベッドから持ち上げ させます。このときに骨盤 が側方傾斜しないように、 左手で骨盤の動きをモニタ ーさせておきます(2)。
カー2はつけ
下側の股関節を伸展・ 内転・外旋させて足部 をベットから持ち上げる。

4骨盤帯と下肢の機能異常と修正
しんてん
股関節屈曲・伸展の自動運動 に伴う大転子の動きの異常
だいてんの
転子の動きです。 股関節屈曲自動運動時の
Aは正常な状態です。自動の膝伸展 大転子の動きの異常
位での股関節屈曲においては、大転子は 図1は、股関節屈曲自動運動に伴う大その場で背尾側に凸の法則で滑るため、
図1●股関節屈曲自動運動に伴う大転子の動き
A 正常
膝関節伸展位での股関節屈 曲において、大転子の位置 がほとんど変わらない。
キーワード自動運動・・・・・・患者の随意的な筋収縮によって関節を動かす運動。患者の筋収縮を伴わず(力を抜いた状態で)、
他動的に関節を動かす運動を「他動運動」という。

骨盤帯と下肢のアライメントの評価と修正エクササイズPart31
ふくないそく
だいたいこっ
大転子の位置はほとんど変わりません。 場合は、まさしく動きの異常があるとい
Bでは大腿骨頭が背尾側へ滑れず、 うことです。 大転子が持ち上がり腹内側へ移動してし
股関節伸展自動運動時の まっています。いわゆる大腿骨による関
大転子の動きの異常 節包前部組織でのインピンジメントを生 じることになります。後方関節包や外旋 図2(次ページ)は股関節伸展自 筋群が硬い場合や、股関節を過伸展して 動に伴う大転子の動きです。 立つ後雪平坦型のアライメント不良で生 Aは正常な状態です。自動の膝伸展 じることが多くなります。
位での股関節伸展においては、大転子は 鼠径溝で背尾側への圧迫を大腿骨頭にその場で腹尾側に凸の法則で滑るため、 加えて前方滑りを防ぐと痛みが減少する大転子の位置はほとんど変わりません。
4 骨盤帯と下肢の機能異常と修正
かんせんてんと39
IB 異常
膝関節伸展位での股関節屈 曲において、大転子が持ち 上がり腹内側へ移動。
[キーワードインピンジメント……筋や腱が関節に挟まることで起こる痛みのこと。

ちょうようきんだいでんきん
図3 ハムストリングス
大殿筋
ちょうけいじんたい
腸脛靱帯
このときは股関節周囲の腸腰筋と大殿筋 のバランスも良好です。
ところが、Bのように大転子が前方 移動する動きは異常です。この原因はハ ムストリングス(図3)が大殿筋より優 位で、前方関節包に過剰な可動性があり、 腸腰筋の長さが延長していると、大腿骨 の回旋軸は前方へ移動するためです。こ のとき大腿骨近位は前方移動を、遠位部 は後方へ移動します。大腿筋膜張筋の短 縮があると、大腿骨の内旋も生じ、大転 子の前内側への移動を引き起こすことに なります。
だいたいにとうきん
大腿二頭筋
はんけんようきん
ハムストリングス
半腱様筋
半膜様筋、
図2 股関節伸展自動運動に伴う大転子の動き
A 正常
膝関節伸展位での股関 節伸展において、大転 子の位置がほとんど変 わらない。
ハムストリングス が大殿筋より優位
B 異常
大腿筋膜張筋の短縮
膝関節伸展位での股関 節伸展において、大転 子が前方に移動。


骨盤帯と下肢のアライメントの評価と修正エクササイズPart 3| 4骨盤帯と下肢の機能異常と修正
大転子の異常運動の修正
4 骨盤帯と下肢の機能異常と修正
のエクササイズは、後方関節包のセルフ エクササイズのポイント
・ストレッチングを行った後に、股関節 股関節の屈曲・伸展の自動運動時に起の異常運動の修正を行います。 こる大転子の異常な動きを修正するため
エクササイズ
後方関節包のセルフ・ストレッチング 1つめは後方関節包のセルフ・ストレッチングです。 このような場合は、口のように、右股関節を外 Aのように両股関節回旋 中 間位、骨盤は水平位 旋位にし、股関節外旋・伸展筋群を緩めます。 の位置から、腕で床を押して殿部を後方に移動し その位置から、腕で床を押して殿部を後方に移動 ていきます。
していくと、Dのように両股関節の高さと骨盤 最終域に近づくに応じて、Bでは右股関節殿部 が水平となり、腰椎回旋が防止できます。このと が硬いため、左股関節の屈曲のみが大きくなり、 き股関節屈筋群を用いずに、両手で押しながらス 右の踵がお尻にくっつくのが遅れ、腰椎が右回旋 トレッチすることが大切です。 してしまいます。
10~30秒を3~5回実施してください。
B 右股関節殿部が硬い場合
右踵が殿部 につくのが 遅れ、腰椎 が右回旋す
る。
右股関節を外旋位に。
腰椎の回旋 を防いでス トレッチン グできる。


エクササイズ
たいちょっきん
股関節屈曲時の大腿直筋と ハムストリングスの抑制運動 2つめは、股関節屈曲時の大腿直筋とハムストリン グスの抑制運動です。 Aのように大腿直筋起始部に両手を当てます。膝 を屈曲位にするために、セラピストの大腿の上にお
きます。 Bのように患者自動で膝関節伸展運動をさせます。 このとき大腿直筋の起始部をセラピストの両手で圧 迫したまま尾側方向に引くことで、大腿直筋起始部 での過剰収縮を抑制します。 「では股関節屈曲90° で、ハムストリングス遠位に 手を当てています。股関節を屈曲する際に、大腿直



骨盤帯と下肢のアライメントの評価と修正エクササイズPart3
筋起始部ならびにハムストリングス停止部近くが膨 隆するのは代償運動です。 Dのように、患者自動で膝関節屈曲運動をさせます。 このときハムストリングスの停止部近くをセラピス トの左手で圧迫したまま大腿近位方向に引くことで、 ハムストリングス停止部近くでの過剰収縮を抑制し ます。
仕上げとして股関節屈曲運動を行います。目のよ うに大腿直筋近位部に両手で圧をかけておきます。 そこから股関節の自動屈曲運動をさせます。セラピ ストはその動きを介助しながら、日のように最終 域では大腿骨頭を背尾側に押し込むようにします。 この手順で正しい運動を学習させていきます。
4 骨盤帯と下肢の機能異常と修正
B



エクササイズ
椅子座位での股関節屈曲運動の修正 次に椅子座位での股関節屈曲運動の修正を行いま 1まずは腰椎を中間位で正しく座ります(日)。股 す。この修正の目的は、次の3つです。
関節を一側ずつ屈曲させますが、腰椎屈曲の代償 1股関節屈筋群のパフォーマンス向上
が出ないようにモニターしておきます(2)。さ 2股関節殿筋群のストレッチング
らに腰椎を中間位に保ち、股関節屈曲への抵抗運 3体幹筋群のストレッチング改善
動を両手で行います(日)。
抵抗
エクササイズ
開放性運動連鎖での股関節回旋運動の修正 次に開放性運動連鎖(OKC:open kinetic chain) Aでは腹部の下にタオルを敷きます。膝関節は での股関節回旋運動の修正を行います。この修正 90°に屈曲し、腹筋群を収縮させます。 の目的は、次の3つです。
日は股関節内旋です。腹筋群を収縮させ。左骨 I股関節運動の間、骨盤の代償運動の減少
盤が浮かないように注意しましょう。 2股関節回旋筋群の柔軟性改善のストレッチング ては股関節外旋です。腹筋群を収縮させ。右骨 3腹筋群のパフォーマンス向上
盤が浮かないように注意しましょう。
B


骨盤帯と下肢のアライメントの評価と修正エクササイズ Part3
へいさせいうんどうれんさ
エクササイズ
ウササイズ5 閉鎖性運動連鎖での股関節回旋運動の修正 最後に閉鎖性運動連鎖(CKC:closed kinetic chain) Aは構えです。そこからBのように、左大腿骨 での股関節回旋運動の修正です。この修正の目的 頭上で右肩・左肩・右骨盤・左骨盤を一枚の板の は、次の4つです。
ように左回旋させることで、股関節を内旋させます。 3股関節運動の間、腰部の代償運動の減少
「は構えです。そこからDのように、左大腿骨 2内旋時の大殿筋・梨状筋などのストレッチング 頭上で、右肩・左肩・右骨盤・左骨盤を一枚の板 3外旋時の大腿筋膜張筋のストレッチング のように右回旋させることで、股関節を外旋させ a腹筋群と腹斜筋群のパフォーマンスの向上 ます。
4 骨盤帯と下肢の機能異常と修正
ふっきんぐんふくしゃきんくん
左大腿骨頭上で右肩・ 左肩・右骨盤・左骨盤 を1枚の板のように して左回旋。
左大腿骨頭上で右肩・ 左肩・右骨盤・左骨盤 を1枚の板のように して右回旋。

4骨盤帯と下肢の機能異常と修正
股関節外転筋の筋力低下 による歩行の代償
だいし
レンブルク歩行と呼びます。一方、デュ 歩行時の3つの代償
シェンヌ現象(Duchenne sign)は頭部・ 股関節外転筋、特に中殿筋の筋力低下が体幹を患側へ傾けて骨盤を水平に保持し あると、歩行時に3つの代償を生じます(図 ようとする運動を指します。 1)。トレンデレンブルク(Trendelenburg) 12, 股関節外転筋の筋力が低下すると、ト 徴候は、患肢返脚立ちの際、遊脚側(足 レンデレンブルク徴候とデュシェンヌ現 を持ち上げている側)の骨盤が下降する 象が組み合わさった3つの代償が見られ 現象です。この状態での歩行をトレンデることがあります。
図1●股関節外転筋の筋力低下による代償
(+=陽性、-=陰性)
mimits
BEAM00mm
第1代償 デュシェンヌ現象 (+) 逆トレンデレンブルク徴候
第2代償 トレンデレンブルク徴候(+) デュシェンヌ現象(+)
第3代償 トレンデレンブルク徴候(+) デュシェンヌ現象(-)
第3代償は健康な人にも見られるが、第2代償、そして第1代償になるほど病的になっていく。
(「ビジュアル実践リハ整形外科リハビリテーション]p232を参考に作成)
154キーワード患側・健側……障害のある側が「患側」、障害のない側が「健側」。

骨盤帯と下肢のアライメントの評価と修正エクササイズ Part3
4骨盤帯と下肢の機能異常と修正
股関節外転筋の筋力強化エクササイズ
4骨盤帯と下肢の機能異常と修正
図1>中殿筋
| エクササイズのポイント
では、股関節外転筋の筋力を強化し、 歩行時の代償を修正するエクササイズを 紹介します。
まず、股関節内転筋群のストレッチン グを行ってから、中殿筋後部線維の筋力 強化、片脚立位姿勢の修正、片脚立脚の 安定性の向上、最後に第1代償の歩行パ ターンの修正へと進めます。
ちゅうでんきんこうぶせんい
エクササイズ
股関節内転筋群の セルフ・ストレッチング Aは一側の内転筋群を大殿筋とい っしょにストレッチングする方法で す。 内転筋群(特に長内転筋と内輪筋) の屈曲作用に関しては、完全伸展か ら約50°屈曲の範囲内では屈曲作用 を持ちます(次ページ図21)。長内 転筋は、屈曲60° 付近では屈伸作用 はなくなり、純粋な内転作用になり ます(2)。このときの拮抗筋は梨 状筋です。屈曲60°を超えると、屈 曲作用は伸展作用に転じます(3)。 よって日のように持ち上げた大腿 の内側に身体を入れるようにして股 関節を屈曲・外転することで、内転 筋群と大殿筋をいっしょにストレッ チングします。

股関節内転筋群のセルフ・ストレッチング(続き) てからDは両股関節を外転していくことで、
両 いずれの方法でも腰椎は中間位を保持することが 側の股関節内転筋群をストレッチしています。 重要です。これらのセルフ・ストレッチングは、 目から日は股関節を開排すると同時に、肘も曲30~60秒を3回実施してください。 げていき、股関節内転筋群をストレッチします。
図2>股関節内転筋群の習慣的機能の逆転
1
完全伸展から 約50°の屈曲 の範囲内では 屈曲作用。
長内転筋
短内転筋、 長内転筋
| 長内転筋 短内転筋
屈曲60°付近で 長内転筋の屈曲 作用はなくなり、 純粋な内転作用 になる。
屈曲作用
屈曲60°超で屈曲作用は 伸展作用に転じる。
7420
(「図解関節・運動器の機能解剖 下肢編p47を参考に作成)



骨盤帯と下肢のアライメントの評価と修正エクササイズ Part 3 |
エクササイズ
中殿筋後部線維の選択的筋力強化エクササイズ 2つめは中殿筋後部線維の選択的筋力強化エクサ A~Dは開放性運動連鎖です。目、日は半閉鎖 サイズです。
性運動連鎖です。G、Hは閉鎖性運動連鎖です。
4骨盤帯と下肢の機能異常と修正
まず口は側歌位になり、両足 部の間に枕をはさみます。両膝 がついた位置から、上側の股関 節を伸展・外転・外旋し、中殿 筋後部線維を使用させます。最 初は他動的に動きを教え、自動 運動、そして抵抗運動へと段階 を上げていきます。
F
Bは腰部の下にタオルをおき、 腰部の代償を防ぎます。上側の 下肢を下の足から離すように、 股関節伸展・外転・外旋によっ て持ち上げます。骨盤が動かな いように上の手でモニターして おきます。下側の下肢で治療台 を押さないように注意してくだ さい。
F
Gは日を膝伸展位で行います。 骨盤が動かないように、上の手 でモニターしておきます。下側 の下肢で治療台を押さないよう に注意してください。
Dは腹臥位で行います。腹部の 下に枕を入れるか、あるいは腹 筋群を収縮させてから行います。 一側の股関節を伸展・外転・外 旋させます。骨盤がいっしょに 動かないように注意してくださ い。



エクササイズ
中殿筋後部線維の選択的筋力強化エクササイズ(続き) 日は右足で床を押すことで左に体幹を回旋します。 いきます。 股関節を伸展・外転・外旋させるのですが、膝がGからHでは右斜め45°方向に右足を踏み出し 内側に倒れるのはうまくできていない証拠です。 ます。これは左側の中殿筋後部線維を活動させて、 膝は外に残して立てたままで行います。腰椎の過 股関節を伸展・外転・外旋させることが重要とな 剰な回旋を防ぐために、右肩・左肩・右骨盤・左 ります。セラピストは、左骨盤前方から抵抗を与 骨盤を一枚の板のように動かすことが大切です。 えますが、右斜め45°方向に右足を踏み出すので 日ではセラピストが骨盤の前方から抵抗を与え 正面からではなく拮抗する方向から正確に抵抗を ることで、後方の中殿筋後部線維の活動を高めて。 加えるようにしてください。
抵抗
抵抗

骨盤帯と下肢のアライメントの評価と修正エクササイズ Part3
ングサイズ3 片脚立位修正エクササイズ、
へんきゃくりつし
A 理想的な片脚立位姿勢
次に、片脚立位を修正することで、理想的な片脚立 位姿勢をとれるようにします。この目的は、次の4 つです。 1酸筋群のパフォーマンス向上 2腹筋群による等尺性コントロールの改善 3股関節、骨盤、脊柱の代償運動の防止 ●股関節の内旋防止 Aは理想的な片脚立位姿勢です。 Bは挙上側股関節が下制しています。Gは挙上側 股関節が内旋しています。Dは肩関節と骨盤が反 対側に傾斜しています。B、C、Dはすべて間違 った姿勢です。このようにならない正しい姿勢を保 てるようにしましょう。
4骨盤帯と下肢の機 能 異常と修正
きょじょうそくこかんせつ
B 挙上側股関節が下制
IC 挙上側股関節が内旋
D 肩関節と骨盤が反対側に傾斜

エクササイズ 片脚安定性エクササイズ
へんきゃくあんていせい
りっきゃくそくか、
4つめは片脚安定性エクササイズです。目的は、 次の4つです。 1立脚側の殿筋群のパフォーマンス向上 2立脚側の股関節・膝関節・足関節の安定性向上 3遊脚側の股関節の外旋可動域拡大 4体幹筋群の安定性向上 遊脚側の股関節を外旋してモビリティを高めると 同時に、立脚側下肢のスタビリティへの外的負荷 とします。 Aのように最初は壁を背にして行います。次に 日のように壁から離れて、杖でバランスをとり ながら行います。最後にGのように壁から離れ、 右で遊脚側の股関節を外旋することで外乱として 用い、一側下肢のみでバランスを取ることを学習 させます。膝関節の屈曲角度は、徐々に増やして いきますが、腰椎の伸展は防ぐようにしてくださ い。
壁を背にして一側下肢のみで バランスを取る。
壁から離れて、杖でバランスをとりな がら一側下肢のみでバランスを取る。
遊脚側の股関節を外旋し一側 下肢のみでバランスを取る。
(160

骨盤帯と下肢のアライメントの評価と修正エクササイ
そのサイズ5 第1代償の歩行パターンの修正
5つめは第1代償の歩行パターンの修正です。目 そうすると手術をしたにもかかわらず、デュシェ 的は、次の4つです。
ンヌ歩行が戻らない人も多くいます。そこで歩行 ■変形性股関節症の手術後の殿筋群のパフォーマ パターンの修正が必要になります。 ンス向上
手術も骨頭部分が大口径になり、ネックが細くな 2第1代償のデュシェンヌ歩行からの脱却
ってきたため、内転方向の動きだけでは、まず脱 かんもくかしないてんかキ 3患側下肢内転可動域改善
臼はしません。そこで平行棒や、手すりにつかま けんさくがしだいてます! 4健側下肢外転可動域改善
り、歩行を改善していきます。 第1代償のデュシェンヌ歩行をしているときは、 患側立脚中期には、患側の股関節を内転させ、遊
んまくり2352 中殿筋が短縮してきます。その人に手術をして、 脚側の骨盤を下制させます。一方、健側立脚中期 すり減った大腿骨頭を人工骨頭に変えるわけです には、健側の股関節を外転させ、遊脚側の骨盤を が、そのときに中殿筋は伸ばされることになりま 挙上させるように歩きます。なるべく早いうちか す。しかし短縮していた中殿筋を無理に伸ばそうら中殿筋をストレッチすることが大切になります。 としても、元の長さに戻ろうとしてしまいます。
4骨盤帯と下肢の機能異常と修正
かんそくりっきゃくちゃ
患側立脚中期 患側の股関節を内転させ、遊脚側の 骨盤を下制させる。
健側立脚中期 健側の股関節を外転させ、遊脚側の 骨盤を挙上させるように歩く。

4骨盤帯と下肢の機能異常と修正
優位で短縮した ハムストリングスの修正
ハムストリングスと 大腿直筋のインバランス
が骨盤前傾に作用するので、このインバ ランスによって骨盤への機能異常も生じ ます(図1)。 半膜様筋と半腱様筋の 働きと作用
ハムストリングスが硬く短縮するとさ まざまな問題が起こります。
まず、骨盤に対してはハムストリング ス全体として骨盤後傾に働き、大腿直筋
半膜様筋と半腱様筋は、股関節の伸展
図1 ハムストリング スと大腿直筋の インバランス
ハムストリングスと大腿 直筋のインバランスによ って骨盤への機能異常が 生じる。
大腿直筋 骨盤前傾に働く。
ハムストリングス 骨盤後傾に働く。
このキーワードハムストリングス……大腿後面にある大腿二頭筋、半腱様筋、半膜様筋の筋群の総称。外側にある外側ハムスト
リングス(大腿二頭筋)、内側にある内側ハムストリングス(半腱様筋、半膜様筋)に分かれる。

骨盤帯と下肢のアライメントの評価と修正エクササイズPart3
しっかんせつ
と内旋、および膝関節の屈曲と内旋を行と、膝関節の伸展可動域は制限されます。 います。これら内側ハムストリングスは、
| 大腿二頭筋の働きと作用 これらの共同筋である外側ハムストリン グスの大腿二頭筋よりも硬化または短縮 外側ハムストリングスである大腿二頭 することがあります。この状態は、股関 筋は、股関節の伸展と外旋、および膝関 節の過剰内旋のある人に認められます。 節の屈曲と外旋を行います。最も優位な 座位で膝関節の伸展を行っている間にイ 股関節外旋筋となることがあり、骨盤帯 ンバランスは最も明らかとなります。 にある股関節外旋の内在筋群の活動が減
内側ハムストリングスの短縮があると、 少することになります。大腿二頭筋は股 膝関節を伸展するときに股関節が内旋位関節外旋に対して優位となった結果とし になっていれば、膝関節の伸展可動域はて、膝関節(短頭の脛骨外旋)または股 正常に近く感じられます。しかし膝関節 関節の痛みを生じさせます。 を伸展するときに股関節の内旋を妨げる
4 骨盤帯と下肢の機能異常と修正
図2>ハムストリングス
長頭?
?短頭
大腿二頭筋
半腱様筋
半膜様筋
キーワード内在筋……機能が作用する身体部位だけに属する筋。股関節の中に起始する股関節外旋筋など。身体部位の外
部に起始する筋肉を外在筋という。

股関節屈曲運動を用いる方法を紹介しま | ハムストリングスの筋長検査
す (図3・4)。次のイラストにあるように、 ハムストリングスの筋長検査は何種類 正常に見えて短縮している、または過伸 かありますが、背臥位で、膝伸展位での張している場合があります。
図3>ハムストリングスの筋長検査1
恥骨結合
上前腸骨棘
正常な状態 股関節は約80°屈曲し、 上前腸骨棘が恥骨結合 よりも母指1横指ほど 沈み込む。
短縮している場合 上前腸骨棘が恥骨結合 よりも母指1横指ほど 沈み込んではいるが、 股関節が70°まで屈曲 できない。
過伸張している場合 上前腸骨棘が恥骨結合 よりも母指1横指ほど 沈み込んではいるが、 股関節が90°以上屈曲 できている。
164]
キーワード上前腸骨棘……..腸骨稜の前にある2つの突出のうち、上部にある前方に大きく突き出す突起(株)のこと。

骨盤帯と下肢のアライメントの評価と修正エクササイズPart3
図4 ハムストリングスの筋長検査2
正常に見えて 短縮している場合 屈曲可動域は70°以上あるよう に見えても、腰椎の屈曲が過剰 で、骨盤が過度に後傾している。
4 骨盤帯と下肢の機能異常と修正
過度に後傾
短縮に見えて 正常な場合 骨盤が前傾して腰椎が過伸展し ているにもかかわらず、股関節 が45°ほどは屈曲できている。 つまり、上前腸骨棘と恥骨結合 を結ぶ線に対しては、70°ほど 屈曲していることになるため。
骨盤前傾
腰椎過伸展
正常に見えて 過伸張な場合 骨盤が前傾して腰椎が過伸展し ているにもかかわらず、股関節 が70°以上は屈曲できている。 つまり、上前腸骨棘と恥骨結合 を結ぶ線に対しては、90°以上 屈曲していることになるため。
骨盤前傾
腰椎過伸展
(図3.4 「ケンダル 筋:機能とテストー姿勢と痛みー」p39-42を参考に作成)
キーワード恥骨結節……恥骨結合の前外側にある丸い突起(結節)。

り、腰椎の屈曲を伴わなくても膝が伸ば ハムストリングスの
せます(B)。左右を両方行い、比較 機能的筋長檢?
することを忘れないでください。 ハムストリングスに対する機能的筋長背臥位では検査側の股関節を90°屈曲位、 検査は椅子座位と背臥位で行います(図 膝90°屈曲位から開始します。股関節を 5)。
内旋して膝関節を伸展することで大腿二 椅子座位では、腰椎を中間位として、 頭筋の短縮を検査します。さらに股関節 膝を伸ばす側(イラストでは右)の上後 を外旋して膝関節を伸展することで半腱 腸骨棘を右母指で触り、第2仙椎棘突起 様筋と半膜様筋の短縮を検査します(C)。 を左母指で触ります(A)。そこから 内旋したときと外旋したときとで、どち 膝を伸展してもらいますが、正常では骨らのほうがより膝関節が伸展できなかっ 盤帯が後傾して右母指が後ろに押されたたかを比較検討してください。
図5>ハムストリングスに対する機能的筋長検査
椅子座位で行う場合A
左母指で第2仙椎棘突起。
右母指で上後腸骨棘。
背臥位で行う場合
●股関節90°屈曲位、膝関節90°屈曲位にする。 2股関節内旋、膝関節伸展で大腿二頭筋の短縮を検査。 3股関節外旋、膝関節伸展で半腱様筋と半膜様筋の短縮を検査。
166)
キーワード機能的筋長検査……筋の作用を考慮し、動きを出させながら筋の長さを検査する方法。

骨盤帯と下肢のアライメントの評価と修正エクササイズPart 31 4骨盤帯と下肢の機能異常と修正
ハムストリングスのセルフ・ストレッチング
4骨盤帯と下肢の機能異常と修正
を紹介します。大腿と体幹の位置、股関 エクササイズのポイント
節の位置などによっては、効果が半減す 短縮したハムストリングスを修正する ることがあります。正しい姿勢、動作で セルフ・ストレッチングとエクササイズ: 行うように注意しましょう。
エクササイズ
片膝立ちで行うセルフ・ストレッチング 1つめは片膝立ちで行う方法です。
傾斜させていきます。このとき体幹と大腿が一直 伸ばしたい側の膝を前方に出して片膝立ちになり 線になっていることが大切です。腰椎が屈曲した ます。後ろの膝の下には床との摩擦を減らすため り、過伸展しないように注意してください(2)。 に、バスタオルを敷きます(日)。
30~60秒を3回実施してください。 後ろの膝を後方にずらすとともに、体幹を前方に
伸ばしたい側の膝を 前方に出す。
体幹を前方 に傾斜させ ていく。
バスタオルを敷く。
膝を後方にずらす。

エクササイズ
体幹を前方 に傾斜させ ていく。
片脚をベッドから降ろして行うセルフ・ストレッチング 2つめはベッドやテーブルを用いて行う方法です。 伸ばしたい側の脚をベッドに乗せ、膝の下に丸め たバスタオルを敷きます。もう一方の脚はベッド から降ろしておきます。 後ろの足を後方にずらすとともに、体幹を前方に 傾斜させていきます。このとき体幹と大腿が一直 線になっていることが大切です。腰椎が屈曲した り、過伸展しないように注意してください。 なお、ベッドの上の膝下のタオルを忘れて膝が真 っ直ぐ伸びている場合は、ハムストリングス以外 の腓腹筋や斜膝窩靭帯、関節包、神経などが伸ば
バスタオル されてしまい、ハムストリングスの抵抗感かどう かがわからなくなりますので、気をつけてくださ い。タオルを忘れないことが、重要です。 30~60秒を3回実施してください。
後ろの足を後方にずらす。
大腿を両手で抱えて 腹部に近づける。
エクササイズ33 背臥位で行うセルフ・ストレッチング 3つめは背臥位で行うハムストリングス] のセルフ・ストレッチングです。 伸ばしたい側の膝を曲げて、大腿を後ろ から両手で抱えるようにして腹部に近づ けます(日)。この姿勢から股関節は動 かさないようにして、膝を伸ばしていき ます。このとき持ち上げた側の腰が浮か ないようにすることが大切です (2)。 これは大腿四頭筋を用いて膝を伸展する ことで、ハムストリングスを伸ばす動的 ストレッチングです。大腿四頭筋を活動 させると、相反抑制という神経生理学的 機序によって、ハムストリングスがさら に緩むことになります。膝を伸ばした位 置で5秒ほど止めてから元に戻します。 これを20回以上実施してください。大 腿四頭筋の筋力強化エクササイズも同時 に行えます。
足趾を高く上げて 膝を伸ばしていく。

骨盤帯と下肢のアライメントの評価と修正エクササイズ Part3
エクササイズ エクササイズ 椅子座位で行うセルフ・ストレッチング 4つめは椅子座位で行う方法です。 ハムストリングスをストレッチングするにしても、
A ただ単にストレッチすればよいというのでなく、 隣接する関節の安定性も考慮しなくてはなりませ ん。ハムストリングスが硬い場合には、腰椎の屈 曲代償を生じ、それによって骨盤の後傾位を助長 する恐れがあります(A)。
ようふたれん このような場合のストレッチングは、腰部多裂筋 を収縮させ、すなわち骨盤を軽度前傾させて正常 のアライメントに正した状態(B)で、自動的な ハムストリングスのストレッチング(G)が有効 となります。股関節が内旋したり、外旋したりし ないように注意してください。
4 骨盤帯と下肢の機能異常と修正
膝関節伸展時、ハムス トリングスが硬いと腰 椎の屈曲代償を生じ、 骨盤の後傾位を助長す る恐れがある。
骨盤を軽度前傾させて正常なアライメント に正す。
正常なアライメントを保った状態でハムス トリングスをストレッチング。
169

エクササイズ
体幹の前屈運動の修正エクササイズ
5つめは体幹の前屈運動の修正です。 体幹を前屈する際には60°までは股関節の屈曲が 優位であり、その後腰部の屈曲が生じるのが正し い体幹前屈です。しかし体幹前屈時にハムストリ ングスの遠心性収縮がうまくいかないと、弛緩の タイミングが合わず、早期に骨盤を後傾方向に止 めてしまい、腰椎の屈曲が早く生じる代償が起き てしまいます。これを防止するためにも、ハムス トリングスを緩めた状態での股関節屈曲を用いた 体幹前屈を学習する必要があります。 まず台に手をついて体重を支えます(A)。次に 膝関節を軽度屈曲し、ハムストリングスを緩めま す(B)。この位置から徐々に股関節を屈曲させ ていきます。手を前に滑らせ、腰部ではなく骨盤 前傾すなわち股関節を屈曲させることを意識しま す。戻る際は大殿筋を意識して戻ります(G)。 これを10回行い3セット行えるとよいです。 エクササイズ前に立位で体幹を前屈して、両手の 指先が床に向かってどの程度近づくかを検査して おけば、エクササイズ後の効果を確認できます。
両手を前に滑ら せて股関節を屈 曲させていく。
膝関節を軽度屈曲し、 ハムストリングスを 緩める。
(170】

骨盤帯と下肢のアライメントの評価と修正エクササイズPG
しかし、自分ではどうしてもうまくできないとい う人の場合には、最初にやり方を教えてあげる必 要があります。 まず骨盤の前傾を介助することで、股関節の屈曲
を教えます(D)。戻るときは、骨盤の後傾を介 助し、大殿筋に手で刺激を与え、大殿筋の活動を 向上させます。そのときに腰椎の伸展で代償させ ないために、腹筋には収縮をいれさせます(日)。
4骨盤帯と下肢の機能異常と修正
D
骨盤の前傾を介助し、 股関節の屈曲を教える。
戻るときは骨盤の 後傾を介助する。
大殿筋を意識 させる。
腹筋を収縮させる。


4骨盤帯と下肢の機能異常と修正
りっきん
脊柱起立筋群の機能異常
イズを紹介しましたが、この修正を行っ 脊柱起立筋群の姿勢や
てもなかなか改善しないことがあります。 運動への働き
その場合、脊柱起立筋群に問題があるこ 前項で体幹の前屈運動の修正エクササとが少なくありません。高齢になるほど、
図1背部のグローバル筋
7 左側:頭最長筋以外の最長筋と頸・
頭板状筋を取り除いている。 右側:腸肋筋をすべて取り除いている。)
頭半棘筋 頭板状筋 頸板状筋
嶺最震筋
簡筋
脊柱起立筋
筋骨攀筋
胸襲長筋
護腸筋筋
ないふくしゃきん
内腹斜筋
ふくおっさん 腹横筋
胸腰筋瞋・
腸骨稜
多裂筋

キーワードグローバル筋…….体幹の浅い部分にある筋。浅部筋ともいう。脊椎に直接付着することがほとんどなく、張り
網のような構造で脊椎を押し縮める方向に荷重をかけて脊柱を安定させる働きがある。



骨盤帯と下肢のアライメントの評価と修正エクササイズPart 3|
ていきんさん
盆部の多裂筋は仙骨を前屈します。骨盤 底筋群が仙骨を後屈するので、ちょうど 反対の働きをします。
そういう問題が加わってきます。
脊柱起立筋群は、両側が働くと骨盤を 前傾させます。一側のみの働きでは、骨 盤を側方傾斜します。
脊柱起立筋の深層にある多裂筋は、体 幹前屈時には遠心性の収縮を通して脊柱 の屈曲や前方剪断力をコントロールしま す。多裂筋は、回旋にはあまり関与しま せんが、回旋時に活動すると、体幹回旋 の主な動作筋である腹筋による屈曲方向 の力を相殺する作用を持ちます。また様
4 骨盤帯と下肢の機能異常と修正
こうほうきんさん
後方筋群の筋長検査 脊柱起立筋群を含めた後方筋群( 起立筋群・ハムストリングス・下腿三頭 筋)の筋長検査は、長座位で行います。(次 ページ参照)
( グローバル筋を取り除いている。)
図2>背部のコア筋 頭板棘筋(切断) 頭板状筋(切断) 上薗斜筋、 大後頭直筋 頭最長筋
後頭道筋 キ韻斜筋
けいきょくかんきん 頸棘問筋
はいきなくなる
きょうちょうかいせんきん
頭棘筋
胸長回旋筋
長筋骨攀筋
胸短岡旋筋
きょうきんくん 胸棘筋
外間筋
短筋骨学筋
ふくおうきん
腹横筋 胸腰筋膜・深葉
ようほうけいさん 腰方形筋
龍骨被
多裂筋
キーワードコア筋………体幹の深い部分にある筋。深部筋ともいう。脊椎の各分節それぞれに直接付着し、各分節を安定し、173)
た位置に維持する働きがある。



Aは脊柱起立筋群・ハムストリング。 脊柱起立筋群とハムストリングスが長い ス・下腿三頭筋の長さが正常です。骨盤 状態です。 も若干後傾していて、上前腸骨棘が恥骨Gは骨盤後傾が強く、ハムストリン 結節よりも後ろにあります。脊柱の部分 グスが短縮していますが、それを長くな 的な過屈曲や過伸展がなく、両手の指先った脊柱起立筋群で代償しようとしてい が足趾に触れるくらいが正常です。 ます。下腿三頭筋は正常です。 Bは骨盤が前傾しており、中下部の Dは骨盤後傾が強く、下部脊柱起立
図3>後方筋群の筋長検査
脊柱起立筋群・ハムストリングス・ 下腿三頭筋の長さが正常。
骨盤が前傾、中下部の脊柱起立筋 群とハムストリングスが長い。
骨盤後傾が強く、ハムストリング スが短縮。それを長い脊柱起立筋 群が代償。下腿三頭筋は正常。
174
キーワード底屈…つま先立ちのように足関節を脛部から遠ざける方向に伸ばす動き。逆に足先を上げるように
足関節を脛部に近づける動きを背屈という。

「骨盤帯と下肢のアライメントの評価と修正エクササイズPart3
.
そくかんせつていくつ
筋群、ハムストリングスが短縮していまはやや短縮しています。 す。また足関節底屈が強く、下腿三頭筋 1日は骨盤前傾が強く、ハムストリン も短縮しています。上部の脊柱起立筋は グスは長くなっています。上部の脊柱起 正常です。
立筋は正常ですが、下部の脊柱起立筋が 目は骨盤後傾は正常で、ハムストリ硬くて拘縮を生じています。この姿勢は ングスは正常です。上部の脊柱起立筋が。 脊髄損傷の対麻痺(両下半身の麻痺)の 長く、中下部の脊柱起立筋と下腿三頭筋 人に見られる姿勢です。
4 骨盤帯と下肢の機能異常と修正
せきずいうんじ123
骨盤後傾が強く、下部脊柱起立筋 群、ハムストリングスが短縮。足 関節底屈が強く、下腿三頭筋が短 縮。上部の脊柱起立筋は正常。
骨盤後傾、ハムストリングスは正 常。上部の脊柱起立筋が長く、中 下部の脊柱起立筋と下腿三頭筋は やや短縮。
骨盤前傾が強く、ハムストリング スが長い。上部の脊柱起立筋は正 常だが、下部の脊柱起立筋が硬く て拘縮を生じている。
[キーワード拘縮……軟部組織が硬くなって関節の動きが悪くなってしまう状態。

着信/通知音量
4骨盤帯と下肢の機能異常と修正
ほうきんぐ。
後方筋群の修正エクササイズ
脊柱起立筋、前胸部、最後に下腿三頭筋 のセルフ・ストレッチングへと進めます。
エクササイズのポイント 体幹前屈運動が改善しない場合の修正 エクササイズを紹介します。まず、下部
(エクササイズ
下部脊柱起立筋の セルフ・ストレッチング まず、下部脊柱起立筋のセルフ・ストレッチング です。 両膝を曲げて後ろで両手を組みます。そして両膝 を胸に近づけてくるようにします。お尻が浮くま で持ち上げて、下部の脊柱起立筋を30~60秒ス トレッチングします(A)。

骨盤帯と下肢のアライメントの評価と修正エクササイズPart 3
続いて両膝を左に倒して骨盤と腰をその方向に回 して30~60秒ストレッチング(B)。さらに両膝 を右に倒して骨盤と腰をその方向に回して 30~60秒ストレッチング(G)。両膝を横に倒す
ときに、倒したほうと反対の肩が浮いてしまわな いように注意してください。 A~Cを3回実施してください。
4 骨盤帯と下肢の機能異常と修正
エクササイズ
けんこうこ
前胸部のセルフ・ストレッチング 次に、前胸部のセルフ・ストレッチングです。 肩甲骨の下端が中心になるように、丸めたバスタ オルを下に敷きます。両膝は立てます。低めの枕 を敷いて、顎を軽く喉元に引きつけたままバンザ イします。その状態で胸の前を30~60秒ストレ
ッチングします。このときに腹筋群を収縮させて おいて、腰部が伸展しないように注意してくださ い。これを3回実施してください。
肩甲骨下端

そのリサイス3
かたいさんとうき
脚を前後に開き、 前に出した脚側 の股関節と膝関 節を屈曲。
下腿三頭筋の セルフ・ストレッチング 下腿三頭筋のセルフ・ストレッチングです。 Aは腓腹筋のセルフ・ストレッチングです。 腓腹筋は二関節筋で、膝関節屈曲と足関節 底屈に作用します。 テーブルまたは椅子の背もたれに両手をつ きます。左脚を前、右脚を後ろにして前後 に開き、左の股関節と膝関節を前方で屈曲 します。右下肢は、膝を伸ばしたまま運が 浮くところまで足を後方へ引きます。その 位置より徐々に足部を床につけるように下 ろし、ストレッチングします。前後の脚を 入れ替えて同様に行います。 30~60秒を3回実施してください。
踵が浮くと ころまで足 を引く。
足部を床につけ るようにしてス トレッチング。
腓腹筋

骨盤帯と下肢のアライメントの評価と修正エクササイズ」Part3
脚を前後に開き、 前に出した脚側 の股関節と膝関 節を屈曲。
4骨盤帯と下肢の機能異常と修正
Bはヒラメ筋のセルフ・ストレッチング です。 Aと異なるのは、前後に開く脚幅を狭く して後ろの足の踵を床にしっかりつけて、 膝関節を軽く曲げた位置から開始する点で す。この位置から踵が浮かないように、右 膝の屈曲を増やしていき、ストレッチング します。 30~60秒を3回実施してください。
ヒラメ筋、
踵を床に つける。
膝の屈曲を増や すようにしてス トレッチング。

4骨盤帯と下肢の機能異常と修正
優位で短縮した 股関節屈筋群の修正
こかんせつくっきんぐ
る機能異常について解説します。 腸腰筋の働き
股関節屈筋の一つ、腸腰筋(図1)は、 次に優位で短縮した股関節屈筋群によ下肢が固定されているときには、骨盤を
図1●腸腰筋
小腰筋
大腰筋
腸腰筋
ちょうようきん
おこっきん 關骨筋
180】
キーワード共同筋・・・・1つの運動に参加するすべての筋群のこと。

骨盤帯と下肢のアライメントの評価と修正エクササイズPart3
ほんじょうぶようついて、
前傾させます。骨盤前傾に関しては脊柱 トは屈曲方向へ転じる傾向があります。 起立筋群や広背筋と共同して働きます。 立っているときは腰が反っているのに、 (共同筋)。
椅子に座ると腰が丸まっているというの 直立姿勢では、大腰筋が上部腰椎に対
はこういう理由によるのです。 しては弱い伸展モーメントを持ち、下部
股関節屈筋群の筋長検査 腰椎に対しては屈曲モーメントを発揮し ます。これによって立位では腰椎が伸展 トーマス (Thomas) テストは、腸腰 (前弯)しているのです。このモーメン 筋(大腰筋・腸骨筋)、大腿直筋、大腿 トは脊柱伸展位で強調されますが、一方 筋膜張筋、縫工筋など(図2)の股関節 で、屈曲位では腰椎のすべてのモーメン 屈筋群に短縮がないかを調べるテストです。
・骨盤帯と下肢の機能異常と修正
図2・股関節屈筋群
だいよん 大腰筋
腸骨筋
大腿筋膜張筋
羅筋
大原さ
キーワードモーメント……物体を回転させる力の大きさを表す物理量。

「トーマステスト変法
左の股関節を屈曲した際に、右の膝が 浮いてくると、右の股関節屈筋群の短縮 を示唆します。骨盤が後傾する際に股関 ・トーマステストではどの筋に問題があ 節屈筋群に十分な伸張性がないといっしるかまではわかりません。そこでトーマ よに動いて屈曲してしまうのです(図3)。 ステスト変法を用います(図4)。
図3トーマステスト
左の股関節を屈曲した際に、右の膝が浮いて くると、右の股関節屈筋群の短縮を示唆する。
左の股関節が屈曲す。 ると骨盤が後傾する。 そのとき右の股関節 屈筋群に十分な伸張、 性がないといっしょ に動いて屈曲してし まう。
0
(「図解 四肢と脊椎の診かた」p150を参考に作成)
キーワード伸展モーメント……伸展方向に回転させる力のこと 屈曲モーメント・・・・…屈曲方向に回転させる力のこと。

骨盤帯と下肢のアライメントの評価と修正エクササイズPart31
Aは正常な状態です。大腿後面はベ Bは誤った方法です。屈曲した左側 ッドについたままです。骨盤が約10° 後 の殿部まで離床して、顎まで上がってい 傾していますので、右の股関節は約10° ます。屈曲した殿部は離床しないように 伸展していることになります。右膝関節注意してください。 は80°以上屈曲します。
4骨盤帯と下肢の機能異常と修正
図4トトーマステスト変法1
A 正常な状態
大腿後面が ベッドにつ いている。
B 誤った方法
大腿後面が ベッドから 離れている。
キーワード伸張性……筋の伸びる性質のこと。
183]

●縫工筋の短縮がある場合
さらに股関節を内旋すると股関節伸展角 縫工筋の短縮がある場合、右股関節が 度が増加するなら(G)、大腿筋膜張筋 屈曲・外転・外旋し、膝関節は屈曲しま が疑われます。内旋すると股関節伸展角 す(図5)。
度が減少して屈曲が増すようであれば縫 ●大腿筋膜張筋の短縮がある場合
工筋かもしれません。また股関節を内転 大腿筋膜張筋の短縮があると、右の股すると、脛骨が外旋してくる場合は(D)、 関節が屈曲してきます(図6A)。大腿大腿筋膜張筋 – 腸脛靭帯の付着部で脛骨 筋膜張筋の股関節への作用は、屈曲・外 を外旋方向に引っ張ることが原因なので、 転・内旋です。よって股関節を外転する大腿筋膜張筋の硬さが示唆されます。 と股関節伸展角度が増加します(B)。
図5トーマステスト変法2 縫工筋の短縮がある場合
右股関節が屈曲・ 外転・外旋。
膝関節が屈曲。
184キーワード縫工筋股関節と膝関節の2関節にまたがる2関節筋で、股関節の屈曲、膝関節の屈曲に関与する(→P181)。

骨盤帯と下肢のアライメントの評価と修正エクササイズPart3
図6トーマステスト変法3 大腿筋膜張筋の短縮がある 場合
4 骨盤帯と下肢の機能異常と修正
右股関節を外転したとき、 股関節の伸展角度が増加。 →大腿筋膜張筋の短縮が 疑われる。
右股関節を内旋したとき 股関節の伸展角度が増加 →大腿筋膜張筋の短縮が疑われる。 股関節の伸展角度が減少、屈曲が 増加 手縫工筋の短縮が疑われる。
右股関節が屈曲。
右股関節を内転したとき、 脛骨が外旋 →大腿筋膜張筋の硬さが 疑われる。
[キーワード大腿筋膜張筋……….大腿の外側にある股関節の屈曲、外転、内旋に関与する筋(→P181)。

●腸腰筋短縮か大腿直筋短縮かの鑑別 動的に伸展します。その際に股関節の屈
腸腰筋と大腿直筋の短縮の鑑別を図7. 曲角度に変化がなければ腸腰筋が疑われ に示します。Aは大腿後面がベッドか ます。もしもDのように膝を他動的に ら離れ、膝屈曲が80°より小さくなって 伸展すると股関節が伸展してくるような います。これで腸腰筋が原因か大腿直筋 ら、2関節筋の大腿直筋に短縮があるこ が原因かを鑑別します。Bでは膝を他とになります。下のように膝を他動的
図7・トーマステスト変法4腸腰筋短縮か大腿直筋短縮かの鑑別
膝関節を他動的に伸展したとき、 股関節の屈曲角度に変化なし。 腸腰筋の短縮が疑われる。
右大腿後面がベッドから 離れて膝関節の屈曲角度 が80°よりも小。
右の股関節屈筋群の短 縮を示唆。
膝関節を他動的に伸展したと き、股関節が伸展。 →大腿直筋の短縮が疑われる。
186]
キーワード鑑別……異常のある部位、不良アライメントなどを触診、検査等によって判断すること。

骨盤帯と下肢のアライメントの評価と修正エクササイズPG
に伸展すると、股関節屈曲角度が少し変で、股関節のみ屈曲しています。Gの 化したなら両者が考えられます。もしもようであれば、大腿直筋が示唆されます。 大腿直筋が優位であれば、目のように。 大腿直筋だけなら大腿後面はベッドにつ 膝を床方向に押すと膝が伸展してきます。 き、その際の膝屈曲角度が80°より小さ
最初の肢位が日のようであれば腸腰 くなります。しかし、目や口のような 筋が示唆されます。膝の屈曲角度は正常はっきりした肢位はあまり多くありません。
4 骨盤帯と下肢の機能異常と修正
最初の肢位で膝の屈曲角度 が正常で、股関節のみ屈曲 →腸腰筋の短縮を示唆。
膝関節を他動的に伸展したとき、 股関節の屈曲角度が少し変化。
腸腰筋、大腿直筋の両者の短 縮が疑われる。
膝を床方向に押すと膝が 伸展してくる。 →大腿直筋が優位。
最初の肢位で大腿後面はベ ッドにつき、その際の膝屈 曲角度が80°より小さい →大腿直筋の短縮を示唆。
——-
キーワード他動的伸展…….自らの筋力を使わないで他人の力で伸展させること。自分の力で伸展させることを
自動的伸展という。

●大腰筋短縮か腸骨筋短縮かの鑑別
もしもBのように体幹を同側に側屈 原因が腸腰筋だとわかったら、大腰筋 させて大腰筋を緩めたときに股関節が伸 か腸骨筋(P180) かを鑑別する必要が 展してくるなら、大腰筋が示唆されます。 あります(図8)。
大腰筋であればGのように体幹を対 Aでは股関節が屈曲していて、膝関 側に側屈させると、大腰筋が緊張して股 節は約80°屈曲しています。大腰筋は、 関節の屈曲が増します。これらの反応が 股関節屈曲、外旋、腰椎伸展に作用しま出た場合は大腰筋が原因と考えられます す。腰部屈曲位では腰椎屈曲に、一側のが、何の変化もなければ、残る原因は腸 働きだと体幹を同側に側屈します。 骨筋ということになります。
図8・トーマステスト 変法5大腰筋短縮か 腸骨筋短縮かの鑑別
股関節屈曲、膝関 節80°程度の屈曲。
体幹を同側に側屈したとき、 股関節が伸展。 大腰筋の短縮が疑われる。
体幹を対側に側屈したとき、 股関節の屈曲角度が増加。 →大腰筋の短縮が疑われる。
188
キーワード同側……同じ側。 対側……もう一方の側。 一側…….片側の。 両側……両側の。

骨盤帯と下肢のアライメントの評価と修正エクササイ
●腸腰筋の過度の伸張
することもできます(図10)。立位では 腰椎を平坦とし、ベッドの端に股関節 腰椎前弯は見られません。このことは腸 がくるようにします。大腿骨が診察台よ 腰筋には短縮がないことを示しています。 りも下に落下してくれば、それは腸腰筋 しかし両膝立ちをすると短縮した大腿直 が過度に伸張されていることを示します 筋と大腿筋膜張筋が股関節と膝関節の両 (図9)。
方で伸張されることになります。その結
果、これらの短縮した2関節筋が骨盤を | 立位と両膝立ちの比較
前傾させ、腰椎の前弯を引き起こすこと 立位と両膝立ちの変化を観察して識別があります。
4 骨盤帯と下肢の機能異常と修正
図9トトーマステスト 変法6腸腰筋の過度 の伸張
大腿骨が診療台よりも下がる。 →腸腰筋の過度の伸張を示唆。
ベッドの端に 股関節がくる ようにする。
図10 立位と両膝立 ちの変化による鑑別
腰椎前弯なし
立位では腰椎前弯はなし。 両膝立ちでは腰椎が前弯。
大腿直筋と大腿筋膜張 筋の短縮が疑われる。
腰椎前弯
骨盤前傾
キーワード腰椎前弯…….腰椎が過度に前湾している状態のこと(正常な腰椎は前湾しているが、過度になっている状態)。
逆に、前湾がなくなり、平らな腰になっている状態のことを腰椎後湾という。
-189

ちょうかんせつりょうい
大腿直筋の伸張痛が軽減して膝関節の屈 大腿直筋の短縮テスト
曲角度が増せば大腿直筋が原因ですが、 大腿直筋の短縮テスト(尻上がり現象 痛みが変わらなければ大腿神経の機能異 テスト:Ely sign) を行って確認するこ 常が示唆されます。 とも必要です(図11)。被験者の下限を もしも膝を屈曲すると殿部あるいは腰 把持し、踵が殿部につくまで膝を他動的 部に痛みが出る場合は、その原因を調べ に屈曲させます。殿部が浮き上がれば陽 ます。 性です。大腿直筋の短縮があることで膝 Bのように左手で仙骨を固定した状 関節の屈曲を制限し、起始部の下前腸骨態で、他動的に膝関節を屈曲します。仙 棘を引くことで骨盤の前傾が生じ、殿部 腸関節領域に痛みが再現できれば、固定 が浮き上がるのです。
した仙骨に対して、大腿直筋の硬さによ
って腸骨が前傾したことで仙腸関節に痛 大腿直筋か大腿神経か
みが生じたと考えられます。 関節かの鑑別
Gのように左手で下部胸椎を固定し 大腿直筋か大腿神経か関節かなどを鑑た状態で、他動的に膝関節を屈曲します。 別する方法を、図12に示します。
胸椎は固定されているので、腰椎の伸展 Aのように膝関節伸展方向に最大の(前弯)が増します。そのことで腰部に 力を入れてもらい、その動きを等尺性収 痛みが再現できれば、腰椎の前弯が増強 縮で止めることで、等尺性収縮後弛緩したことが原因と考えられます。 (hold & relax) を実施します。もしも
だいたいしんけい.as
図11→大腿直筋の短縮テスト(尻上がり現象テスト)
踵が殿部につくまで膝関節 を屈曲したとき、殿部が浮 き上がる。 →大腿直筋が短縮している。
190キーワード:大腿神経…..脊防神経から分岐して骨盤や股部、下肢につながる腰神経叢の枝(枝分かれした神経)の一つで、
大腿三角(スカルパ三角)を通り、恥骨筋や縫工筋、大腿四頭筋などを支配する神経。

骨盤帯と下肢のアライメントの評価と修正エクササイズ
だいたいしんけい
図12 大腿直筋か大腿神経か関節かの鑑別
等尺性収縮後弛緩を行ったとき 痛みが軽減して膝関節の屈曲角度が増加。 →大腿直筋の短縮が原因。 痛みが変わらない。 ⇒大腿神経の機能異常が疑われる。
4 骨盤帯と下肢の機能異常と修正
他動的に膝関節を屈曲したとき、仙腸関 節領域に痛みが再現。 ⇒大腿直筋の硬さによって腸骨が前傾し、 痛みが生じた可能性。
左手で仙骨を固定。
他動的に膝関節を屈曲したとき、腰部に 痛みが再現。 →腰椎前弯の増強によって、痛みが生じ た可能性。
左手で下部胸椎を固定。
キーワード仙腸関節………..骨盤帯(→P132)の仙骨と腸骨の間にある関節。

4骨盤帯と下肢の機能異常と修正
だいたいちょっき
腸腰筋・大腿直筋の修正エクササイズ
エクササイズのポイント
腸腰筋、大腿直筋それぞれのセルフ・ ストレッチング、そしてトーマステスト 変法の姿勢をとっての両者のセルフ・ス トレッチングへと進めます。
では、短縮した腸腰筋、大腿直筋を修 正するエクササイズを紹介します。
エクササイズ
たいようきん
腸腰筋のセルフ・ストレッチング 1つめは腸腰筋のセルフ・ストレッチングです(A)。 に、体幹を前方に移動させます。大腰筋もセルフ 前側の腫と後側の膝を支点にして、前後に脚を開 ・ストレッチングをする場合は、体幹の反対側(前 きます。椅子などに手をおいてバランスをとりま に出した脚側)への側屈を加えます(B)。 す。後ろ側の腸腰筋をストレッチングをするため。 30~60秒を3回実施してください。
A 腸腰筋のセルフ・ストレッチング
体幹を前方に移動。
B 大腰筋もセルフ・ストレッチングをする場合
前に出した脚側へ 体幹を側屈。

骨盤帯と下肢のアライメントの評価と修正エクササイズPart3
エクササイズ
だいたいちょっきん
大腿直筋のセルフ・ストレッチング 2つめは2関節筋の大腿直筋のセルフ・ストレッ チングです。 大腿直筋は股関節の屈曲と膝関節の伸展に作用す るので、股関節伸展位で膝関節を屈曲することが 大切です。 片膝立ちになり、後ろの足部を持ちます。股関節 伸展を維持したままで、足部を持って膝関節を屈 曲して運を殿部に近づけます(A)。 またはベッドに曲げるほうの下肢を乗せた腹臥位
になります(B)。片脚はベッドから降ろして、 股関節を屈曲することで骨盤を後傾させています。 このことで、膝関節屈曲中の骨盤前傾の代償を防 きます。ベルトや長いタオルを使い、それを両手 で引っ張ることによって、膝関節を屈曲して大腿 直筋をストレッチします。 これらのストレッチングは、30~60秒を3回実施 してください。
4骨盤帯と下肢の機能異常と修正
A
踵を殿部に近づ けて膝関節を屈 曲させる。
ベルトを引っ張 って膝関節を屈 曲させる。

エクササイズ3
腸腰筋と大腿直筋のセルフ・ストレッチング 3つめは腸腰筋と大腿直筋のセルフ・ストレッチ屈曲して抱えます(日)。次に、腹筋群の収縮は ングです。ベッド上でトーマステスト変法の姿勢 維持したままで、一側だけ抱えます (2)。そこ をとってからストレッチしていく方法です。 から腹筋群の収縮は維持したまま腰椎の前弯を防 まず、腹筋群を収縮させてから、両側の股関節を 止しながら、一側股関節を伸展し、腸腰筋をスト
両側の股関節を屈曲し て両手で大腿を抱える。
腹筋群を収縮さ せた状態を保つ。
一側の大腿を抱える。

骨盤帯と下肢のアライメントの評価と修正エクササイズPart3
レッチします(3)。さらに腹筋群の収縮を維持 したまま腰椎の前弯を防止しながら、一側股関節 をさらに伸展し、膝関節も屈曲することで、大腿 直筋もストレッチします(4)。その後開始肢位
に戻し、反対側も行います。 これらのストレッチング30~60秒を3回行います。 さらなるレベルでは、股関節屈曲を自動で保持で きるようにしましょう。
4骨盤帯と下肢の機能異常と修正
しい
一側の股関節 を伸展させる。
膝関節をさら に屈曲させる。

4骨盤帯と下肢の機能異常と修正
つーしんかんてんろーんと
股関節伸展運動の修正エクササイズ
エクササイズのポイント 股関節屈筋群の短縮があると、股関節
の伸展が不足してきます。歩行時にも股 関節の伸展ができなくなります。そこで 股関節屈筋群のストレッチングをしなが
エクササイズ
背臥位で行う股関節伸展運動の修正エクササイズ 1つめは背臥位で行う方法です。
部を床に沿って、膝を伸ばしながら滑らせていき まず、膝を立てた背臥位になり、腹筋群を収縮さます (3) せます(日)。次に一方の膝を持ち上げて、もも 腹筋の収縮が足りないと、骨盤が前傾してきてし の後ろから大腿部を抱えます(2)。そのまま足 まいますので注意してください。骨盤が前傾して
腹筋群を収縮さ せた状態を保つ。
一側の大腿を抱える。

骨盤帯と下肢のアライメントの評価と修正エクササイズ|Part31
らも、股関節伸展運動の修正が大切とな 1股関節屈筋群のストレッチング ります。エクササイズには、背臥位で行2股関節伸展筋群と外旋筋群のパフォー うものと腹臥位で行うものがあります。 マンス向上
これらのエクササイズの目的は、次の3腹筋群による骨盤コントロール改善 3つです。
4 骨盤帯と下肢の機能異常と修正
かいししい
だいたいきんまくちょうきん
た だき、

きたら、いったん開始肢位に戻してください。最 初のうちは、足部を外尾側(外側下方)へ滑らせ てから戻します(4)。反復につれて足部をすべ らせる方向を徐々に内方へと変えるようにしまし
ょう。内方に行くときは大腿筋膜張筋も伸張す ることになります。 さらなるレベルでは、股関節屈曲を自動で保持で きるようにしましょう。
こかんせつくっきょく
膝を伸ばしなが ら脚を滑らせる。
197

エクササイズ
クササイズ2 腹臥位で両側股関節の伸展筋群に力を入れさせる運動
2つめは腹臥位で両側股関節の伸展筋群に力を入次に腹臥位で両股関節を軽度外転位で行います れさせる運動です。
(B)。大殿筋のパフォーマンスの向上を目的に 腹臥位で両膝関節を開き、両足部をくっつけます 行います。股関節を外旋しながら、殿部を硬く収 (A)。大殿筋と股関節外旋筋群のパフォーマン 縮させます。下肢を床から持ち上げる必要はあり スの向上を目的に行います。両足部を押し合い、 ません。このとき腹部の下に枕をおくか、腹筋群 殿部を硬く収縮させます。このとき腹部の下に枕 を収縮させておいてください。 をおくか、腹筋群を収縮させておいてください。
A
両足部を押し合 って殿部を収縮。
腹部の下に枕を おくか腹筋群を 収縮させる。
股関節を外旋さ せながら殿部を 収縮。
(198

骨盤帯と下肢のアライメントの評価と修正エクササイズPart3
エクササイズ
いっそ
腹臥位で一側股関節の伸展修正運動 3つめは腹臥位で一側股関節の伸展修正運動を行 ていきます。 います。
次に膝関節を屈曲位で行います(B)。大殿筋の まずは膝関節を伸展位で行います(A)。大殿筋 パフォーマンスを向上し、ハムストリングスを抑 とハムストリングスのパフォーマンスの向上を目 制します。腹筋群を収縮させて、骨盤の前傾や腰 的に行います。腹筋群を収縮させて、骨盤の前傾 部の伸展を防ぎます。股関節を伸展することで、 や腰部の伸展を防ぎます。股関節を伸展すること 股関節屈筋群をストレッチし、背筋群と腹筋群の で股関節屈筋群をストレッチし、背筋群と腹筋群 パフォーマンスを向上し、骨盤の代償を減少して のパフォーマンスを向上し、骨盤の代償を減少した。 いきます。
4 骨盤帯と下肢の機能異常と修正
A
膝を伸ばした状態 で股関節を伸展。
腹筋群を収縮させ、 た状態を保つ。
膝を曲げた状態で 股関節を伸展。
腹筋群を収縮させ た状態を保つ。
199

4骨盤帯と下肢の機能異常と修正
骨盤の前傾・後傾の インバランスによる歩行の異常
歩行パターンの特徴」
り出しやすくなります。後対側の手も前
方に振り出しやすくなります。 股関節外転筋の中殿筋筋力低下による 1 人の筋膜は体幹の前方と後方とで、反 第1代償のデュシェンヌ歩行の改善に関 対側への連結があります(図1)。前方 しては、股関節外転筋の修正エクササイ では一側の大胸筋・外腹斜筋の浅層部が、 ズ (→P155)に記載しました。 反対側の股関節の恥骨筋・長内転筋・
ここでは、左右の骨盤の前傾・後傾の 内転筋の浅層部へ連結しています。後方 インバランスによる歩行の異常を改善すでは一側の広背筋の浅層部が、反対側の る方法を説明します。
大殿筋の浅層部へ連結しています。つま 股関節屈筋群が優位に働く側は、骨盤り歩くときに右足と左手、左足と右手と の後傾が大きく、歩行時も足を前方に振いう反対側の手足が連結するのです。
図1> 筋膜の前方と後方での交差
腹部前面で交差するらせん。
腰部後面で交差するらせん
200
キーワード筋膜・・・・・・全身の筋、骨、心臓、脳などの臓器をすべて包み込んでいる膜。全身をくまなく覆っていることから、「第
2の骨格」とも呼ばれる。

骨盤帯と下肢のアライメントの評価と修正エクササイズPart3
よって右の骨盤が後傾しているときに、線・左股関節屈筋群と内転筋群の筋力検 前に振り出すと、左側の手が前に振れま査です。左右の筋力を比較してイラスト す。反対に左骨盤が前傾しているなら、 の側の筋力が弱い場合は、右骨盤が後傾 左足が後ろにあるときに、右側の手も後 していることを示唆します。 ろにあることになります。
後方の一側の広背筋と、反対側の大殿
筋の連結に対しては、腹臥位で筋力検査 歩行時に連結して働く筋の
をします。図3は左広背筋・胸腰筋膜・ 筋力検査
右大殿筋の筋力検査です。左右の筋力を 前方の一側の大胸筋・外腹斜筋と、反 比較してイラストの側の筋力が弱い場合 対側の恥骨筋・長内転筋・短内転筋の連 は、左骨盤が前傾していることを示唆し 結に対しては、背臥位で筋力検査をしま ます。 す。図2は、右大胸筋・右外腹斜筋・白
4 骨盤帯と下肢の機能異常と修正
図2 前方の筋膜連結 の筋力検査
図3>後方の筋膜連結 の筋力検査
[キーワード白線…腹直筋の起始である剣状突起から除を通って恥骨と垂直に走行している線で、腹直筋を左右にわける
内側縁になっている。
(2011

4骨盤帯と下肢の機能異常と修正
骨盤前傾・後傾の修正エクササイズ
目的は、次の3つです。 | エクササイズのポイント |
1螺旋連結のパフォーマンス改善 右骨盤後傾を前傾へ、左骨盤前傾を後2脳卒中片麻痺における杖・患・健パタ 傾へ改善する例を説明しましょう。背臥 ーンの改善 位または四つ這いで筋力強化エクササイコ腹筋群・背筋群のパフォーマンス向上. ズを行います。
(エクササイズ
がいそく
背臥位での 歩行パターン修正の 筋力強化エクササイズ 背臥位の場合、右外腹斜筋と左股 関節屈筋群・内転筋群を収縮させ ます。肘を反対の膝の外側まで持 っていきます。さらに左広背筋と 右大殿筋を収縮させます(A)。 左手で床を押して左肩が浮くよう に力を入れます。右足部も床を押 して右殿部が浮くように力を入れ ます(B)。
こうはいきんま

「骨盤帯と下肢のアライメントの評価と修正エクササイズ Part 3|
エクササイズ 四つ這いでの歩行パターン修正の筋力強化エクササイズ 四つ這いができる人は、四つ這いの方法を選択し 体重を支えた状態で、左広背筋と右大殿筋を収縮 ましょう。四つ這いで左手と右下腿で体重を支えさせ)ます(B)。 た状態で、右外腹斜筋と左股関節屈筋群・内転筋そして実際に歩くときも左右のバランスに注意し 群を収縮させます。肘が反対の膝の外側まで行く ながら歩くようにしましょう。 ようにしましょう(A)。さらに右手と左下腿で
4 骨盤帯と下肢の機能異常と修正
203】

5膝関節・足関節・足趾の機能異常と修正
しつかん種
膝関節の過伸展位
こうわんへいたんがた
後弯平坦型でよく見られる アライメント不良
図1→膝関節の過伸展位
ここからは膝関節と足関節のアライメ ント不良とそれを修正するエクササイズ を解説します。まずは、膝関節が過伸展 位の場合です。
膝関節が過伸展しており、ときに脛骨 が大腿よりも後方にある場合があります。 後弯平坦型でよく見られるアライメント 不良です。骨盤は、やや後傾位になりま す。ハムストリングスが優位で、骨盤を 後傾させ膝を過伸展させるように働きま す。本来なら骨盤後傾と膝伸展に働くは ずの大殿筋と大腿四頭筋(特に大腿直 筋)は機能が低下し、筋長の延長はあり ませんが、筋力は低下します。腰椎に生 理学的に正常な弯曲が見られない平背型 の場合は下腿三頭筋のストレッチングが 必要になることもあります(→ P206・ 207)。
骨盤はやや 後傾位。
膝関節が 過伸展。
歴骨が大腿 よりも後方 にある。
(エクササイズ)
こつばんこうけい
骨盤後傾の修正エクササイズ
後弯平坦型の骨盤後傾の修正エクササイズ(前著『姿勢の教科書』→P122) に準じて実施します。

O LISTTIMER タイマー終了
骨盤帯と下肢のアライメントの評価と修正エクササイズ Part 3 5膝関節・足関節・足趾の機能異常と修正
ほうねんきょく
脛骨の後方弯曲(骨性)
骨盤傾斜は中間位で理想的にあります。 脛骨自体が後方に
足関節はやや底屈位になりますので、と 湾曲している場合
きに腓腹筋あるいはヒラメ筋にも短縮が 膝が過伸展しているように見えますが、 生じることがあります。この場合、腓腹 脛骨自体が後方に湾曲している例もあり筋とヒラメ筋のストレッチングが有効で ます。これは骨性によるものです。
5膝関節・足関節・足趾の機能異常と修正
す。
図1>脛骨の後方弯曲
骨盤は 中間位。
脛骨が後方に 湾曲している。
205)

O LISTTIMER タイマー終了
エクササイズ
腓腹筋のセルフ・ストレッチング
図2 腓腹筋
テーブルの前に立ち、テーブルに両手をつ きます。一側下肢を前方に出し、他方の下 肢を後方に引きます。通が十分浮くまで引 きましょう(0)。その位置より後方の に徐々に体重をかけて、足底が床につくよ うに腓腹筋のストレッチングを行います (2)。 左右それぞれ30~60秒間のストレッチン グを15秒間の休みを入れながら3回行える ようにしましょう。
踵が十分に浮く まで足を引く。
足底が床につくように。
206

骨盤帯と下肢のアライメントの評価と修正エクササイズPart3
エクササイズ
図3・ヒラメ筋
ヒラメ筋のセルフ・ストレッチング テーブルの前に立ち、テーブルに両手を つきます。一側下肢を前方に出し、他方 の下肢を後方に引き、足底を床につけま す(日)。その位置より徐々に左膝を曲 げていくことにより、腓腹筋よりも下に 位置するヒラメ筋のストレッチングを行 います(2)。 左右それぞれ30~60秒間のストレッチ ングを15秒間の休みを入れながら3回 行えるようにしましょう。
5 膝関節・足関節・足趾の機 能 異常と修正
足底を床につける。
徐々に左膝を曲げる。
207

5膝関節・足関節・足趾の機能異常と修正。
膝関節の屈曲位
膝関節の屈曲位
後弯前弯型や高齢者によく 見られるアライメント不良 後弯前弯型で骨盤が前傾して股関節屈 曲位の人、あるいは高齢者によく見られ る膝関節屈曲位のアライメント不良です。 砂関節危筋群とハムストリングスに短縮 があり、ヒラメ筋は延長位になる傾向が あります。
骨盤は 前傾位。
膝関節は 屈曲位。
エクササイズ
かんせっくりきん
股関節屈筋(二関節筋)のセルフ・ストレッチング
ベッドの端に背臥位になり、両股関節を屈曲して骨盤を後傾位にしたままで、腹筋群を収縮させま 抱えます(日)。そして固定側の下肢のみ抱えてす(2)。
208

骨盤帯と下肢のアライメントの評価と修正エクササイズP
次に、腰椎前弯が生じないように腹筋群の収縮を 維持したままで(スタビリティ)、一側の股関節 を伸展していきます(モビリティ)(3)。 さらに、腹筋群収縮を維持したままで、腰椎前弯 を防ぎながら一側の股関節をさらに伸展して、膝 も屈曲することで二関節筋のストレッチングを行
います()。その後、開始肢位に戻して対側も 行います。 左右それぞれ最終肢位で、20~30秒間のストレ ッチングを15秒間の休みを入れながら3回行える ようにしましょう。
5 膝関節・足関節・足趾の機能異常と修正
一側の股関節を伸展していく。
一側の股関節をさらに伸展。 膝も屈曲する。

5膝関節・足関節・足趾の機能異常と修正
いつかんせ
できないはん
膝関節の構造的内反
O脚とは? X脚とは?
だいたいないそくかかんきょり
両足をそろえた姿勢で、両膝間の距離 である大腿内側顆間距離が2横指以上離 れていて、両膝が内受膝の場合はO脚 と呼ばれます(下図左)。
逆に、膝蓋骨を正面にむけた立位で両 大腿骨顆をつけた状態で、両内果間距離 が2横指以上離れていて、両膝が外反膝
の場合はX脚と呼ばれます(下図右)。 1横指から3cm以内だと亜外反膝になり ます。
ほとんどの子どもは、2歳までは軽い O脚ですが、成長とともに自然に改善 され、3歳ではむしろX脚傾向になります。 3歳をすぎてもO脚傾向が強いときは要 注意です。
M122がいこっ
りょうないか、なんと、
図1 内反膝(O脚)と外反膝(X 脚)
内反膝(O脚)
外反膝(X脚)
大腿?側顆間距 離が2横指以上 離れている。
両内果間距離 が2横指以上 離れている。
210

骨盤帯と下肢のアライメントの評価と修正エクササイズPart3
みが内反膝の場合もあります(図2)。 片脚のみの内反膝とは?
図の例では右膝が内反膝です。右片脚立 変形性膝関節症とは?
ちで、内反傾向が増大するようであれば 患者によっては、両脚というより片脚の変形性膝関節症が疑われます(図3)。
5 膝関節・足関節・足趾の機能異常と修正
図3 右片脚立位での内反傾向増大
図2> 右膝の構 造的内反
構造的内反による痛み
図4 正常膝と内反膝
生理的外反s
膝関節のアライメントは脛骨からの軸 が大腿骨の外側に変位します(図4)。 右膝関節には内側の圧縮ストレスがかか り関節軟骨がすり減ったりします。外側 には離開ストレスがかかることで靭帯が 引っ張られ痛みも出ます。また、そのア ライメントで無理に膝を曲げたり伸ばし たりするため、それらに作用する筋群に 過剰な負荷が加わり、痛みが出ます。
正常な膝
内膝

エクササイズ
膝関節の構造的内反の修正・運動併用モビライゼーション 内側の圧縮ストレスによる痛みを軽減し、正しい作して下腿が垂直になるように操作します。脛骨 運動軸で屈伸ができるようにするエクササイズで を内側に滑らせたまま、患者には自動で膝の屈伸 す。患側の反対側に立ち、脛骨近位から治療者の を行ってもらいます。治療者はその動きを介助し 殿部にベルトを回します。患者の膝の腹側に手を ます。屈曲の最終域では、脛骨を内側に滑らせる おき、大腿を固定します。ベルトを治療者方向に 力を少し強めてください。 引くことで脛骨を内側に滑らせ、同時に足首を操 10回を1セットとして3セット行います。
患者に膝の屈伸をしてもらい、 治療者はそれを介助する。
脛骨近位から治療者の 殿部にベルトを巻く。
膝の腹側に手をおいて大腿を固定。
エクササイズ
膝関節の構造的内反の修正 ◆自己矯正モビライゼーション
両膝を近づけたままで床に両膝をつきます。手を 膝下の下腿外側におきます。お尻を床に降ろして いくに従って、両手で下腿を内側方向に5秒間押 してください。 10回を1セットとして3セット行います。
お尻を床に降 ろしていくに 従って、両手 で下腿を内側 に押す。

骨盤帯と下肢のアライメントの評価と修正エクササイズPart 3
15膝関節・足関節・足趾の機能異常と修正
いほうねんきょく
脛骨の外方弯曲(骨性)
脛骨の外方弯曲で内反膝に 見える場合 膝関節自体が内反しているのではなく、 脛骨自体が外方湾曲することで内反膝に 見えることがあります。さらには、膝関 節自体の内反に加えて、脛骨自体も外方 湾曲している例もあります。
Aでは、右膝に内反があり、左膝は正 常ですが脛骨が外方湾曲しています。右 片足立ちでは、内反膝が増加します(B)。 この内反方向の動きが過剰になると、脛 骨内側に過度なストレスをかけ痛みと関 節変形を悪化させることになります。左 片足立ちでは、内反膝は増加せずに安定 しています(C)。
5 膝関節・足関節・足趾の機能異常と修正
図1●右内反膝と左脛骨外方弯曲
A 両脚立ち
B 右片脚立ち
IC 左片脚立ち
右膝が内反、 左脛骨が外 方弯曲。
右片足立ち をすると内 反が増加。
エクササイズ
脛骨の外方弯曲の修正 ●右膝に関する修正エクササイズは「膝関節の構造的内反」(→P212)に準じます。 左膝に関しては、荷重のかけ方を矯正したり、足底板(インソール)などで対処していく 方法があります。
213

5膝関節・足関節・足趾の機能異常と修正
つかんせー
てきないはん
運動連鎖に伴った膝関節の機能的内反
図1●上行性運動連鎖に伴った 膝関節の機能的内反
「下行性運動連鎖、上行性 運動連鎖によって生じる 運動連鎖に伴った膝関節の機能的内反 は、骨盤の後傾または後方回旋からの下 行性運動連鎖(骨盤から下方向に伝わる 運動連鎖)、あるいは足部の回外(踵骨 内反)からの上行性運動連鎖(足から上 方向に伝わる運動連鎖)によって生じま
す。
ちょうけいじんた
腸腰?
足部の回外(踵骨内反)による凹足が ある場合、脛骨の軸に沿って近位に過度 の外旋を引き起こし、内反膝と外側の脛 骨大腿関節の離開を生じることになりま す(図1)。膝関節の外側側副靭帯や腸 脛靭帯などの膝の外側にある構造物は、 下肢長軸に沿って引き離されるような緊 張を生じます。関節の外側の離開が進み 腸脛靱帯の緊張が強くなると、大転子と 大腿骨外側上顆において摩擦と炎症を引 き起こし、腸脛靭帯摩擦症候群の原因に もなります。
脛骨外旋
だいたいこっ
足部回外
エクササイズ
運動連鎖に伴った膝関節の機能的内反の修正 骨盤挙上側の「足部から骨盤への運動連鎖エクササイズ」(前著『姿勢の教科書』 → P160)に準じます。

骨盤帯と下肢のアライメントの評価と修正エクササイズPart 31
5膝関節・足関節・足趾の機能異常と修正
うてきないはん
代償に伴った膝関節の機能的内反
5 膝関節・足関節・足趾の機能異常と修正
図1→正常膝と股関節内旋を 伴った膝関節の過伸展と内反膝
正常膝
内膝
姿勢性内反膝が生じる原因 股関節外旋筋群が延長して筋力低下が ある場合、股関節は内旋位になります。 股関節内旋位で膝の力を抜くと外反膝に なりますが、膝関節を過伸展すると内反 膝になります(図1)。このような姿勢 性内反膝は、大腿骨内旋、足回内、膝過 伸展が組み合わさって生じます。大腿骨 が内旋した場合、屈曲と伸展の運動軸は 前額面に対して斜めになってしまうため、 この運動軸によって過伸展は後側方に生 じ、両膝の距離が離れ、下腿が弓なりに なってしまうのです。
この場合、股関節周囲の筋バランスを 整えて、股関節伸展・外転・外旋筋群を 強化するエクササイズが重要となります。
エクササイズ
股関節伸展・外転・外旋筋群のエクササイズ 腹筋群が弱い場合は、腹部の下に枕を入れま すが、腹筋群を十分収縮できる場合は、スタ ビリティのために腹筋群を収縮させておきま す。床から腹部が少し浮く程度に腹筋群を収 縮させたまま、一側の股関節を伸展・外転・ 外旋させます。 この肢位で最低5秒間は止めてください。10 回から開始し、徐々に回数を増やしてくださ い。5秒間保持の間に、息は止めないように してください。
腹部が少し浮く程度に 腹筋群を収縮。
一側の股関節を伸展・ 外転・外旋させる。

5膝関節・足関節・足趾の機能異常と修正
しっかんせ
膝関節の構造的外反
図1●両側の外反膝
片脚のみが外反膝の場合 変形性膝関節症の場合 患者によっては、両脚外受膝によるX 脚というより、片脚のみが外反膝の場合 もあります。図1は両側の外反膝です。 それぞれの片脚立ちで、外反傾向が増大 するようであれば変形性膝関節症が疑わ れます(図2)。
膝関節のアライメントは脛骨からの軸 が大腿骨の内側に変位します(図3)。 膝関節には外側の圧縮ストレスがかかり、 内側には離開ストレスがかかることで痛 みも出ます。また、そのアライメントで 無理に膝を曲げたり伸ばしたりするため、 それらに作用する筋群に過剰な負荷が加 わり、痛みが出ます。
図3>正常膝と外反膝
図2 左片脚立位での外反傾向増大
生理的外反
正常な膝
外反膝

骨盤帯と下肢のアライメントの評価と修正エクササイズPart3
89094177
膝関節の構造的外反の修正・運動併用モビライゼーション 外側の圧縮ストレスによる痛みを軽減し、正しい 直になるように操作します。脛骨を外側に滑らせ 運動軸で屈伸ができるようにします。患側の同側たまま、患者には自動で膝の屈伸を行ってもらい に立ち、脛骨近位から治療者の殿部にベルトを回 ます。治療者はその動きを介助します。屈曲の最 します。患者の膝の腹側に手をおき、大腿を固定 終域では、脛骨を内側に滑らせる力を少し強めて します。ベルトを治療者方向に引くことで、脛骨 ください。10回を1セットとして3セット行います。 を外側に滑らせ、同時に足首を操作して下腿が垂
5 膝関節・足関節・足趾の機能異常と修正
患者に膝の屈伸をし てもらい、治療者は それを介助する。
脛骨近位から治」 療者の殿部にべ ルトを巻く。
(エクササイズ2
膝関節の構造的外反の修正 自己矯正モビライゼーション
座位で両足底をくっつけます。手を膝下の下腿内 側に置きます。両手で下腿を外側方向に5秒間押 して、外反膝を矯正していきます。10回を1セッ トとして3セット行います。

5膝関節・足関節・足趾の機能異常と修正
どうれん
しつかんせ
のうてきがいはい
運動連鎖に伴った膝関節の機能的外反
おくじょうが
いないしょうこつがいはん、
いっ
とで生じます。大腿筋膜張筋一腸脛靱帯 下行性運動連鎖、上行性
複合体の緊張は、大転子または大腿骨外 運動連鎖によって生じる
側上顆を越える際に過度の摩擦を生じる 骨盤の前傾または前方回旋によって大 ことになりかねず、腸脛靭帯ストレス症 腿筋膜張筋が短縮し、大殿筋が延長位で 候群の原因としても関与します。 筋力低下があることによる下行性運動連 鎖、あるいは足部の回内(踵骨外反)か
図1●上行性運動連鎖に伴った らの上行性運動連鎖によって生じます。
膝関節の機能的外反 足部の回内(踵骨外反)による扁平足が ある場合、脛骨の軸に沿って近位に過度 の内旋を引き起こし、外反膝と内側の脛 骨大腿関節の離開を生じることになりま す(図1)。 この過回内は(歩行中)、立脚期の間
腸脛靭帯 の脛骨内旋を生じ、脛骨大腿関節に外反 の力を伝えます。過回内足では、立脚中 期を過ぎても回内のままで、回外運動が 生じません(通常は、回外運動が生じて
大腿骨外側上顆 脛骨に外旋が生じます)。距骨下関節の 過回内と過度の脛骨内旋は、大腿筋膜張 筋の起始と腸脛靭帯の停止部の直線距離 を増やし、過度に緊張させます。これは、 大腿筋膜張筋一腸脛靭帯複合体が、股関 節の水平方向の安定化に寄与する他の大
足部回内 腿外側筋群と共に立脚後期に引き合うこ
つかかんせつ
脛骨内旋
エクササイズ
運動連鎖に伴った膝関節の機能的外反の修正
骨盤下制位の「足部から骨盤への運動連鎖エクササイズ」(前著『姿勢の教科書』 → P162) に準じます。
218)

骨盤帯と下肢のアライメントの評価と修正エクササイズPart 3
5膝関節・足関節・足趾の機能異常と修正
つかんせー
うしていきがいは
代償に伴った膝関節の機能的外反
5 膝関節・足関節・足趾の機能異常と修正
図1→正常膝と股関節外旋を 伴った膝関節過伸展と外反膝
正常膝
外反膝
2でいいん
| 姿勢性外反膝が生じる原因
股関節内旋筋群が延長して筋力低下が ある場合、股関節は外旋位になります。 股関節外旋位で膝の力を抜くと内反膝に なりますが、膝関節を過伸展すると外反 膝になります(図1)。このような姿勢 性外反膝は、大腿骨外旋、足回外、膝過 伸展の組み合わせで生じます。大腿骨外 旋によって、膝関節軸は前額面に対して 斜めになり、過伸展によって膝は内転位 になります。
この場合、股関節周囲の筋バランスを 整えて内旋筋群を強化するエクササイズ が重要となります。
エクササイズ
こかんせつないてんないすんきんさん
股関節内転・内旋筋群のエクササイズ 側臥位となり、両側の大腿と膝の間に枕を挟みま の間に、息は止めないようにします。 す。上側の股関節を内転・内旋させながら枕を押 さらに強度を上げるには、下側の股関節を内転・ しつぶしてください。
内旋させながら枕を持ち上げるように力を入れま この肢位で最低5秒間は止めてください。10回か す。上側の下肢でも押し返すとさらに抵抗が強ま ら開始し、徐々に回数を増やします。5秒間保持 ります。
上側の股関節を内転・内旋 させながら枕を押しつぶす。
219

5膝関節・足関節・足趾の機能異常と修正。
水平面上での軸の回旋 脛骨捻転
脛骨が外捻している
にありますが、脛骨そのものが外捻(外
に向いて捻れている)しているため、足 ために起こる。
部は外側を向いているアライメントです 矢状面で膝関節は正しいアライメント(1 )。脛骨の遠位が近位に対して
図1●正常膝と股関節外旋を伴った膝関節過伸展と外反膝
11. 矢状面で膝関節は正しい
アライメントだが、脛骨 が外捻しているため、足 先は外側を向いている。
2.足部外旋位で股関節と膝
関節を屈曲していくと、 膝関節は正しいアライメ ントを保ったまま。

骨盤帯と下肢のアライメントの評価と修正エクササイズ Part39
20~40°以上の外稔は異常です。足部外 膝関節同士がくっついてきます(4)。 旋位で股関節と膝関節を屈曲していくと、 このような場合には、無理に足部のア 膝関節は正しいアライメントを保ったま ライメントを修正しようとすると膝関節 まです(2)。
に異常が生じてきますので、足部のアラ しかし、足部を正しいアライメントにイメントは修正してはいけません。 するために足先を前方に向けると、膝は 内側を向いてきます(3)。この状態 から股関節と膝関節を屈曲していくと、
5 膝関節・足関節・足趾の機能異常と修正
3足部を正しいアライメン
トにするために足先を前 方に向けると、膝は内側 を向いてくる。
4この状態から股関節と膝
関節を屈曲していくと、 膝関節同士がくっついて いく。
221

しつかんせ:
5膝関節・足関節・足趾の機能異常と修正 |
しんべいか
いそ
長軸アーチ扁平化(扁平足)
舟状骨は下がり3、後脛骨筋は延長位に 扁平足とは?
なり筋力低下が生じます。その結果、内 足関節が回内位で踵骨が外受する足関側縦アーチは下がり、足底腱膜が伸ばさ 節のアライメントです(図1)。足底の れの、長趾屈筋や長母趾屈筋も延長位に アーチが低下し、足底が扁平化するため なります。内側楔状骨も低下するため、 扁平足とも呼ばれます。
前脛骨筋も延長位になります。踵骨は外
反し6、三角靱帯1と距踵靭帯のに緊張 長軸アーチ扁平化の
が生じます(図2)。距骨が前内方に滑り、 メカニズム
前足部が外転して、横アーチも低下します。 距骨は前方ひと内方5に滑り、踵骨はまた、外反母趾も併発し、母趾内転筋は 後方に回転します2。踵舟靭帯は緊張し、 短縮して、母趾外転筋は延長します(図3)。
くようしゅうじんたい
図1右足部回内(踵骨外反)
距骨外授
足底のアーチが低下 (扁平化)
図2 扁平足の機序


距骨 –
舟状骨の
きょしょうじんたい
三角靭帯・
し – 亜種靭帯
8
距踵靭帯
そくていけんまく、
足底腱膜
しょうこつ
踵骨
AO
(図1『プロメテウス解剖学アトラス解剖学総論 運動器系 第2版』p456、図2「骨・関節系理学療法クイックリファレンス』p52を参考に作成)

骨盤帯と下肢のアライメントの評価と修正エクササイズPart39
外側への変形
図3>外反母趾
母趾
外反母趾によって、 母趾内転筋は短縮し、 母趾外転筋が内転作 用を持つようになり、 外転に戻せなくなる。
ないそくしゅしっ
内側種子骨
と 外側種子骨
5 膝関節・足関節・足趾の機能異常と修正
内側への変形
道しないてんさん
第1中足骨 長母趾屈筋
母趾内転筋 母趾外転筋
長母趾伸筋 (「プロメテウス解剖学アトラス 解剖学総論 運動器系 第2版』p463を参考に作成)
エクササイズ
タオルギャザー 後脛骨筋・長趾屈筋・長母趾屈筋・前脛骨筋 骨筋が収縮して、内側縦アーチをさらに高くする (→ P225) を強化して骨のアライメントを修正し、 ことになります(2)。さらに指を伸展・外転さ 扁平足を治します。
せることでタオルを離します(3)。これによっ エクササイズとしては、タオルギャザーを実施 て母趾外転筋も鍛えることにつながります。手前 します。まず長趾屈筋、長母趾屈筋を収縮させて、 に引き寄せられたタオルは、反対の足で元の位置 全足趾を屈曲させることでタオルをつかみます。 に戻してください。 (日)。これによって、内側アーチが縮まる方向 この一連の動作を20回以上繰り返してください。 に力が入ります。
できるようになれば20回を3セット行うようにし 次にタオルをつかんだままで、麺はつけたまま足 てください。 関節を背屈します。これによって後脛骨筋と前脛
タオルをつかんだまま、 足関節を背屈。
223)

5膝関節・足関節・足趾の機能異常と修正
長軸アーチ高位化(四足)
ります(図2)。足底腱膜は踵骨から足 四足とは?
趾の基節骨に付着しています。踵挙上後、 凹足は、足部が回外して、足の縦アー 足底腱膜は背屈した中足骨頭の周りを回 チが極端に高くなった状態(ハイアーチ) って、ケーブルのように遠位に巻き上げ です(図1)。股関節と膝関節を屈曲し ます。中足趾節関節の背屈は踵骨を前足 ても平坦にはなりません。
部に近づけ、結果的にアーチの高さを増 原因の一つに巻き上げ機構の作用があ加させます。これにより足部は剛性が高
図1→右足部回外(踵骨内反)
しょうこつないはん
踵骨内反
足の縦アーチが、 極端に高い。 (ハイアーチ、凹足)
りっぽうこつ
図2 巻き上げ機構による凹足
立方骨はアーチの頂点
中足骨
ちょうはくしせつかんせつ
中足趾節開節
足底腱膜
(図1「プロメテウス解剖学アトラス 解剖学総論 運動器系 第2版』p456, 82「理学療法のクリティカルパス 下巻 下肢jp26を参考に作成)
エクササイズ
凹足、つま先立ちの修正 四足で硬くなった足部に対しては、関節モビライ筋を過剰に使用する場合は、つま先立ちの修正と ゼーションや、後脛骨筋・長趾屈筋・長母趾屈筋 して、足趾をなるべく使用しないで種だけを引き のマッサージ、ストレッチングが必要となります。 上げるように下腿三頭筋を使わせることが大切に つま先立ちの際に後脛骨筋・長趾屈筋・長母趾屈なります。

骨盤帯と下肢のアライメントの評価と修正エクササイズPart 3
められ、歩行時の蹴り出しの際にテコと長趾屈筋・長母趾屈筋(図3)を使用す して機能しますが、この状態が過剰にな ることになり、下腿三頭筋が弱化するこ ってしまうのがハイアーチです。このよ とになります。ハイヒールの常用者も、 うな状態は、ハイヒールの常用者やプロ下腿三頭筋で底屈する代わりに靴の形で ダンサーのように足を過度に使用する職 底屈位になるので、結果的に下腿三頭筋 業の人にもよく見られます。
を使用しなくなるのです。 例えば、つま先立ちになる際に、踵骨 この状態が長く続くと、後脛骨筋・長 を天井方向に持ち上げるように下腿三頭 趾屈筋・長母趾屈筋の拮抗筋の長趾伸筋 筋(→ P206・207)を使用するのではや前脛骨筋は延長位となり、足関節背屈 なく、足趾で床を押しつけるようにして. の可動域制限も生じることになります。 踵を上げる人は、結果的に、後脛骨筋・
5 膝関節・足関節・足趾の機能異常と修正
右脚前面深部
右脚後面深部
図3 足関節の動き に関わる筋
腓骨
ごうけいこつきん
後脛骨前
長趾屈筋
ちょうししんきん 長趾伸筋
長母趾屈筋
うきちゃん
長母趾伸筋
たた筋
踵骨